セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 コーポレートコミュニケーション本部 ブランドコミュニケーション部 シニアオフィサー 寺田 美穂氏 リンクトイン・ジャパン 執行役員 広告事業本部長 マーケティング・ソリューションズ 堀 モニカ氏

セブン&アイ・ホールディングスがグローバルマーケティングで着実な成果 支援するLinkedInが持つ強みとは

リテール領域の日本企業が世界規模でブランドを展開する際、避けて通れないのがBtoB戦略だ。コンビニエンスストア事業のグローバル化を進めるセブン&アイ・ホールディングスも、その一環として海外のビジネスパーソン向けコミュニケーションを推進している。LinkedInのBtoBグローバルマーケティング支援を受けてグローバルでの企業価値向上に取り組む同社の事例から、BtoBにおける企業価値向上のポイントを探る。

日本の小売り企業による海外へのマーケット拡大・企業理解促進は重要戦略

少子化が進む日本のリテールビジネスでは、マーケットの縮小が大きな課題となっている。加えて、ここ5年ほどでビジネス環境に大きな影響を与えるパンデミックや地政学リスクが立て続けに発生。これまで国内で高い業績を達成してきた企業といえども、今後が安泰とは言い難い。

セブン&アイ・ホールディングスも、こうした課題に向き合ってきた企業の一つだ。同社執行役員で、ブランドコミュニケーション部 シニアオフィサーを務める寺田美穂氏は、現状をこのように分析する。

「当社がこれまで主要マーケットとしてきた日米市場が成熟している中、その他の地域への展開とブランド理解は重要な戦略です。当社の中期経営計画でも、目指すグループ像としてグローバルな成長を掲げています。そのために、持株会社として海外の投資家を含むビジネスパーソンに自社を正しく理解してもらう必要性を強く感じていました。コンビニエンスストアはアジア地域では各社が進出していますが、欧州や中南米などはコンビニエンスストア自体が浸透していません。

このような状況下、当社は数年前まで日本国内向けの発信が中心で、海外からも注目が集まり始めているにもかかわらず、海外のビジネスパーソン向けのコミュニケーションが不十分でした」

セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 コーポレートコミュニケーション本部 ブランドコミュニケーション部 シニアオフィサー 寺田 美穂氏
セブン&アイ・ホールディングス
執行役員
コーポレートコミュニケーション本部
ブランドコミュニケーション部 
シニアオフィサー
寺田 美穂

寺田氏の振り返りを受け、グローバルでのブランド価値向上の重要性について語るのは、世界最大級のプロフェッショナルネットワークであるLinkedInの日本法人(リンクトイン・ジャパン)の執行役員 広告事業本部長としてマーケティング・ソリューションを統括する堀 モニカ氏だ。

同氏は、BtoBにおけるブランド価値向上において重要なポイントを3つ挙げる。

「1つ目はコミュニケーションの質を上げることが事業戦略の軸足となること。2つ目は業界をけん引するソートリーダーシップ(※1)を発揮すること。そして3つ目が活動の“継続”です」(堀氏)

※1 企業が特定の分野において革新的なアイデアや解決策をいち早く示し、その分野での思想的リーダーとなること。

リンクトイン・ジャパン 執行役員 広告事業本部長 マーケティング・ソリューションズ 堀 モニカ氏
リンクトイン・ジャパン
執行役員 広告事業本部長
マーケティング・ソリューションズ
堀 モニカ

継続的な発信が時間のかかるブランド作りを後押しする

堀氏が挙げた3つのポイントは、まさにセブン&アイ・ホールディングスの課題に当てはまる指摘だ。とくに2つ目のソートリーダーシップの発揮は、寺田氏が課題として挙げた企業の発信力に直結する。

「社会課題に対して素晴らしい取り組みをされている日本企業は少なくないのですが、アピールが遠慮がちな傾向があります。『私たちはこのドメインでこう考え、このように行動します』という強い信念をもっと積極的に発信すべきです」(堀氏)

そして3つ目の活動の継続について、LinkedInが提唱しているのが“オールウェザーマーケティング”だ。同マーケティングでは、全天候、すなわち景気動向の良し悪しにとらわれず、マーケットにメッセージを発信すること、そして、戦略、クリエイティブ、配信、測定というサイクルのフレームワークを地道に継続することが肝要と堀氏は語る。

Making Good Investments In Bad Times Can Give You An Edge On The Competition.

BtoBマーケティングにおいては、戦略(Strategy)、クリエイティブ(Creative)、配信(Distribution)、測定(Measurement)のサイクルによりコミュニケーションの質の向上を図るのが効果的だという

出典:LinkedIn The B2B Institute「All Weather Marketing:Making Good Investments In Bad Times」

「ブランドを育てていくには時間がかかります。しかも、BtoCマーケティングは一個人を説得できれば良いですが、BtoBマーケティングの場合は決裁者を取り巻く“バイヤーグループ全体”を説得しないといけません。そこでデジタルやデータを活用したマーケティングが非常に効果的である、ということが理解され始めてきたと思います。

そしてその発信の手法も洗練されてきていて、異なる対象に対して発信の“出し分け”ができるようになってきています。時間がかかるBtoBの説得プロセスを企業側が意識しながら、状況に応じて異なるコミュニケーションを行うことができます。

また、発信・投資の効果測定といったデジタル活用のテクノロジーも進化しています。それらを前述のオールウェザーマーケティングのサイクルにうまく組み込むことで、継続的な事業のスケールアップが可能です」(堀氏)

Knowledge Of Bought Brand Amongst The B2B Buyer Group

B2Bバイヤーグループの購入ブランドの認知調査。B2Bバイヤーの81%が、購入プロセスの開始時点で最終的に購入したブランドを「全員」または「ほぼ全員」が知っていたと回答した。一方、「推奨機能のみ」知っているブランドを購入したと回答したB2Bバイヤーはわずか4%であった

出典:LinkedIn The B2B Institute「Better, Bolder B2B Branding:How To Unlock The Biggest Opportunity in B2B」

LinkedInはオールウェザーマーケティングを補強する取り組みにも力を入れている。近年、ビジネス領域で発信力のあるインフルエンサーを認定しているが、ここには企業の経営トップも含まれる。経営者が自らの声で自社について発信することの重要性を認識しているからである。また、優れたパブリッシャーやクリエイターとの連携でコンテンツを生み出すプログラム「BrandLink」を展開し、要所で投資効果を検証する「ブランドリフトテスト(BLS)」を実施している。

セブン&アイ・ホールディングスの寺田氏がLinkedInを活用するのも、このような知見とサポート体制に信頼を置いているからだという。

「当初の活用は主に米国の投資家を含む海外のビジネスパーソンに、私たちの会社が何者なのか、何をしようとしているのかを伝えたい、というところから始まりました。

最初は広告投入が主だったのですが、並行して自社のLinkedInアカウントから投稿を行い、また自社のウェブサイトにコンテンツを置いてそこに誘導したりと、次第に複合的な施策へと発展させていきました。2025年からはターゲットのさらなる理解深耕や興味喚起を促す内容のビデオコンテンツも発信しています。

LinkedInが強みとしている13億人にも上る実名データはこれまでにないターゲティング精度をもたらし、さらに効果を検証しながら細かいチューニングを行うことで、効果的に広告を発信でき、ロスが少ないという評価です。例えば『施策が効いていない』と判断した場合は『より効果を高めるためにターゲットをある層に寄せる』『反応が想定と違うので別のコンテンツに入れ替える』といった要望にデータドリブンで素早く対応いただき、こうした施策のチューニングを積み重ねていくことで、発信内容が“本当に届けたい人に確実に届く状態”になりました。

実は当社が米国での広告戦略に力を入れ始めた2024年は、ちょうど米国大統領選挙の時期でした。いずれかの陣営に傾いてはいけませんし、州によっても反応が異なる中、スピーディーかつ効果的な発信をする上でLinkedInの精緻なデータには本当に助けられました」(寺田氏)

今こそ企業価値を伝え、グローバルでファンを増やすチャンス

こうした取り組みの結果、セブン&アイ・ホールディングスの米国ビジネスパーソンにおける名称認知と企業理解は大幅に向上したという(下図参照)。他の出店国・地域でも同様の効果が上がっている。

2023年~2025年の「認知・理解」ファネルにおける調査結果

2023年から2025年にかけてのセブン&アイ・ホールディングスの米国ビジネスパーソンにおける名称認知と企業理解の変化

出典:セブン&アイ・ホールディングス提供資料

「当社グループは現在、BtoCコミュニケーションを事業会社、BtoBコミュニケーションを持株会社(当社)と分担しており、ビジネスパーソンに対するグローバルでの企業理解促進の取り組みをさらに加速させたいと考えています。これまでの取り組みは日米やアジアが中心でしたが、生活インフラになり得るコンビニエンスストア事業は、欧州や中南米などにも大きな可能性があると考えています。そうした地域のビジネスパーソンに私たちの発信が届いて当社グループへの理解を深めてもらえるよう、今後もLinkedInを積極的に活用していきたいと思います」(寺田氏)

「当社がご支援する企業はこれまで製造業が多く、リテール領域ではほぼ初めてでした。その中で成果が出ていることは当社にとって大きな喜びです。セブン&アイ・ホールディングス様の今後の施策においても、当社のデータがお役に立てばと思います」(堀氏)

最後に、堀氏は今後の日本企業が意識すべきことについて、以下の言葉で締めくくった。

「社会の変化のスピードが速く、従来の施策の延長では対応できなくなっています。こうしたときに企業は発信を躊躇しがちですが、逆に言えばそのようなときだからこそ、オールウェザーマーケティングのような継続した発信でブランド価値を向上させるチャンスです。今後もこうした観点で、企業の持続的な成長に資するマーケティングのお手伝いができればと思います」(堀氏)