FOCUS
  • 生活の質向上
  • 技術価値の最大化
  • 社会的責任の遂行
  • 多様性の尊重

 「省・小・精」と顧客起点の発想で社会課題解決と成長を加速する

セイコーエプソン株式会社
代表取締役社長

𠮷田 潤吉

PROFILE

1988年セイコーエプソンに入社。2020年執行役員 プリンティングソリューションズ事業部副事業部長、2021年執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部長、2024年取締役執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部長を経て、2025年から現職。

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2025年4月、セイコーエプソンでは、𠮷田潤吉氏が代表取締役社長に就任した。ビジネスデベロップメントや新規領域開拓の経験が豊富な𠮷田氏のリードの下、「省・小・精の技術」と「顧客起点の発想」の融合で、社会の発展と企業の成長をより強力に推進する構えだ。改めてその展望を聞いた。

 営業・マーケティング分野で活躍してきた𠮷田氏の就任は、歴代社長の多くを技術開発分野出身者が占めるセイコーエプソンではやや異例といえる。

 「当社は精密加工やMEMS加工技術(超微細加工技術)をベースに完成品を開発してきた会社です。しかし今後の持続的成長を考える上では、優れた技術、製品、仕組みをもっと活用していただけるよう、市場の開拓が重要になります。今回の就任は、その遂行を期待されてのことだと認識しています」

 エプソンはかつてインドネシアでのプリンターの使用実態から「お客様は低コストで気兼ねなく大量印刷したいと考えている」とのニーズに気づき、小型カートリッジが主流だった市場に大容量インクタンク搭載モデルを上市した。

 現在では、販売エリアを約170の国と地域に拡大し、24年10月末時点で大容量インクタンクプリンターの世界累積販売台数1億台を達成するなど、セイコーエプソンの収益の柱の1つとなった。

 「お客様にとっての便益を理解することで、技術の使い方、提供の仕方を変えられ、市場形成につながりました。この“顧客起点の発想”でお客様に伴走し、高い価値を創出していきます」

持続可能性に寄与する
インクジェットイノベーション

 𠮷田氏の実績は、経営理念の冒頭にある「お客様を大切に、地球を友に」を大切にし続けてきた姿勢の表れといえる。もちろん同社全体でも創業以来、社会や環境のサステナビリティを念頭に技術開発を行う。パーパスとして「省・小・精」を掲げ、製品開発ではムダを省き、小さく、高精度であることを追求している。

 「省エネや省資源は重要な課題です。小さく作れば材料も輸送コストも少なくて済む。精度が上がればお客様の使用時の効率も上がる。“省・小・精の技術”は、お客様の業務に確かな貢献を果たし、かつ気候変動を始めとする環境課題の解決に大きく資するものと認識しています」

 𠮷田氏がけん引する次のステージでは、この「省・小・精の技術」に「顧客起点の発想」を融合させ、研究開発、商品企画、マーケティング、営業といった全てのバリューチェーンを連携し、『お客様価値の創造』に向かう。

 その軸の1つとなるのが、グローバル展開しているソリューションを有機的に統合してさまざまな顧客価値を創出する「インクジェットイノベーション」だ。

 セイコーエプソンのインクジェット技術を支える中心的な技術は、熱を使わず、インクを必要なところに必要な量だけ吐出する独自のマイクロピエゾ技術だ。加熱によるインクの変質がなく、紙だけでなく金属やプラスチック、衣類などさまざまな物質に対し、必要量だけ吐出するため、ムダが出にくいのが特長だ。薄膜ピエゾテクノロジーやMEMS加工技術などを融合した最新世代であるPrecisionCore技術は、ホーム・オフィス製品から商業・産業用まで幅広く応用することができる。

 「今ではマイクロピエゾ技術を生かして、アパレル市場の深耕を進めています。衣類を色染めする際はアナログの捺染に比べて、インクも洗浄に使う水の量も職人の手間も大幅に削減でき、職人が化学物質を含む染料に直接触れずに済むようにもなります。また、機能性材料を吐出する技術は、太陽光発電パネルや電子基板製造にも応用可能です。これらの技術を手掛けるベンチャー企業に出資を始めています。ポートフォリオ改革や、資本提携を含めたパートナー企業との共創を進めることで、イノベーションを起こしたいと考えます」

■エプソンの目指すインクジェットイノベーション

多様な現場の多様な声を
力に変え、成長領域を拡大する

 イノベーションの創出にあたっては、「チーム・エプソン」を前面に打ち出し、多様性を重視しながら社員がやりがいを持って活躍できる文化の醸成に力を入れている。

 「多様な個性が、世界中で地域特有の課題や変化に対応する力になり、組織の生存力を高めます」

 経営方針や戦略を社員に共有し、グループ目標の達成に向けて変化や挑戦をおそれない機運を醸成するため、𠮷田氏は着任から9カ月で、国内外の32拠点でタウンホールミーティングを開催。延べ3800人と対話した。

 「直接会って言葉を交わすことで、社員は会社の方針が腑に落ち、私自身も多くの気づきを得ます。1つのバリューチェーンだけでは完結しない領域を、横断的に進める必要があります。多様で自律した人材が協力し掛け算の力を発揮できる環境をつくります」

 セイコーエプソンは、3月中旬に次期長期ビジョンを発表する予定だ。

 「当社には、創業時より大切にしてきた『誠実努力』・『創造と挑戦』の精神があります。この精神と経営理念、パーパスで描かれた“省・小・精”から生み出す価値でお客様と地球を豊かにするという理念は不変のものとし、それ以外は業容を変えながら成長してきました。今後も『チーム・エプソン』で、スピード感を持って時代に対応し変化し続けます。次期長期ビジョンでは、どれだけ成長領域を広げられるかを示しています。ぜひご期待いただければと思います」

SDGs:2015年9月の国連サミットで採択された、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標」

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