手数料ゼロで進めるアパレル業界のDX OMOプラットフォームが新規顧客を生む新たな接点に 実店舗を訪れる強い動機付けになるZOZOの店舗在庫確認サービス

オンラインとオフラインを統合する概念「OMO(Online Merges with Offline)」。その重要性は知りつつも、日々の業務に忙殺されて最初の一歩を踏み出せないブランドは少なくない。ZOZOが提供するOMOプラットフォーム「ZOZOMO(ゾゾモ)」の店舗在庫確認サービスは、導入のハードルは低く、実際に導入したブランドからは「新規ユーザー層が増えた」との声が上がっている。

コロナ禍の課題から生まれた新サービスZOZOMO

 ITの進展や機器類の進化を背景に成長を続けるBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場。経済産業省の電子商取引に関する市場調査によれば、ファッションEC「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」が始まった2004年の衣料・アクセサリー分野のEC化率※1は1.4%※2だったが、24年の衣類・服飾雑貨等のEC化率は23.38%※3と大きく飛躍した。市場規模は前年比4.74%増の2兆7980億円で、上昇傾向が続いている。

 直近20年間の中で、とりわけインパクトが大きかったのは、やはりコロナ禍だ。それ以前もECは有望な販売チャネルであり、オンラインからオフラインへと導く「O2O(Online to Offline)」や、顧客との接点を増やす「オムニチャネル」などの施策が展開されたが、コロナ禍で状況は一変。客足が途絶えた実店舗に代わり、自社ECやECモールでの活動に力を注ぐことになる。ZOZOの片野浩三氏は「コロナ禍で多大な影響を受けたファッション業界の下支えになればという思いで、さまざまな施策やブランド独自のEC支援などに携わりました」と、当時を振り返る。

片野浩三
ZOZO
ブランドソリューション本部 ブランドソリューション推進部
ZOZOMOブロック ブロック長

 しかし、行動制限が解除された後も、実店舗にはなかなか客足が戻らない。そこでZOZOでは21年11月にOMOプラットフォーム「ZOZOMO(ゾゾモ)」を立ち上げた。OMOとはオンラインとオフラインをシームレスにつなげることで、そのブランドにおける顧客体験価値の総和を高める施策のことを言う。

 「当社の強みは、ZOZOTOWNの運営を通じて蓄積したファッション領域の膨大な知見と、ファッション好きのスタッフならではの視点、そして開発当時、年間購入者数989万人を誇った販売力にあります。それらの強みを生かしたソリューションとして開発したのがZOZOMOで、ZOZOTOWNとブランド実店舗、ブランド自社ECをつなぐことで、ブランドの活性化に貢献したいと考えました」

 ZOZOMOのプラットフォーム内で提供するサービスの1つが「ブランド実店舗の在庫確認・在庫取り置き」だ。ECと実店舗の双方を運営する場合、ECモールの表示が「在庫なし」でも、実店舗には在庫があるケースがあるが、そのことを知らないユーザーは買えないものとして諦めてしまう。しかし、ZOZOTOWNの商品詳細ページから実店舗に在庫があることが分かれば、ユーザーは店舗に在庫状況の問い合わせをせずに、安心して店に足を運ぶことができる。一方、ブランドにとっては店舗在庫確認サービスがECから実店舗への導線として機能するため、チャンスロスを減らすことができる上に、外部チャネルであるZOZOTOWNから、自社店舗・ECとは異なる新たなユーザーとの接点が広がる可能性もある。

※1 全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合
※2 出所:平成16年度電子商取引に関する実態・市場規模調査(経済産業省・ECOM・NTTデータ経営研究所)
※3 出所:令和6年度電子商取引に関する市場調査(経済産業省)

顧客や販売にかかるデータの統合化が課題解決の近道

 新たなユーザー、すなわち新規顧客の開拓は小売業にとって重要なテーマだが、昨今のファッション業界ではそのほかにもさまざまな課題を抱えているという。

 「ブランド担当者と話していて感じるのは新規顧客の中でも、実店舗の顧客層と異なる層を開拓する難しさ。それまでターゲットにしてこなかった層だけに、従来のやり方でリーチできないこともあります。また、『ECでも実店舗でも、1つのブランドとして一体的な顧客体験を提供したい。そのためにもオンラインを充実させたい』との声も多いですが、現場は常に人手が不足しており、新しいことに取り組むのは容易ではありません。ただ、これらの課題はそれぞれが独立して存在するのではなく、データという串を通すことで、一貫した課題として捉えることができます」

 カギを握るのはECと実店舗のシームレス化だ。かつてはECと実店舗が別物として扱われてきたが、O2O等の施策によって両者の距離は縮まりつつある。今後の課題解決のためには自社EC、実店舗、ECモール、SNSなどの顧客接点と、それぞれの販路の在庫や販売にかかるデータをシームレスにつなぐことが重要。ECモールは自社販路とは異なる顧客層との接点になり、ECと実店舗のデータをつなげば一体的な顧客体験を提供しやすく、データの力を借りることでリソース不足を補うことができるからだ。

 店舗在庫確認・取り置きサービスを提供するZOZOMOは、ECと実店舗のシームレス化に寄与するプラットフォームだ。ブランドはZOZOTOWNのシステムに実店舗の在庫情報を登録する必要があるが、特別なシステムの導入は不要で、導入後のデータ更新は手動・自動の双方に対応。しかも、店舗在庫確認サービスの費用無料と、利用のハードルが低く設計されている。実際に 「ブランド実店舗の在庫確認・在庫取り置き」を利用しているブランドへのアンケート調査では「導入後に感じた利点」として、6割以上が「新しいユーザー層の獲得や来店効果を感じた」と回答。ECモールから実店舗への送客が進んでいることがうかがえる。

 アーバンリサーチ デジタル事業部CRM課マネージャーの辻本伸也氏は、店舗在庫確認サービスの利用を通して実感している効果を次のように説明する。

 「販路と店舗への認知を拡大したいと考えて、ZOZOMOの店舗在庫確認サービスを導入しました。それまで自社販路では接点のなかったお客さまが、ZOZOTOWNで当社商品を見て初めて来店されるケースが増えています。ZOZOTOWNを通じてリピーターになった方や、当社会員に登録された方もおられます。また、人気商品や希少性の高い商品に関してはお客さまからお問い合わせをいただく事がありますが、ZOZOTOWNユーザーは在庫情報を確認した上で来店されるので、在庫問い合わせに対する店舗の業務負担が軽減されました」

 同様の声は多数のブランドから上がっている。実際に来店してもらえればほかの自社商品を手にしたり、接客を通してさまざまな提案ができたり、リアルならではの豊かなコミュニケーションが可能になる。片野氏は「実店舗を軸にした戦略がコロナ禍では難しくなり、その苦境を乗り越えるためにECに力を入れ、再び実店舗という変遷を経験したことで、ブランドのOMOに対する意識は変わったのではないか」と指摘する。

実店舗の在庫情報がECユーザーの心をつかむ理由とは

 店舗在庫確認サービスに対するユーザーのインサイトも気になるところ。ZOZOが実施したユーザーアンケートでは「ZOZOTOWNの店舗在庫を見てから1カ月以内に実店舗へ行った(取り置き注文での来店を除く)」人は3割で、そのうちの約6割は「実際に店舗で商品を購入」また、残り3割は「後日ZOZOTOWNで購入」と回答。この結果はブランド側が感じている導入の効果と矛盾しない。片野氏によれば「在庫情報を見たということはZOZOTOWNの商品詳細ページを閲覧しているということなので、その時点で買う一歩手前の状態」であり、購買意欲の高まったユーザーの購買機会を逃さずに、ブランドの売上に貢献していると言えそうだ。

出所:「ブランド実店舗の在庫確認・在庫取り置きサービス認知度・来店率」調査結果 25年12月 ZOZO調べ。

 また、ECはその性質上、商品のサイズ感や質感といった情報を届けるには限界がある。「EC購入に慣れているZOZOTOWNユーザーの中でも『試着したい』『実物を確認したい』というニーズが一定数ある」と片野氏。しかし、店舗在庫確認サービスを導入しているブランドならば、ユーザーは在庫のある店舗を訪れて試着し、素材や質感を確認した上で商品を購入することが可能だ。アーバンリサーチの辻本氏は「店舗スタッフは、接客したお客さまから『店舗の在庫確認ができることで、通勤時の最寄り駅で商品を見られる』『スタッフの接客を通じて自分には似合わないと思っていたデザインの商品をスタイリングに組み込むことができ、友人にも好評だった』といった声をいただいている」として、店舗在庫確認サービス導入の手応えを実感している。

 片野氏は「特定のブランドのファンは別として、一般のEC利用者は買おうと思ったときに在庫がなければそこで終わり」であるとし、OMOに取り組むことでユーザーの残念な体験を減らすことができると説く。

 「多くのユーザーにとってZOZOTOWNは購入する場であるだけでなく、商品を確認・比較するためのカタログのような存在でもあります。中でも在庫情報へのニーズが高いのは高額商品。高額なお買い物だからこそ、慎重に実物を確認した上で買いたいと考えるのは自然なことかと思います。また、キッズブランドも店舗在庫確認サービスと好相性。子ども服はサイズが細分化されているため迷いがちな上、買う商品がピンポイントで決まっているケースも多いです。子育て世代は多忙ですから、無駄足を踏まないように在庫を確認した上で来店する方が多いと聞いています」

 ブランドにとっては新規顧客開拓やシームレスな体験価値の提供につながり、ユーザーにとっては欲しい商品を購入する機会が広がる店舗在庫確認サービス。ただ、ZOZOにとっては実店舗への送客を促すことで販売機会が減るように思えるのだが、片野氏は次のように回答した。

 「OMOは体験価値を向上させるためのもの。最終的に買う場所が店舗であったとしても、ZOZOTOWNで良い体験を重ねることで、ZOZOTOWNのファンになっていただけると考えています。これまで当社ユーザーの皆さまに<ファッションを『買う』ならZOZO>というイメージを持っていただけるような成長を続けてきましたが、それをさらに進化させ、現在は<ファッションの『こと』ならZOZO>を目指しています。これからもブランドの皆さまと共に、自由で満足度の高い購買体験の提供が業界全体のスタンダードになるように取り組んでまいります」(片野氏)