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フィジカルAIで変わるロボット
人の価値を“増強”する存在へ
2025年夏ごろから「フィジカルAI(人工知能)」という言葉が注目されるようになった。AIの進化によってロボットの活用領域が大きく広がり、「フィジカルAI革命」とも言える大きな変化が起きると予想されているからだ。「フィジカルAI」とはどのようなもので、従来のロボットとどう違うのか。今後どの領域でどのような変化が起きてくるのか。そこでの日本の勝ち筋はどこにあるのか。警備ロボットや点検ロボット、案内ロボットなどのソリューションを開発するugoの松井健氏に話を聞いた。
(聞き手:日経BP 執行役員 日経クロステック/日経コンピュータ発行人 森重和春)
AIのマルチモーダル対応で
可能になったフィジカルAI
代表取締役 CEO
松井 健 氏
森重 最近注目されているフィジカルAIとはどのようなものか、改めてご説明いただけますか。
松井 これまでの生成AIはインターネットなどの情報空間上のデータを学習して情報の統計的なパターンを作ってテキスト文にするものですが、フィジカルAIは現実世界を観測して理解し、物理的な行動に反映させるものです。AIが進化して画像や音声など複数の形式のデータを扱えるようになったことで可能になりました。
フィジカルAIは3つの技術から成り立っています。空間認識、身体性、そして運動制御です。まずカメラやマイク、タッチセンサーなどを通して画像や音声、物質のデータを収集し、それらのデータをマルチモーダルなAIが理解して空間を認識します。そこには物理的な法則に対する理解も含まれます。
それをロボットなどに伝えることで、モノをつかんだりさせられます。その際には重さや質などの身体性を理解してモノを扱うことができ、その動き全体をAIが一元的に運動制御することで人間のように知的に動けます。認識のレベルが従来とは格段に違い、自律性、柔軟性が向上し、コストを削減できます。
森重 フィジカルAIによって、ロボットはどう進化するのでしょうか。
松井 フィジカルAIを人型のロボットに適用することで、様々な動きをさせられます。例えばSunday Roboticsが開発した家庭用ロボットは洗濯物を器用に折り畳み、Figureの人型ロボットはカメラを通して部屋の状況を理解して、片付けをプランニングして実行してくれます。
このようなフィジカルAIを搭載したロボットは物流やサービス、製造などの産業界でも利用され、研究現場にも応用されるようになります。自らデータを収集してイレギュラーなケースにも自分で判断して対応できるようになると予想されています。
AIを搭載したロボットの特徴は2つあります。従来のような業務特化型ではなく、一台で複数の役割を担うことができるという多能工化と、ロボットが外部の設備と連携するなどロボット単体の領域を超えた役割を担えることです。
推論して行動できることで
新たな適用領域が広がる
日経クロステック/日経コンピュータ発行人
森重 和春
森重 AIの搭載でロボットの可能性はどのように広がりますか。
松井 従来のロボットはルールベースで単一の構造化されたタスクを高速、高精度に行うもので、コストが高く、複雑なことには使えずに、柔軟性も欠けていました。しかし、AIと高度なハードウエアによってロボットシステムはトレーニングベースへと進化しました。目標に対して一連の動作を行い、リアルタイムに適応できるようになってきています。
さらに進化したフィジカルAIのロボットシステムはコンテキストベースで動きます。未知の状況下を自律的に認識して、推論して、行動します。リトライやリチャレンジして学習し、今まで難しかった製造、物流、医療、建設、小売などの領域でも適用できる可能性が広がると期待されています。
森重 ロボットが人のように動くようになると、ロボットの適用領域が広がるだけでなく、人とロボットの役割分担も変化しますね。
松井 大きく変わってきます。2030年までに世の中のタスクの構成が3つに分割されると見られています。ロボットとAIがほぼ担当する「自動化ゾーン」、人とAIが連携してペアで作業を行う「協働ゾーン」、そして創造的で複雑なトレードオフがあり、リーダーシップや倫理的な判断が求められる人が担当する重要度の高い「人間中心ゾーン」です。
人の役割はロボットを使う現場作業者からロボットを起点とする指揮者へと変わり、多数のロボットの稼働計画を立案したり、作業の優先順位付けをしたり、例外の判断やインシデント対応に集中していくでしょう。当然人に求められるスキルも変わります。ロボットの位置付けも、人の工程を自動化(Automation)するものから、人の価値を増強(Augmentation)するものになっていきます。
現場のデータを収集する
ツールや仕組みを提供
森重 フィジカルAIにおいてugoはどのような役割を果たしていくのでしょうか。
松井 現実世界の状況に対応するフィジカルAIでは、現場での状況を認識して反応を自律化できるという現場での対応が重要です。当社は現場とAIをつなぐ役割を担っていきます。すでに腕とコントローラーをセットにした「AIロボット向け模倣学習キット」を用意しました。現場でロボットに動きを教え込んでチューニングするための仕組みです。
また、AIエージェントがロボットの状況を観察してプランニングを最適化する「ugo Copilot」も提供しています。現場のデータから自律的、能動的にロボットが行動できるような環境を実現していきます。
森重 今後どのようにフィジカルAIが広がっていくとお考えですか。
松井 現在世界のGDPの約半分が労働力から生み出されています。将来的にはその領域をフィジカルAIに置き換えていくようになるでしょう。2026年には自律的に動く家事用のロボットや製造などの産業用ロボットが活用されるようになります。
その際に重要なのがフィジカルAIに必要な現場にしかないデータであり、現場のデータをどう学習させるかが重要なテーマになっていきます。当社としてはそのデータを集めるためのツールや仕組みづくりに取り組んでいきます。
フィジカルAIの世界では中国がハードウエアに強く、米国がAIに強い状況ですが、フィジカルAIを適用するアプリケーション、どこでどう活用するかなどのノウハウ、高品質なオペレーションから得られる現場のデータを蓄積することが、日本の勝ち筋になると考えています。
問い合わせ
ugo株式会社
https://corp.ugo.plus/

