
アウディは今、新章を迎えている。顧客、ディーラー、そしてブランドのすべてに長期的な価値をもたらすビジネスモデルを構築し、持続可能な成長を加速させる。2026年5月、アウディ ジャパンの新ブランド ディレクターに就任したウルフ・ディルケスマン氏に、日本における新たな戦略について話を聞いた。

アウディ ジャパン新ブランド ディレクター、ウルフ・ディルケスマン氏は、2002年にAUDI AG に入社以来、20年以上にわたり欧州、アフリカ、中東地域で営業やアフターセールスを担当。20年からは、リージョナル ディレクターとして市場開拓の戦略立案やインポーターリレーションに注力してきた。聞けば、大変な親日家であり自ら日本市場を担当したいと名乗り出たという。そして今、アウディ ジャパンの27年に向けた指針として「Driving Value(価値の創出)」というキーワードを打ち出している。
「これは、アウディブランドの価値を高め、持続可能な成長を加速させるというコミットメントを意味します。その目的は、顧客、ディーラー、そしてブランドのすべてに対して長期的な価値をもたらす、強固で持続可能なビジネスモデルを構築することにあります。この戦略は、『ブランド』『プロダクト』『エクスペリエンス』の3つの柱によって構成されます」
アウディは25年9月に、ブランドの新しいデザインフィロソフィーを体現するコンセプトカー「Audi Concept C」を披露。そして26年から世界最高峰のモータースポーツ、F1(フォーミュラ1)へ参戦。そして6月、F1モナコグランプリ開催を前に、アウディはAudi Concept Cを具現化した、ブランド史上最速かつ最もパワフルなスーパーカー「Audi Nuvolari(アウディ・ヌヴォラーリ)」を発表した。
「モータースポーツ活動、フラッグシップとなるスポーツカーの開発、プレミアムなブランドイベントなど、多岐にわたるタッチポイントを通じてブランドの魅力を高めていきます。F1やヌヴォラーリといったグローバルな資産を活用し、先進的かつ魅力的なプレミアム自動車ブランドとしての地位をより強固なものにすることを目指します」
アウディのブランドを象徴するスローガン「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」は、先進的な技術をいち早く採用し、競争上のアドバンテージにするというメッセージが込められている。この言葉は、1971年に初めて掲示されて以来、現在まで受け継がれている。そして、それを本能に訴える形で体現しているのが、ヌヴォラーリである。
「ヌヴォラーリは、まさに“Vorsprung durch Technik”を具現化したクルマです。開発から生産までわずか18カ月という短時間で実現したことは、私たちが、開発、意思決定、およびイノベーションにおいて、企業としてのスピードを一層加速させ、技術革新を進めていることを証明しています。アウディを新しい時代へと照らす灯台ともいうべき存在なのです」。世界限定499台はすでに完売。「日本のお客様にもきっとご満足いただけるモデルだと確信しています」とディルケスマン氏は語る。

プロダクトに関しては近年、Audi Q4 e-tronやAudi Q6 e-tron、 Audi e-tron GTといったBEV(電気自動車)の新型車の導入に注力してきた。e-tronを20年に日本初導入して以来、10モデル以上のBEVを導入している。これに加えて充電ネットワークの拡充にも注力し、紀尾井町や芝公園といった都心部に急速充電施設「アウディチャージングハブ」を開設するなど、BEVブランドとしてのプレゼンスを高めてきた経緯がある。今後についてはどのように考えているのか。
「このおよそ4年間で、アウディはBEVブランドとしてのイメージを構築できたと思っています。今年は新型Audi Q3とAudi A6を発売しました。そしてもう間もなく、Audi RS 5、Audi Q7、Audi Q9といった新型モデルを導入予定です。先進的なデザイン、革新技術、優れた走行性能といったアウディの真髄を強調しつつ、スポーティなRS/SモデルやSUVラインアップの強みを生かすことで、ブランドを強化していきます。と同時に、全く新しいAudi A2 e-tronの導入により、より幅広いお客様に、アウディのBEVを身近な選択肢にしていただけるような取り組みを継続していきます」
エクスペリエンスにおいては、顧客の記憶に残る体験を提供することに注力。例えば特別な納車体験など、顧客に合わせたパーソナライズドサービスを充実していくとのこと。その成功のカギを握るのはディーラーである、とディルケスマン氏。
「私が日本に来て最初に立てた目標は、年内に国内にあるすべてのアウディの販売会社に足を運び、対話を持つことです。ディーラーの皆さんと信頼関係を築き、信用を得ることが大切だと考えています。今、販売会社46社のうち20社を訪問しました。そこで感じたのは、日本のディーラーの皆さんはアウディに対する強い情熱を持っていて、率直かつ有意義で前向きな対話ができるということです。アウディの新たなアプローチは、このディーラーの皆さんとの対話から得られたものを踏まえています。すべてのお客様との接点において、特別な存在であること、それがこの新たなアプローチの大きな柱の一つです。ディーラーの皆さんと共に、私たちの大切なお客様に最高の体験を提供していきます」
最後に日本市場への展望を尋ねると、力強い言葉で締めくくった。
「私はこのタイミングで日本のブランド ディレクターに就任したことを非常に幸運だと感じています。これまでの24年間のキャリアは、このステップに向けての準備だったのではと思うほどです。しかし、日本市場についてはまだ学ぶべきことがたくさんあることをよく理解しています。幸いなことに、アウディ ジャパンには、優秀なメンバーがそろっていますし、全国にプロフェッショナルなディーラーの皆さんがいます。共に力を合わせて、魅力的な商品と卓越したカスタマーエクスペリエンスを提供し、アウディを、日々お客様を魅了する最も望まれるプレミアムブランドへと導くことができると確信しています」
