- グンゼ
新しいヒット商品を生み出した
新しいマーケティング手法とは
急激な気候変動は消費行動にも大きく影響する。それに合わせて売れ筋商品も変わり、ブランディングも変わってくる。そうした状況の中でどうヒット商品を生み出していくのか。衣料品大手でもあるグンゼでは、革新的な調査手法を使って消費者の真のニーズを探り出し、自社の独自技術でニーズに応える商品を開発。消費者の理解を促すプロモーション戦略の展開を徹底し、ヒット商品を生み出した。グンゼの武安秀俊氏にヒット商品誕生の秘訣を聞いた。
(聞き手:日経クロストレンド/日経トレンディ発行人 勝俣哲生)
6カ月で80万枚を突破した
ヒット商品「アセドロン」
アパレルカンパニー 営業MD本部
商品企画部
マーケティンググループ グループ長
武安 秀俊 氏
勝俣 日本の夏の期間が長くなる中、グンゼが2024年に発売したアセドロンはその年のヒット商品14位になり、今年も好調です。どのような商品なのでしょうか。
武安 2024年3月にデビューしたアセドロンは、「そのアセ、ドロン」というキャッチコピーが示すように、汗を瞬時に処理し、不快感を解消するもので、当社の独自技術を駆使して開発した機能性衣料品です。
当社はインナーウエア、レッグウエア、ハウスウエアという服種別の縦割り組織でしたが、それを横串にして企画をする流れになって初めて生まれたブランドが、このアセドロンです。当社らしくないブランド名にもチャレンジしました。
発売からわずか6カ月でシリーズ出荷枚数が80万枚を突破した初速の良い商品になり、24年12月に100万枚を突破、25年7月には200万枚を突破というまれに見る伸びを記録しました。24年10月には、吸湿発熱と汗処理機能を持った防寒のための「ファイヤーアセドロン」を新発売しました。
勝俣 夏が長くなって2季化が指摘されていますが、商品の開発や生産、販促などにはどのような変化があるのでしょうか。
武安 気候変動によって、お客様が商品を購入する時期の早期化と晩期化が定着しつつあります。25年だと4月から10月ぐらいまで暑さが続きました。ただ、長く夏の商品を品ぞろえするリアル店舗もある一方で、従来通りに8月で商品を切り替える店舗もあり、買い物難民のような状況も生まれています。これに対応できるのが売場を持たなくていいECであり、その拡大により、必要なときに買える状況の整備は進んできています。こうした変化に合わせて、グンゼでは、早期に商品企画に着手し、特殊な素材を使う場合には共通化するなどスピーディーな生産体制を構築することはもとより、長期間売場にあり続けるために、販促や広告宣伝のクリエイティブ(制作物)を統一化するといった工夫を凝らしてきました。
モーメントを重視して
繰り返し同じメッセージを
発行人
勝俣 哲生
勝俣 アセドロンでは、マーケティング面でどのような特徴があったのでしょうか。
武安 アパレル商品では試着してもらって実感いただくことがマーケティング上、最大のポイントになります。しかし、肌に直接触れる商品では試着がかなわないため、体験認知がしづらいジレンマがあります。そこで分かりやすいメッセージを何度も繰り返し一貫して発信することで、着ることなく、リアルな試着感が得られるプロセスを提供し、体験認知の最大化を実現しました。
勝俣 長い夏を1つに捉えるのではなく、細分化してメッセージを変えるというようなことはしなかったのでしょうか。
武安 いろいろ変えてしまうとお客様も迷ってしまい、伝えるパワーが分散して効率的ではないのであまりしません。同じメッセージとアセドロンという名称、お化けのロゴを掛け合わせたメッセージを伝え続けました。
もう1つの特徴は、機能とベネフィットを瞬時に分かりやすく伝える「機能ブランディング」という顧客起点のストレートなマーケティング手法を取り入れたことです。お客様の不満足度からインサイトを得て、それを満たす独自の商品を開発し、統一されたプロモーション戦略と記憶に残るクリエイティブ戦略を展開しました。
勝俣 従来のマーケティングとはどう違うのでしょうか。
武安 調査レイヤーを変更しました。従来の「どのような機能が欲しいか」といった恣意的なアンケート調査では、本当に世の中から期待されているニーズが引き出せないと考えました。そこで生活者の想起率や商品利用率と満足度を調査し、ギャップに注目して生活者が感じている不満から課題を炙り出しました。
今回の調査では、「クール」や「速乾」をうたう商品が数多くあるのに満足度が低いことが分かりました。SNSや商品レビューなど不満が言語化されている場所をテキストマイニングしたりすることで「汗が残ることによるベタつき」という不満の原因を特定。それを解決する商品を開発して、プロモーションを設計しました。
プロモーションでは気付きにつながるモーメントを重視しました。バス停や駅の構内やホームといった汗の不快感を感じる場所とタイミングを考慮して同じメッセージを何度も繰り返し伝えることで、夏の不快さとアセドロンというブランドをセットで記憶してもらえるように設計しました。
二季化を攻略するために
3つのポイントを押える
勝俣 今後も二季化は進行していくと予想されます。どのような戦略でアプローチしていくのでしょうか。
武安 アセドロン以外にも、男性用に汗をかく場所だけをカバーする「エアリーハーフ」という涼しさを極めたTシャツ専用インナーや、暖かいけれど痒さを感じにくい秋冬商品「KIREILABO」完全無縫製インナーという機能性商品を提供しています。単に暑い寒いへの対処だけでは選ばれない時代になる中、これからも、お客様が欲しいと思う状況をつくり出して提案する手法を極めていこうと考えています。
勝俣 二季化という変化を攻略するポイントはどこにあるのでしょうか。
武安 ポイントは3つあると思います。商品単体としてしっかり機能を実感できること、商品と訴求ポイントを直結させてシンプルに構造化すること、そして選びやすいということです。必要以上の選択肢を提案すると何を選べばいいか分からなくなります。勇気を持って絞り込んだ方がいいと思います。
メーカーとしては効率的に取り組むことも重要です。アセドロンは夏の季節商品として開発されましたが、防寒機能を持つ「ファイヤーアセドロン」もラインアップし通年化しました。同じブランド名の方が年間を通じて店頭の棚を確保しやすいという狙いもあります。
商品開発で難しいのは数値的な機能性アップだけではなく、体感できるところまで検証してエビデンスをしっかり作り込んでいく部分になります。今後もこうした軸をぶらさずにお客様に喜んでいただけることを追求していきます。
関連リンク
アセドロン製品サイト
https://www.gunze.jp/store/e/easedoron/
問い合わせ
グンゼ株式会社
https://www.gunze.co.jp/

