

――上場インフラファンドは、どんな魅力を持つ投資商品でしょうか?
新田 いくつもありますが、一番の魅力は、やはり長期安定的な収益が得られる点です。上場インフラファンドとは、主として太陽光発電設備などの再生可能エネルギー発電設備に投資し、投資した資産から得られる収益を投資家の皆様に分配する金融商品のことで、現在、東京証券取引所インフラファンド市場に上場している銘柄は、国が推進する「エネルギーの安定供給と脱炭素の両立」という政策に適合しています。
同じ上場銘柄でも、株式の対象となる企業業績は、景気の変動などに大きく影響を受ける可能性がありますが、再生可能エネルギー発電による発電量の需要は景気の変動に左右されにくく、上場インフラファンドは長期的に安定した収益を得ることができます。
中村 株式や債券といった伝統的な金融商品と相場が連動しにくいオルタナティブ運用商品なので、資産運用ポートフォリオに組み込むと一定の分散効果が期待できることも、上場インフラファンドの大きな魅力だと思います。しかも、1口数万円程度からと、個人でも手が届きやすい価格で購入できる点も人気の理由でしょうね。
われわれの上場インフラファンドが投資しているのは大規模な発電設備であり、1つの発電設備を開発・建設するのには数億円から数十億円規模の資金が必要ですので、かつては機関投資家やプロの投資家しか手が出せなかったわけですが、小口化することにより、個人投資家の方々でもインフラ関連のアセットを手軽に買えるようになりました。そう考えると、上場インフラファンドは、個人投資家には敷居が高かった“オルタナティブ投資”の民主化に貢献した運用商品の一つだと言えそうです。
松塚 手ごろな価格で買えるのもメリットですが、個人投資家の方々にとっては、利回りの高さも大きな魅力と言えるのではないでしょうか。銘柄によっても異なりますが、上場インフラファンドの利回りは年6~8%と非常に高水準です。これほど高い利回りを実現できている上場銘柄は、株式やJ-REIT(上場不動産投資信託)でもそう多くはありません。
また、先ほど、国の政策に沿って長期安定収益が期待できるという話がありましたが、投資家の皆様がインフラ投資法人を通じて間接的に再生可能エネルギーに投資できるという側面もあります。石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料の輸入に依存する火力発電は、この先、円安が進行して輸入価格が上がると、コストの増大によって収益力が下がる恐れがあります。その点、燃料の輸入に依存しない再生可能エネルギー発電は低コストを維持し続けられるので、長きにわたって安定収益が見込めます。
永森 ご存じのように、日本は2050年までにCO₂などの温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現を、国際公約として掲げています。これを達成するためには、さらなる再生可能エネルギー発電設備の開発が欠かせませんが、相当な資金が必要となるので国の予算だけではとても足りません。
そのため、民間からも積極的な資金投入をする必要があり、われわれ上場インフラファンドは、その受け皿としての重要な役割を担っていくことになります。
その意味で、上場インフラファンドは今後ますます注目されます。
――今、上場インフラファンドを取り巻く市場環境は、どのようになっているのでしょうか?
松塚 最近気になっているのは、太陽光発電設備の開発によって、湿地や山林などが荒らされているというニュースが増えていることです。
そのため、われわれのような上場インフラファンドへの風当たりも強くなっていますが、ご理解いただきたいのは、上場インフラファンドにおいては、既に運転開始済みの太陽光発電設備を対象に投資するものであり、原則として開発や建設を行うものではありません。
投資法人に資産を組み入れる際には厳格なデューデリジェンスを実施しており、環境破壊につながる可能性のある資産は対象としておりません。
また、太陽光パネル自体についての問題も惹起されているところですが、技術の進歩によって太陽光パネルの寿命は延びていますし、軽量、柔軟でかつ低コストのペロブスカイト太陽電池の普及によって、様々な技術革新が進んでいます。
われわれは、こうした技術革新の動向もキャッチアップできるよう不断の努力をしており、投資家の皆様に、安定的に分配できるように努めております。
永森 われわれも太陽光発電設備の取得を検討する際には調査を行いますが、周辺住民の皆様との間でトラブルを抱える可能性のある設備については取得をしないというのが原則です。
昨今では、事業者が問題のある発電設備を放置し、災害の危険性を高めているという問題もあるようですが、上場インフラファンドにおいては発電設備ごとに責任者および連絡先を明示しており、定期的なメンテナンスを実施するなど責任を持った運営を行っています。
また、従来、人口減少や少子高齢化によって日本の電力需要は 2024年ごろにピークを打つと予測されていました。
ところが最新の予測では、2030年以降も数パーセントずつ増え続けるという需要拡大の見通しに変わっています。
国が半導体の製造を増やしていることや、AIの普及によって、大量の電力を消費するデータセンターの開発が進むことが、需要拡大を促す見通しであり、需要に対応できるクリーンな発電設備を主な投資対象とする上場インフラファンドにとっては、大きな追い風が吹いていると言えます。
中村 ひと口にインフラと言っても様々な分野がありますが、社会や暮らしの維持に欠かせない電力インフラは、コア中のコアだと言えます。
われわれが投資している再生可能エネルギー発電設備は、社会的な必要不可欠性に支えられた、まさにそんなど真ん中のインフラです。今後も資金需要の高まりを背景に、個人・機関投資家を問わず運用資金の流入が期待されます。
それによって市場規模が拡大し、取引が活性化していくことも追い風だと思います。
また、再生可能エネルギーは景気変動の影響を相対的に受けにくい側面があります。例えばコロナ禍では交通インフラの需要が大きく落ち込みましたが、電力需要は大きくは失われませんでした。こうした点からも、再生可能エネルギー含め電力インフラに投資する上場インフラファンドは、長期的に安定的な収益が期待できる投資対象の一つだと考えています。
新田 電力が安定供給できるかどうかは、国の力や発展にも大きく影響します。言い換えれば、国が成長するには安定的な電力供給が不可欠であり、今後、わが国でも電力需要は増えていくと思います。
とはいえ、昨今の燃料価格の高騰などを考えると、化石燃料を輸入に頼る既存の発電設備の拡充には限度があります。エネルギー自給率を高め、発電コストも抑えられる再生可能エネルギー設備の存在意義は、今後ますます大きくなっていきます。また、その重要性が認識されるにつれて、上場インフラファンドへの資金流入も増大していくと見込んでいます。
――ところで、再生可能エネルギーに関しては、発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束するFIT(固定価格買取制度)が、あと10年余りで終了する予定です。上場インフラファンドは、制度終了後も安定収益を維持できるのでしょうか?
永森 発電事業者が市場価格にプレミアム(補助額)を上乗せして電力市場で売電する FIP制度(フィード・イン・プレミアム)や、個別企業と直接長期の販売契約を締結するコーポレート PPAなどの新たなスキームの活用に向けて具体的な検討を始めています。
また、制度変更への対応も重要ですが、将来性や投資家の皆様へのリターンを考えると、既存の発電設備をいかに長期安定電源化するかということも重要な課題です。これに関しては、資源エネルギー庁が再生可能エネルギー発電設備の評価制度を設ける方針を示しているので、しっかり対応していきたいと思っています。
中村 FIT の終了に関しては、投資家の方々からもご心配の声を頂いていますが、われわれは電力を安定供給する社会的な役割を担っており、どんなに制度が変わろうと、事業を終わらせるつもりはありません。むしろ、FITという制度の“縛り”がなくなり、FIPやコーポレートPPA、蓄電池の併設など多様なスキームを活用できる余地が広がるという意味で、次の成長機会にもなり得ると考えています。
これまでは、制度の“縛り”があったので、上場インフラファンドの各銘柄の運用戦略も、極端に言うと似たり寄ったりになっていたところがありました。
しかし、これからは運用戦略の工夫によって特徴がより表れやすくなり、各銘柄の収益力に差がつき、投資口価格のパフォーマンスにも開きが出てくる可能性があります。投資家の方々にとっては、銘柄を選ぶ楽しみが増えるということになるかと思います。
新田 皆さんがおっしゃるように、制度がいかに変わろうと、今後も事業をしっかり継続していくことが大前提であると思っています。
その上で、投資家の皆様へ利益を還元するにはどのようなビジネス展開ができるのかを考え、独自性を持った運用ができたらと考えています。
松塚 脱FITにおいては多様な運用戦略こそが重要になります。資産を運用するには様々なノウハウだけではなく、業界全体を見通す力も必要となります。上場インフラファンドの運用者として、業界の動向の把握に注力し、必要があれば行政とも調整を行うなどノウハウの蓄積に努め、今後の戦略を検討しております。
ある年には、たまたま、特定の地域に限って、天候にすぐれず、日射が少ないということもあるでしょう。この点、上場インフラファンドは、複数の施設を保有し、ポートフォリオを組んだ運用をすることで、全体としては、安定した収益を獲得することも可能になっております。
ただ、各インフラファンドで、重点投資地域や安定した分配を行うための取り組みには違いもあり、投資家の皆様に、それぞれの上場インフラファンドの魅力をもっと感じてもらうために、絶えず、情報発信を行うことも重要だと思っています。
より魅力的な投資商品となるために、これからも業界一丸となって取り組んでいきます。
――脱FITを機に、各銘柄が切磋琢磨し合える環境になることを楽しみにしています。本日はありがとうございました。