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大規模な金融システム・サービスを支え続ける“テックカンパニー” 「知識エンジニアリング」による社会実装を加速し、幸せなデジタル社会の実現に貢献する

内川 淳氏

現代社会のインフラを支え、社会変革の原動力となっているのがITだ。とりわけ金融機関の基幹業務システムは、24時間365日、安定した稼働を維持し続けることが求められる。SMBCグループの中核IT企業として、グループ各社の基幹業務システムを長年にわたって開発・運用してきたのが日本総合研究所(以下、日本総研)だ。同社の金融×ITの取り組みによって生み出される価値とは――。
代表取締役社長の内川淳氏に聞いた。

ITソリューション事業を軸に、社会実装による課題解決を追求

日本総研といえば、老舗シンクタンクのイメージを連想する読者は少なくないだろう。実際、同社の研究員がメディアで発言する機会は多く、それがシンクタンクとしての印象を醸成している。しかし、シンクタンク事業はあくまで同社の一部にすぎない。代表取締役社長の内川淳氏は、日本総研の事業構成をこのように説明する。

「当社は、シンクタンク、コンサルティング、ITソリューションの3つの機能で事業活動を行っています。このうち圧倒的な事業ボリュームを担っているのが、実はITソリューションです」(内川氏)

内川 淳氏

日本総合研究所代表取締役社長

内川 淳

1988年、住友銀行(現三井住友銀行)入行。2018年、執行役員に就任するとともに三井住友フィナンシャルグループIT企画部長を兼任。以降、三井住友銀行常務執行役員、三井住友フィナンシャルグループ執行役専務グループCIO、日本総合研究所取締役などを経て、2025年6月より現職。

これを裏付けるのが、ITソリューション事業の規模だ。売上高と従業員数はいずれも日本総研全体の約9割を占めており、同事業の年間売上高は約3000億円に上る。しかも同社は、日本有数の金融グループであるSMBCグループの一員だ。同グループの基幹業務システムを企画から開発、運用まで一気通貫で担う、まさに「テックカンパニー」なのである。

「今年度、三井住友銀行は新勘定系システムへの移行を複数回に分けて実施しますが、このシステム開発も当社が担当しています」(内川氏)

日本総研の歴史をさかのぼると、1969年に住友銀行から分離独立する形で設立した日本情報サービスに行き着く。同社は当時から現在に至るまで、一貫して金融システムを扱ってきたが、システム開発の総合力を生かした挑戦も始めている。それが、ITソリューション事業を、シンクタンクやコンサルティングの事業と連携させる取り組みだ。

「2026年4月の組織変更で、各事業の連携を担うイノベーション共創推進部を新設しました。当社はこれまでも、国に対する政策提言や企業に対するコンサルティングなどを行ってきましたが、最終的な課題解決に至るには、提言にとどまらずビジネスとして実装まで手掛ける必要があり、そのためにITソリューションは欠かせません。3つの事業の共創を推進する専門部署を創設したのは、アウトプットとしての提言と社会実装のために必要なソリューションを直結させることで、より大きな価値創出を実現するためです」(内川氏)

このような自己変革を可能としているのが、同社の経営理念にうたわれている「知識エンジニアリング」という言葉だ。

「金融知識をインテリジェンスとして分析することは重要ですが、課題解決や価値創出のためには、ナレッジをより付加価値の高い情報に加工したり、実装のためのソリューションへと変換したりする必要があります。とくに今後はデータドリブンやAIの進化が前提となってくるので、知識とエンジニアリングを掛け合わせたこの理念はますます大きな意味を持つと考えています」(内川氏)

「攻め」と「守り」を兼ね備えた金融インフラを再設計

内川氏の言葉からも分かるように、日本総研は金融業務の深い知見とITの高度な技術力を併せ持つことが大きな強みとなっている。そして、この知見の源泉は、同社がSMBCグループの中核IT企業であることと不可分だ。

「SMBCグループは、銀行だけでなく信託銀行、リース会社、証券会社、カード会社、コンシューマーファイナンスなど、幅広い金融領域をカバーしています。各領域を深く理解するエンジニアが多数在籍しているため、グループを横断した基幹業務システムやサービス連携をスムーズに実現できます。また、勘定系システムの更改は数百人が関わる数百億円規模の大プロジェクトとなりますが、マルチベンダーを管理しながらプロジェクト遂行を積み重ねることで、大規模プロジェクトのマネジメント力も磨かれてきました。長年の経験で金融品質を維持するという意識も社内に浸透しており、これらすべてが日本総研のITソリューション事業の強みの源泉だと思っています」(内川氏)

日本総研のITソリューション事業の重要性は、SMBCグループの2026年中期経営計画にも表れている。同グループ中計で予定されているITトランスフォーメーションへの投資額は、3カ年で1兆円規模。これはSMBCグループで過去最大の投資額だという。内川氏はグループ中計で示されたこの方針について、「前中計からは約2000億円の増額となり、期待の大きさを感じながらも、これに応えてITを牽引していくことが当社の使命だと思っています」と、決意を口にする。

金融業界の潮流として各社のサービスを俯瞰すると、商品差ではなく、インフラや機能、顧客体験といった点も含め、再設計による差別化が進みつつある段階だといえる。ただし、そこには金融ならではの課題がある。

「これまでになかった視点で利便性の高いサービスを開発することは『攻め』ですが、金融の場合、単に新しいサービスを創出し、差別化を図ればいいというものではありません。技術革新は利便性を生む一方、リスク事象も複雑化・高度化するため、サイバーレジリエンスの強化や安定稼働といった信頼性、つまり『守り』の面もしっかりと維持する必要があります」(内川氏)

スタートアップのようにゼロからサービスを構築する場合と異なり、金融は現時点で動いている既存サービスを維持しながら、新しい仕組みを柔軟に接続できる形へとモダナイズする必要がある。「攻め」と「守り」のバランスを高いレベルで兼ね備えた最適なアーキテクチャーを構築する上で、日本総研の「知識エンジニアリング」は大きな推進力となっている。

「便利」「お得」「安心・安全」を軸に、Oliveで今後のデジタル社会像を築く

日本総研が開発を牽引した代表例が、2023年3月にリリースされたSMBCグループの個人向け総合金融デジタルサービス「Olive(オリーブ)」だ。三井住友銀行と三井住友カードの連携によって誕生した同サービスは、キャッシュカードとクレジットカードを一体化しただけでなく、証券や保険などの機能も1つのアプリに統合した。シームレスで利便性の高い金融体験を提供するサービスとして、開始から約1年後にはVポイントも統合され、高い支持を集めている。

「Oliveの立ち上げプロジェクトにおいて、日本総研は企画構想段階から深く関わりました。日本総研はこれまでも銀行システムとカードシステムの双方に携わっており、いずれのドメイン知識も豊富です。

コロナ禍を契機にデジタルへの要請が強まり、またお客様が店舗に来店されることも減少傾向にあったため、Oliveではバーチャル化した『デジタル支店』という新しい概念が導入され、全国にリーチするサービスの実現が進められました。また、集客力のある商業施設などにはこれまでの店舗よりも小さい『ストア』が設けられ、デジタルが苦手な方のサポートにも注力されており、この点はネット銀行との明確な差別化になっていると感じています。

日本総研はサービスの実現に、金融ドメイン知識を生かしてシステムの面で寄与しました」(内川氏)

Oliveの取り組みは、まさに「金融×IT」による価値創出を体現した好例だ。変化の早い時代だからこそ、まだまだ進化していきたいと内川氏は話す。とくに今後、重要になってくるポイントとして内川氏が挙げたのが、セキュリティ対策の強化とAIネイティブな体制づくりだ。

「セキュリティについては、2026年4月のミュトス・ショックに象徴されるように、未知の脆弱性が次々と狙われる時代ですから、変えないことこそがリスクになるという考えの下、『守り』をより強化すべく組織のマインドセットを変える必要性を感じています。また、AIについては、ITトランスフォーメーションの主軸になることは間違いないため、開発体制からガバナンス整備、採用、育成まで様々な取り組みを進めています」(内川氏)

AIガバナンス面では、単にAIを導入するだけでなく、独自にチューニングしたモデル構築へとかじを切ったという。内川氏の説明によると、「比較検証するため、マルチAIモデルによるプライベートなLLM環境を構築し、機密性やモデルの挙動コントロールを図っています」とのことだ。

また、AIネイティブ体制を整えるには、いかにAIに精通した人材を集められるかがカギを握る。

「日本では高度なAI人材が不足しているので、当社は採用と育成に力を入れるほか、AIをはじめとする最新テクノロジーのトレーニングの場として社内にエンジニアリングセンターを立ち上げ、内製力の強化を図っています」(内川氏)

内川氏は日本総研の「金融×IT」を通して提供したい価値を、「日本が豊かで幸せなデジタル社会になること」と表現した。

「テクノロジーの進化は、社会実装と価値創出が伴ってこそ意味があります。当社がこれまで培ってきた金融知見やテクノロジーを礎に、より良いデジタル社会の実現に貢献していきたいと考えています」(内川氏)

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