株式会社ビズリーチ
執行役員 新卒事業部 事業部長
藤田 拓秀 氏
大学を卒業後、2013年に株式会社ビズリーチ入社。ビズリーチ事業部ビジネス開発部でコンサルタントとして従事した後、OB/OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」の立ち上げに携わる。同サービスを運営する新卒事業部で、ビジネス開発職として日系大手企業の新卒採用支援に、また新領域推進室室長として戦略立案・実行に携わった後、2022年8月、新卒事業部事業部長に就任。2024年2月より現職。

できるだけ多くの学生のエントリーを獲得し、意にかなった人材を絞り込む――。このような新卒採用の常識は、大きく見直しを迫られている。今、求められているのは、内定候補者の母集団形成を重視する従来型のアプローチではなく、現場社員を採用活動に巻き込み、学生と直接対話をすることで意向醸成を行う、“相互理解型”の取り組みである。新卒採用に10年以上携わってきた株式会社ビズリーチ執行役員の藤田拓秀氏に、新卒採用の最新事情と相互理解型採用の価値を聞いた。
「今日の新卒採用では、企業が学生を選ぶだけではなく、学生からも選ばれているという前提に立つ必要があります。この構造変化を認識できているかどうかが、採用活動の成否を左右します」と、藤田氏は冒頭に語った。
株式会社ビズリーチ
執行役員 新卒事業部 事業部長
藤田 拓秀 氏
大学を卒業後、2013年に株式会社ビズリーチ入社。ビズリーチ事業部ビジネス開発部でコンサルタントとして従事した後、OB/OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」の立ち上げに携わる。同サービスを運営する新卒事業部で、ビジネス開発職として日系大手企業の新卒採用支援に、また新領域推進室室長として戦略立案・実行に携わった後、2022年8月、新卒事業部事業部長に就任。2024年2月より現職。
ハイクラス転職サイトを運営する株式会社ビズリーチは、キャリア採用の支援を中心に事業展開しているイメージが強いが、実は新卒採用支援に関しても長い実績がある。同社の新卒事業に10年以上携わる藤田氏が、最も劇的な変化として挙げるのが、企業と学生の立場の“逆転現象”だ。
「かつての新卒採用のアプローチは、多くの学生から採用企業としての認知を獲得し、エントリーする学生を1人でも多く集める『母集団形成型』が一般的でした。ところが今は、数多くの学生にリーチするだけでは、最終的に選ばれることは難しくなっています」
なぜ、このような逆転現象が起きたのか。藤田氏は、その背景に2つの大きな変化があると指摘する。
「1つは、新卒採用そのものが“キャリア採用化”しているということです。業種にもよりますが、従来の総合職一括採用から、キャリア採用と同じように職種別で新卒人材を採用し、早期戦力化を図る動きが広がっています」
「もう1つは、若い世代を中心に『自分のキャリアは自分で築くもの』という考え方が浸透していることです。今の学生たちは、就職活動の段階から転職もキャリアの選択肢の1つとして捉えています。だからこそ、キャリアに関するリアリティのある情報を得られない会社には、入社の意思決定をしない傾向が強まっているのです。特に複数社から内定を得るような学生ほど、入社先をより慎重に見極めるようになっています」
内定辞退の背景には、条件面だけでなく、入社後の働き方やキャリアを具体的にイメージできないまま意思決定を迫られるケースもある。
新卒採用の“キャリア採用化”と、学生の“キャリア自律意識”の高まり。この2つを踏まえると、企業が取るべき打ち手はおのずと見えてくる、と藤田氏は話す。
「学生から“選ばれる”ために必要なのは、企業から一方的に情報発信をすることではありません。学生一人ひとりと時間をかけて対話し、互いのニーズを確かめ合う“相互理解”を起点にすること。その鍵を握るのが、現場社員との対話です」
学生が求めているのは、「どんな仕事に就くのか」「どんな力が身に付くのか」「どんな人たちと働くのか」という、リアリティのある情報だ。それを最も的確に伝えられるのは、人事ではなく、その仕事を実際に担っている現場社員にほかならない。
「将来担う可能性のある仕事に携わる現場社員なら、学生は仕事や会社のリアルを聞きやすく、社風も感じ取りやすい。互いのニーズに対する理解が深まり、ミスマッチが生じにくくなり、入社後の定着率が高まる効果も期待できます。現場社員との接点が学生の入社意向や入社後の定着率に寄与する点については、北海道大学の亀野淳教授との共同研究(※1、※2)でも明らかになりました」
新卒採用をコストではなく経営投資と捉え、広告費などの金銭的リソースだけでなく、現場社員の時間や知見といった人的リソースを投下する。それが、これからの採用競争を勝ち抜く鍵だと藤田氏は語る。
一方で、学生と現場社員の接点を人事部門だけで設計・運用し続けるには限界がある。協力依頼や日程調整、面談後のフォローなどの負荷も小さくない。そこで近年は、現場社員を無理なく巻き込み、学生との相互理解を促す仕組みへの関心が高まっている。
そうした仕組みづくりを支援するのが、OB/OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」だ。
「学生がオンライン上で面談したい会社の社員を探し、アポイントを取って、オンライン面談までできるサービスです。他大学出身のOB/OGにも訪問ができる点が特徴の1つで、2026年4月時点で、全国123大学に所属する学生が利用しています。昨年(2025年)は10万件以上の訪問がビズリーチ・キャンパス上で成立しました」と藤田氏は説明する。
訪問を受け付ける社員は、それぞれの所属企業、部門、業務内容、経歴などを「プロフィール」として登録。学生たちはそれを見て、自分の思い描くキャリアに近い仕事をしている社会人に直接アプローチすることができる。
「プロフィール項目が充実しており、社員の経歴や実際の業務内容を事前に把握できるため、学生は自分が聞きたいテーマに合った社会人を見つけやすいのが特徴です。また、こうした学生のキャリア形成を支援する仕組みが評価され、採用企業だけでなく、30大学以上(北海道大学、早稲田大学など)のキャリアセンターにも大学公認サービスとして導入いただいています」(藤田氏)
近年、企業側でも、自社の社員に対し、公認OB/OGとして「ビズリーチ・キャンパス」への登録を促すケースが増えているそうだ。
「公認した社員に学生から面談の依頼が入れば、人事部門が都度仲介をせずに、主体的に面談を行えるようにしている企業がほとんどです。不適切なやりとりを検知する仕組みや、必要に応じて有人で確認する24時間体制も整えているため、企業としても安心して社員に面談を任せられるという声を頂いています」
人事の関与負担やリスクを抑えながら相互理解の場を設けられる点が評価される一方、この取り組みには、学生や人事部門だけでなく、社員にも効果がある。
「学生に会社や仕事の魅力を伝えることで、面談を行う社員自身も、改めてその価値を再認識し、会社へのエンゲージメント向上にもつながることが分かってきました。複数の利用企業との独自調査では、学生との面談回数が多い社員ほど、仕事のやりがいや事業の社会的意義、仲間の魅力への再認識度合いが高いことが確認されています」
以上のような学生のキャリア観の変化や企業側のメリットを踏まえ、藤田氏は「人事部門が中心となって母集団を形成する従来型の新卒採用は、相互理解型・現場参画型のアプローチへと急速に変わっていくでしょう」と見る。そうした時代の要請に応えながら、「ビズリーチ・キャンパス」の機能拡充と並行して、より良い採用体制の設計を提案する伴走支援をさらに強化していくという。
採用の成否を左右するのは、もはや予算規模や求人媒体の選択だけではない。学生と社員が直接対話できる「場」をいかに設計するか――。その問いに向き合うことこそが、これからの採用競争力を左右する重要なテーマになりつつある。