新NISAなどの影響もあって、証券取引は手軽で身近なものになった。また、様々な種類の有価証券が現れ、さらにはデジタル証券の拡大も見込まれる中、この分野にビジネスチャンスを見出すプレイヤーは多いのではないか。一方で、マネロン対策やサイバーセキュリティ等、証券業への新規参入を目指す企業に求められる要素は日々増している。
そうした企業を、日本電子計算(JIP)とアットラーニングは緊密に連携してサポートしている。基幹システムで豊富な実績を持つJIP、法制度対応や業務に強いアットラーニング。両社のパートナーシップはいまも進化を続けている。
ビジネスチャンスを見出すプレイヤーの増加と、
高まる証券業参入のハードル

アットラーニング株式会社
代表取締役
山本 直人 氏
――まず、証券業界を取り巻く環境変化についてうかがいます。
山本 日本経済は長く続いたデフレ基調から、インフレ基調の時代に入ろうとしています。また、新NISAなどの影響もあり、証券市場への参加者が大きく増えました。特に個人に目を向けると、個人の家計に占める金融資産の割合は着実な伸びを見せています。証券会社の抱える個人顧客口座数は過去十年で7割以上増加し、昨年には4000万を突破。「貯蓄から投資へ」は数十年前に政府が掲げたスローガンですが、それが広く浸透しつつあると感じます。
藤田 利便性の高まりも要因の1つでしょう。2015年頃から、ロボアドバイザーをはじめとするフィンテック企業の参入や、スマートフォンで完結する投資サービスが増加しました。私たち日本電子計算(JIP)がシステムをご支援した企業も複数あるのですが、このようなサービスが成長していったこともあって、株式投資は手軽で身近なものになったと思います。
――証券業界への新規参入の動きについては、どのように見ていますか。
岡田 一部フィンテック企業の成長や、金融庁が毎年開催している「Japan Fintech Week」の隆盛をはじめ、証券業にビジネスチャンスを見出そうとするプレイヤーの方々は増えていると思います。
藤田 実際に、ここ数年で新しいビジネスモデルで参入しようとする企業様や、デジタル証券をはじめとした新しい分野へ参入しようとする証券会社様からのご相談も複数受けています。
山本 一方で、 2020年代に入ってから、開業に必要な金融庁への登録・認可を終えられた企業は減少傾向です。登録には、現状、実感として1年から1年半ほどかかるケースが多い。この期間は以前よりも随分と長くなりました。以前が簡単であったとは言いませんが、長期化の背景には、証券業務の体制作りに考慮すべきガイドラインやチェック項目などが大きく増えたことがあります。マネロン対策、サイバーセキュリティ、顧客情報管理等々。しかも、より具体的になっています。また、登録を目指す事業者は、同庁の監督指針が示すすべての項目についてきちんと説明できなければなりませんが、求められる具体性や実効性などが、より厳格に見られるようになっています。そうした意味では新規参入のハードルは、高くなったといえるかもしれません。

日本電子計算株式会社
証券事業部
証券営業統括部長
岡田 正彦 氏
岡田 新規に証券業界へ参入することは、決して簡単な挑戦ではありません。一方で、業界全体が変革期にある今だからこそ、異なる視点や技術、発想が強く求められています。
重要なのは、制度やルールを「障壁」と捉えるのではなく、「信頼を築くための基盤」として正しく理解し、自社の強みとどう組み合わせていくかを考えることだと思います。
――新規参入企業が直面する課題について教えてください。
山本 アットラーニングは、新規参入を目指す企業からの相談を受けています。多くの場合、相談に来られる立ち上げメンバーの中には、金融分野の経験者も数名いらっしゃいます。ただそうした方でも、自身が過去に経験してきた業務は分かっていても、その他の業務について十分に把握しているわけではありません。まず求められるのは、新規ビジネスを念頭に置いた課題認識です。監督指針の各項目の要件に照らして、何をすれば充足しているといえるのか、その判断には一定の経験が要求されます。そして、事業をスタートするためのインフラ整備、特にITインフラや人材の確保は誰もが直面する課題であり、重要なテーマです。金融分野ではITインフラに高い安全性や安定性、信頼性が要求されます。革新的なビジネスモデルを実現する場合でも、そこに変わりはありません。
岡田 日本電子計算(JIP)はシステム面で証券会社をサポートしています。ゼロから金融・証券ビジネスを始めようとする企業にとって、スタートアップ期のビジネスリスクをいかに抑え、成長分野に投資していくかが、極めて大きな課題と捉えています。特に、山本社長が言及されたように、金融分野ではITインフラへの要求水準も高まっていることから、システムコスト面での負担が大きくなる傾向にあります。
業務とシステムの課題を、2社で解決する
――業務とITに関する課題についてうかがいましたが、アットラーニングとJIPはどのような解決策を提案しているのでしょうか。
山本 当社の強みは証券ビジネスへの理解と、金融庁の監督指針に対応する仕組みづくりの知見です。この強みを活かし、証券業務を適切に行いうる体制作りを支援しています。私たちは、まずお客様の考え方やビジネスモデルについて、丁寧にヒアリングします。最初の対話に時間をかけることで、その後のプロセスをスムーズに進めることができる。監督指針に基づいて提示される数百項目について、それぞれタスクとして分解、整理し、作成するドキュメント類が1つ1つのタスクに応えるものとなっているか、お客様とともに検討を重ねていきます。
藤田 アットラーニング様の知見は、私たちがご支援した参入企業様からも「業界内で貴重」とお声をいただきます。また、知見をただ提供するだけでなく、プロジェクトマネジメントの手法を取り入れて、成果の再現性と確実性を高めるなど工夫もされているようです。
岡田 当社は証券総合サービスの「OmegaFSシリーズ」を提供しており、証券会社の基幹業務を幅広くカバーしています。証券業に新規参入されるお客様のシステムも多く支えてきました。
――証券業に新規参入する企業の多くがJIPのシステム・サービスを採用しているとのことですが、そのきっかけになった事例はありますか。
岡田 2015年頃から、お客様の接点となるフロント部分に独自のサービスをお持ちのお客様から、証券のビジネスロジックの一部を安価に利用したい、というご相談をいただくようになりました。投信の直販事業に参入を検討する銀行系の資産運用会社様から、インターネット企業傘下の金融機関様、ロボアドバイザーを提供する新規参入企業様まで、様々なお客様からこうしたお問い合わせをいただきました。
当時、フルパッケージでの証券システム提供が当たり前でしたが、我々は業界に先んじてサービスのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)化を始めていました。そのため、「APIであればビジネスロジックを部分利用いただけます」と説明し、ご採用いただきました。このようなお客様からのニーズにお応えしながら、徐々にサービスのAPI化を拡大していきました。
――先ほど言及された、スタートアップ期のビジネスリスクと、システムコストの面ではいかがでしょうか。
岡田 将来のビジネス成長が見込めるとしても、最初から個別にシステムをご用意すると、スタートアップ企業には固定費がかかり過ぎてしまいます。有望な企業がコスト負担に耐え切れず撤退となるのは、業界にとってもマイナスです。
一方で共同利用型システムを選択する場合、急激に事業が成長すると、短期間でシステムのキャパシティを超える取引量に達してしまう可能性もあります。その参入企業特有の課題を解決するため、立ち上げ当初の固定費負担を軽減できるレベニューシェアの料金体系を含む「フィンテックスタートアッププラン」をご用意しています。
――これまでフィンテックスタートアッププランを利用した企業は何社くらいあるのでしょうか。
藤田 これまで約10社にお使いいただいています。
――スタートアップ期のリスクを抑えつつ、柔軟に順次拡大できるという点は参入企業にとって大きなメリットとなりそうですね。
岡田 はい、参入企業様が必要とする「システム」と「ご支援」を連携させたプランを生み出せたと感じています。また、これに合わせてアットラーニングとのタッグにより「金融商品取引業者の登録」といった開業前のご支援から、業務運営に必要なオペレーションの構築・受託までトータルでご支援可能な部分も評価いただいていると感じます。
――実際に証券業参入を目指す方々と接していて、何を重視されていると感じますか?

日本電子計算株式会社
証券事業部
証券営業統括部
藤田 夏海 氏
藤田 特にスタートアップのお客様は、「自分のビジネスが、絶対に社会に必要なんだ」という信念を持たれており、「早期にサービスを始めたい」という思いが強いです。ご満足いただける「スピード感」を提供できるように工夫しています。導入プロジェクトの現場では、これまでの参入企業様の実績を活かしており、つまずきそうな工程を先回りしてご案内するなど、できるだけ期間を短縮できるようご支援しています。
岡田 また、お客様が目指すビジネスモデルの実現に何が最適なのかを、ビジネスの立ち上げ期を伴走するような形で一緒に考えることを大切にしています。例えば、お客様の実現したいことを丁寧にヒアリングしたうえで、必要とする証券ビジネスロジックはどの部分か、API接続でリアルタイム連携する部分・ファイル転送でバッチ連携する部分をどのように切り分けるかなど、柔軟な提案を心掛けています。
両社のパートナーシップで顧客をフルサポート
――両社は約10年前から、パートナーシップを結んでいると聞きました。その狙いについて教えてください。
岡田 スタートアップなどの企業が新規参入を考えたとき、最初に相談するのがアットラーニングのような法制度対応や業務に強い専門企業です。その後、具体化が進む中で、「システムをどうするか」といった IT関連での検討課題になる。両社が連携してお客様をサポートできれば、新規参入に必要な要素を幅広くカバーすることができます。システム稼働後の運用においても、両社の緊密なコミュニケーションにより、スムーズな法規制対応などが可能になる。それはお客様にとってのメリットでもあります。
山本 証券会社を立ち上げる際の重要要素として、社内体制、業務プロセス、人材、システムが挙げられます。例えば、監督指針の要件を満たす業務プロセスを考えるとき、多くの場合、システムの知識は欠かせません。両社のパートナーシップにより、業務とシステムの設計を一体的に進めることができる。それによりお客様の負荷を減らすとともに、プロジェクトのスピードを速めることができます。
――証券業への新規参入を目指す企業から、両社が選ばれる理由はどのようなものでしょうか。
山本 当社の社歴は23年ですが、私自身はこのビジネスに25年以上携わっています。また、当社としては登録だけでも60案件以上をサポートしてきました。行政の考え方、姿勢の変化についても至近距離から見続けています。お客様からも、そうした実績が評価されているのでしょう。監督指針への具体的な対応を考える上でも、過去の経験は非常に役立っています。その上で、初期の面談において、お客様の考えているモデルを理解し、登録や開業までの道筋を示すことが出来る点は、当社の強みと自負しています。
岡田 選ばれる決め手はリーズナブルなコストと、実績のある証券ビジネスロジックを柔軟に利用できる基幹システムだと考えています。しかし、一番の差別化ポイントはシステム導入だけでは終わらず、ビジネス立ち上げ後の成長期まで見据えた支援を行っている点です。先ほどご紹介した「フィンテックスタートアッププラン」をはじめ、JIPは新規参入を目指すお客様に寄り添った支援を行っています。
――今後の展望、そして新規参入を目指す企業へのメッセージをお聞かせください。
岡田 近年は、ブロックチェーンを用いたデジタル証券が広がりつつあります。また、異業種から参入を検討する話もよくいただくようになりました。証券業界は、今まさにデジタル技術や新たなビジネスモデルを受け入れながら進化を続けています。新規参入企業の皆さまが持つスピード感や技術力は、業界にとって大きな原動力です。
一方で、証券ビジネスは「信頼」がすべての土台となる世界でもあります。制度対応や業務基盤を確実に押さえたうえで、自社ならではの価値をどう重ねていくかが成功の鍵になります。
藤田 私たちは、その橋渡し役として、新たな挑戦を現実のビジネスへとつなぐ支援を続けていきたいと考えています。ともに次の証券業界を形づくっていけることを期待しています。
山本 デジタル証券を含めて、有価証券のフィールドは広がりつつあります。既存証券会社もサービスメニューを拡充しようとしていますが、今後は、そこにチャンスを見出すプレイヤーの参入も増えるでしょう。私たちはJIPとともに新しい潮流を捉え、新しいニーズに対応していきたいと考えています。



