仕事と介護・育児・健康課題との
両立を伴走支援
離職を防ぎ、生産性向上と
企業の成長を目指す
2025年に育児・介護休業法が改正され、企業や組織には介護離職防止のための雇用環境整備、個別周知・意向確認などが求められるようになった。育児分野でも制度対象者の拡大や3歳前の子を育てる従業員への個別周知・意向確認が義務化されるなど支援策が強化、健康分野では「治療と仕事の両立支援」ガイドラインの整備が進み、従業員の育児・介護・健康課題を企業が包括的に支える体制づくりが求められている。仕事と介護・育児・健康課題の両立に悩む従業員の支援は福利厚生施策にとどまらず、人的資本を最大化するための重要な経営戦略だ。ベネッセシニアサポートは、組織内の実態把握と管理職に対する支援、継続的な情報発信などを当たり前にして、人材の離職を防ぎながら生産性向上と成長が両立する強い組織づくりを支援している。
介護・育児・健康課題と仕事との両立は、企業にとって「静かな経営リスク」になりつつある。現在、育児と仕事を両立している人は約965万人、介護と仕事を両立している人は約365万人、がんなど病気の治療をしながら仕事と両立している人は約45万人いるといわれている※1。
中でも介護は日本社会にとって喫緊の課題だ。2025年に団塊の世代が75歳以上となり、人口の約6人に1人が後期高齢者となった※2。今後は団塊ジュニア世代の介護者が増加し、介護による経済損失見込み額は約9兆円に上ると見積もられている。内訳は介護離職の損失が約1兆円、約8兆円は両立困難による労働生産性の低下だ※3。また、結婚や出産年齢が上がってきていることもあって、育児と介護の「ダブルケア」と仕事の両立を迫られる就業者も増える見通しで、2035年にはダブルケア就業者が21.2万人に達するという調査※4もある。さらに、親の介護が始まる可能性が高まる40歳代は、がんの罹患率など自身の健康課題が発生する可能性が高い年代でもある。
こうした背景から、ベネッセシニアサポートでは、介護を主軸に、育児、健康課題も含めて、従業員がプライベートの課題に直面したとき、一人ひとりが自律して仕事との両立を前提に問題解決に取り組めるようにする「両立支援」事業を展開している。同社はベネッセスタイルケアグループで1995年から30年以上にわたって介護事業で取り組んできた専門性を強みに介護の両立支援サービスからスタートし、支援を必要とする就業者の実態に向き合ってきた。その中で、介護だけでなく育児や健康課題を同時に抱える従業員が多いことを捉え、支援領域を「総合的な両立支援」へと発展。現在は、育児や健康課題への解決プログラムに加え、介護の深い専門知識を軸に、将来の介護発生を見据えた予防的な情報提供や、ダブルケアを避けるための早期支援などを行っている。
前述のとおり、今後はますます課題が複雑化していくことが予想される。しかし、国もこの状況を放置してきたわけではない。2025年には育児・介護休業法が改正された。改正点は大きく3つに分けられる。介護を申し出た従業員に対し、介護休業などの制度を周知して意向確認を行うこと。介護に直面する前の40歳などの年齢の社員に対して介護保険制度や自社制度を情報提供すること。両立支援制度が利用しやすい雇用環境の整備として、研修の実施、相談窓口の整備、事例共有、利用促進に関する方針の周知の4つの措置の中からいずれかを講じることだ。
ベネッセシニアサポートWork&Care事業部部長の井木みな恵氏は、介護に直面した従業員の両立支援を促進する難しさを実感している。「義務化は両立を後押しする点で追い風ですが、罰則規定はないため、形式的な通知だけでは本来の目的である制度の定着にはつながらない可能性もあります」と話す。

井木 みな恵 氏
企業などからの相談を受けてきた同部ケアマネジャーの山根蓉子氏は「出産・育児と違って、介護はいつ始まるか、いつ終わるかが読めません。また、組織内で大きな責任を抱える管理職層が介護に直面し、キャリアとの両立に悩む人も少なくありません」と現場の実感を語る。
従業員アンケートを実施すると、介護に直面しながらも上司や人事に申告していない層が一定数存在するという。介護は非常にセンシティブな問題でもあり、家族のプライベートな話を会社に報告したくないと考える人も少なくない。また、育児と違い、介護は始まりがわかりにくいこともあり、本人も介護が始まっていることに気づいておらず申告していないケースも存在する。このように実態が見えにくいことで、介護支援施策の優先順位が低く据え置かれてしまうケースも見受けられる。こうした「隠れ介護者」は、介護が理由で突発的に休む事案が発生しても、事前に状況が共有されていないことから、上司や同僚など職場の協力体制が整わず介護離職につながりやすい。

山根 蓉子 氏
同部ケアマネジャーの松井秀夫氏は「両立支援の成否を分けるのは、管理職による制度の適切な運用と組織全体での意識醸成です。制度があっても、上司が理解していなければ当事者は利用しづらく効果は発揮されません。介護は従業員個人の課題であると同時に、組織にとっては人的資本につながる問題でもあります。土台となる制度を整え、当事者だけに負担を集中させない仕組みをつくることが組織に必要な人材の離職防止につながります」と指摘する。

松井 秀夫 氏
両立は実態把握から始める
一方で介護施策の優先度がまだ高くない企業や組織も多い。人事施策は採用や育成、ダイバーシティ推進など複数テーマが重なり、介護は後回しになりがちだ。だが、両立支援は人的資本の投資利益率(ROI)を高める施策であると同時に、事業リスク対策と捉える必要がある。出勤はしているものの、健康や精神状態が良くないため仕事に注力できず、生産性が低下する状態を「プレゼンティーズム」と呼ぶ。「介護疲れの影響で業務上のヒヤリハット、不注意の事故、居眠りなどを経験したことがある人は、介護中の従業員全体の過半数を超えるというデータもあります」と井木氏はいう。航空に代表される運輸業など安全が最重視される産業はもちろん、営業車の事故や社内での不注意、送ってはいけないデータの誤送信のように、プレゼンティーズムは組織基盤を揺るがすような事象につながりかねない経営リスクでもある。こうしたリスクは介護を担う従業員個人の問題として片づけられるものではない。従業員が安心して両立できる体制を整えることは、組織の安全性・信頼性を守るためのガバナンスであり、企業が取り組むべき経営課題でもあるのだ。
厚生労働省の指針では、まず実態調査で介護支援のニーズを把握して制度設計へ落とし込む流れを示している。井木氏は「メンタルヘルスと同様に、介護も実態を可視化しないと効果的な施策が打てません」と強調する。
実態調査を通じて隠れ介護者などの現状を可視化し、課題を「介護状況」「知識不足」「働き方」「風土醸成」などに分解し、主な課題がどこにあるのかを把握して施策の優先順位を考える。人的資本経営に力を入れる企業などでは「継続的な情報発信が当たり前になりつつあり、組織風土の変革も進んでいる」と井木氏はいう。
ベネッセシニアサポートが展開する「Work & Care」は、制度・運用・風土醸成・個別支援という多角的な視点から、企業の課題に合わせ、伴走型で両立を支援するサービスだ。
施設介護や在宅介護に関する専門知識と幅広い実践経験で培った知見を、両立支援プログラム(セミナー、動画配信、個別相談)に体系的に反映しており、現場経験者や有資格者がセミナーや相談対応を行うため、信頼性が高い。また、10年以上、企業と共に両立支援を共創してきた経験から、現場の声を取り入れた多彩なサービスと柔軟なカスタマイズ対応ができることも企業から支持を得ている理由だ。
井木氏は「従業員一人ひとりが自律的に両立の体制を構築できるようにすることをモットーに、すべての両立支援プログラムで『自律』に向けたリテラシー向上や社内風土づくりを促す設計としています。ベネッセグループ内の多様なリソースを横断して活用できるため、介護だけでなく育児や治療など複数の課題にも対応可能で、状況に応じて最適な支援を組み合わせ、継続的に提供できる点が『Work & Care』の大きな強みです」と説明する。
ベネッセシニアサポートでは、介護と仕事の両立に不可欠な
「自律してマネジメントできる」環境づくりをトータルに支援する
「お互い様」の風土醸成が鍵
両立支援に成功している組織には3つの共通点がある。1つは「社内の実態を把握していること」。2つ目に「施策を継続的に行っていること」。3つ目に「管理職を巻き込んで両立課題の話題を言い出しやすい組織風土を醸成していること」だ。特に継続は重要で、セミナーを継続開催してきた企業では、3年目になってようやく従業員の制度認知度が上がった例もある。松井氏は「現場の実態を踏まえて施策を組み合わせ、予算化や社内合意の形成まで伴走することが重要です」と話す。
山根氏は「仕事と介護が両立できる組織に転職する例も増えています。当事者にはハッピーな介護転職でも、転職された組織は優秀な人材を失ったと認識すべきです」という。
井木氏は「制度や両立に関する知識を提供するだけではなく、組織内に『お互い様』の風土を醸成することが離職を減らす近道です。当社にも、育児や介護、治療と両立しながら働く社員は多くいます」という。
制度と風土が整うことで無理なく仕事との両立ができ、社員は主体的に働くことができ、結果としてチームは拡大して売上も伸びている。ベネッセシニアサポート自身が人的資本を最大化している組織であることが、両立支援サービスにも説得力を与えている。
両立支援が人的資本経営を進めるうえで、戦略の一つとして重要になりつつあるのだ。
ベネッセシニアサポートの
「Work&Care」
ベネッセシニアサポートが法人向けに展開している両立支援サービス「Work&Care」は、介護支援を主軸に育児や健康課題も含めた総合的な支援プログラムを提供。特に介護支援プログラムでは、組織における介護の実態把握を行ったうえで、課題に合わせて「実態把握→施策→定着」までを設計し、伴走支援する。アセスメントツールや丁寧なヒアリングで現状を分析し、セミナー、動画などのデジタルコンテンツを組み合わせてカスタマイズ提案するのが特徴だ。さらに、ケアラーズミーティング、両立ハンドブック、Eラーニング、定期配信コンテンツ、情報ポータル「両立ブックシェルフ」、個別相談なども提供している。
個別相談は、相談員が両立の観点から課題整理と助言を行い、介護保険外サービスや地域資源の紹介にも対応する。介護が深刻化した際の選択肢として、施設入居相談にも即対応できる体制もあり、全国8200施設以上、600超の運営事業者(2026年2月現在)から紹介が可能だ。また介護だけでなく育児や健康課題との両立を支援する点も同サービスの強みだ。
企業に対しては両立支援を福利厚生にとどめず、離職や生産性低下などの「見えないコスト」も含めて経営課題として捉え、伴走型で組織への定着まで支える提案をしている。最近では企業向け支援に加え、自治体向けの支援まで実施。
お問い合わせ
- 育児・介護者数:総務省「就業構造基本調査(2022年)」からの推計値、がん等の治療と仕事の両立者数:厚生労働省「国民生活基礎調査(2016〜2022年)」等からの推計値
- 総務省「人口推計」(2025年9月確定値)
- 経済産業省「産業構造審議会(2023年)ビジネスケアラーに関する試算」
- パーソル総合研究所「ケア就業者に関する研究」