三井住友海上 × CoIU

企業と教育が目指す未来『三井住友海上とCoIUの「地域共創」パートナーシップ』

2026年4月の開学が正式に決定したCo-Innovation University(以下CoIU)を運営する学校法人CoIUは、
三井住友海上火災保険株式会社(以下三井住友海上)と「共創型人材育成に関する連携協定」を締結した。
この連携によって、両者は地域共創と人財育成という、大きな課題に共に取り組むことになる。

井上博成氏(以下井上氏):2025年8月に文部科学省から認可を受け、CoIUは26年4月の開学が正式に決まりました。大学教育、産学官連携、社会人向けリカレント教育を3本の柱とし、キャンパスは本拠地の飛騨(岐阜県)の他、北海道から福岡まで全国15カ所にサテライトキャンパスを構え、多様な教員陣とともに地域課題を実践的に学ぶ体制を整えています。

開学に先立ち、25年10月には三井住友海上と学校法人CoIUの間で「共創型人材育成に関する連携協定」を締結しています。その核心にあるのが社員を対象としたリカレント教育プログラム「MS Co-Innovationカレッジ」です。

舩曵真一郎氏(以下舩曵氏):連携を決めた背景には、社会課題となっている自然災害の激甚化に対して十分にリスクヘッジできる社会を創りたい、さらに、地域の可能性を切り拓く、攻めの視点を持つ人財を育てたいという想いがあります。

保険事業は、リスクの存在を前提に成り立ちます。しかし、例えば気候変動の影響などにより水災害が頻発する状況になると、想定されていた偶発的リスクの範疇を超え、保険では十分な補償が難しくなります。

また、地方自治体では、災害の頻発や激甚化に伴い防災や減災に多くの予算を割かざるを得ない状況が続いており、地域の企業支援や教育の充実、少子化対策といった地域活性化と合わせて、大きな課題となっています。

私たちは、防災・減災に取り組むと同時に、地域が人々にとって楽しく、明るく、活力のある場所であり続けるための取組にも、お金と知恵を使っていく必要があると考えています。そして、全国に拠点を持つ私たちのような会社で働く社員一人ひとりが、地域に魅力を感じ、楽しく仕事をして地域に貢献しキャリアを築ける、そんな世界を実現したいと考えています。

三井住友海上火災保険株式会社 取締役社長
舩曵 真一郎
1960年、東京都生まれ。神戸大学経営学部卒業。83年、住友海上火災保険(現:三井住友海上火災保険)入社。営業企画部長、経営企画部長などを経て、2021年より現職。24年よりMS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社グループCEOに就任。

連携で進めたいのは
地域の未来を共につくる人財の育成

宮田裕章氏(以下宮田氏):最近は熊の出没や、森林火災の延焼も話題になります。CoIUの本拠地である飛騨も土地の9割を森林が占めていますから深刻な問題です。これらの背景には共通の問題があります。人口の減少により、十分に管理されない空き家や耕作放棄地が増え、そこが野生動物の隠れ家になったり火災のリスクを高めたりしているのです。これらは確かに除去すべきかもしれません。しかし視点を変えれば、空き家や空き地を新しい活動の拠点にするなど、地域の資源として活用することで、防災と地域活性化を同時に実現できるはずです。

ですからCoIUでは「未来を創るプラン」を描ける人財を育てたいのです。CoIUは「共創学」を掲げ、地域や企業、自治体と連携し、理論、対話そして実践を往還することで、共に未来を創るプロジェクトを生み出していきます。そのための場、そしてエコシステムを創ることが私たちの使命だと考えています。

Co-Innovation University 学長候補
宮田 裕章
1978年、岐阜県生まれ。専門はデータサイエンス、科学方法論。東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)。慶応義塾大学医学部教授。2026年4月、CoIUの初代学長に就任予定。

舩曵氏:人財育成は当社においても最重要課題の一つです。従来、金融機関では国内外で転勤を重ね、様々な地域や部署で経験を積んだ人財がリーダーを担うという考え方が主流であり、各地域の支店長もそうした人財が占めることが一般的でした。

その一方で、地域で採用され、特定の地域に根差して働く社員の中には、家庭や生活上の理由から転勤が難しい人も多く、結果として女性社員の割合が高くなっています。こうした社員が高い能力を持っていても、転勤ができないという理由だけでキャリアの選択肢が制限されてしまうという課題がありました。

女性活躍や少子化対策といった観点では、産休・育休取得者がいる部署への手当など、様々な制度整備に取り組んできたつもりです。しかし、地域で働く社員の「もっと働きたい」「もっと地域に貢献したい」という想いを、私たちはどれだけ汲み取れていただろうかと、改めて考えるようになりました。これからは、地域を深く知る人財が地域の発展に大きく貢献し、重要なポジションにも積極的にチャレンジできる環境を整えていきたいと考えています。

当社は2018年以降、データサイエンスやAI、EVやドローンなどの先端技術の学習、さらにデジタルを使いこなすためのソフトスキル育成など、各テーマに応じた大学と連携し、人財育成に取り組んできました。今回、CoIUと共に進めたいのは、地域で働く人たちが自ら地域の課題を見つけ、解決策を提案できる力を育むための、これまでの発想や働き方の枠を超える教育の場の提供です。

井上氏:「MS Co-Innovationカレッジ」の第1期生には定員の倍近い応募があり、熱量の高さに驚いているところです。2025年11月から開講しましたが、自らのキャリアと地域の未来を重ね合わせながら「この地域でどんなことができるのか」という、問いを立て始めています。

学校法人CoIU 理事長
井上 博成
1989年、岐阜県生まれ。主な研究領域としては自然資本と地域金融。京都大学大学院経済学研究科博士課程研究指導認定退学(2024年博士号取得)。飛騨高山小水力発電、飛騨五木、すみれ地域信託を設立。2025年9月、学校法人CoIUを設立、理事長に就任。

舩曵氏:社員には、ぜひ日常業務から一歩離れ、新たな視点でイノベーションを生み出すことに挑戦してほしいと考えています。

宮田氏:参加を重ねることで、周囲から求められるから居続けるのではなく、ここで自分の未来を拓くことができると思うから自主的にその地域に居ることを選んでもらえるようにしたいです。CoIUは、少子高齢化が進む今の日本でも、ひときわそれが進んでいる地域に拠点を置くという狂気に満ちた取組ですが、しかしそこにこそ可能性と意義があると考えています。

独自の文化を入り口に
地域に深く入り込む重要性

舩曵氏:私が今日着ているシャツをご覧いただけますか。当社では既成概念から脱却するという考えの基ドレスコードを設けておらず、決して宮田先生に対抗しようとして選んだものではありません。(笑)

宮田氏:手描きのサークル模様がすてきですね。

舩曵氏:実は最近、ファッションを含む文化への向き合い方そのものが、地域との絆を深める上で重要なのだと気付かされた経験がありました。先日、岩手を訪問した際、少し時間があったので街を散策していたところ、とあるショップが目に留まりました。非常にユニークで、アート性の高い服が並んでいたからです。

調べてみると、障がいのある作家とアートライセンス契約を結び、その作品データを活用した多様なビジネスを展開する岩手発のスタートアップ「ヘラルボニー」が、盛岡の中心部にオープンした「ISAI PARK(イサイパーク)」というショップであることが分かりました。衝動的にお店に入り、作家の方々の数多くの作品に触れ、ひときわ気になったこのシャツを購入しました。

その際、お店をご案内いただいたヘラルボニーの社員の方に、お話を聞かせていただくことができました。そのとき改めて、既成概念に捉われない発想から生まれるビジネスの可能性、そしてその地域に根差した文化が持つ力を強く感じました。

宮田氏:ヘラルボニーは、地域やマイノリティーといったともすればネガティブな要素を、アートと仕組みの力で価値に変え、世界に発信している好例です。そして、地域との関係を深めたければ、そうしたストーリーを理解し、尊重することが不可欠です。

舩曵氏:保険会社の社員は、リスクや課題を見極めることに長けていますが、それだけでは人との会話が広がりにくい場面もあります。また、地域を知っているつもりでいても、日ごろ接する相手は保険代理店の皆さまをはじめ、どうしても限られたコミュニティーに偏りがちで、地域のことを深く知る機会は意外と多くありません。しかし、「あのアートは素晴らしいですね」「このお酒は本当においしいですね」といった、地域ならではの文化や魅力を入り口にできれば、自然と会話が弾み、仕事の輪も広がっていきます。そして、これまで関わることのなかった世界に踏み出すことで、未来を創るような新しいアイデアも生まれ、挑戦しようとする意欲も育まれていくのだと思います。

宮田氏:飛騨を深く知ると、飛騨がある岐阜や名古屋などの中部地方の文化は非常にユニークであることが分かります。名古屋や岐阜県南部の人たちは、織田信長が大好きです。岐阜の駅前にある金ピカの織田信長像がその証です。この嗜好は、安土桃山文化、つまり派手で国際的で多様なエネルギーに満ちていた時代の名残です。歴史を振り返ると、その後の千利休の侘び寂びが定着して以来、日本はずっと「派手なものは品がない」「侘び寂びこそが日本文化」という、ある種の固定観念に縛られてきたような気がします。そのため中部地方の人たちが独自の文化を誇れない時代が続いてきましたが、けばけばしいと揶揄されるような文化は、侘び寂びも含むあらゆるものを包摂する懐の深さを持っています。それは多様な人たちを引き付ける力にもなり得ます。

井上氏:地域社会に当事者意識を持って身を運び、ストーリーを見つけ、大切にする。問題の上流に踏み込んで、気付きを得る。そして、楽しく取り組みながらネガティブな要素も価値に変えていく、という一連の流れは、地域共創における重要なキーワードのように感じます。

地域共創のための人財育成には
組織変革も必要

井上氏:『越境者は二度死ぬ』。法政大学大学院教授で、CoIUでも教鞭をとっていただく石山恒貴氏の言葉です。

第一の死とは、越境先での今までの自分が通用しないという経験を通じて、自身をメタ認知し、これまで正解だと信じていた価値観や能力、所属による安心感、そして自己像が大きく揺さぶられ、更新されていくプロセスを指します。そして第二の死とは、越境から帰った元の組織文化に違和感を覚え、以前の自分にも戻れないという葛藤が生じるプロセスを言います。しかしこうした経験から生まれる気付きの先にしか拓けない未来があります。

従来は、そこから出てきたアイデアとか様々なチャレンジを会社が受容してくれないということが最大の障壁でした。人財育成だけではなく組織としてどう向き合っていくか、ということがセットでないとこの教育は意味をなさないんだ、ということを石山先生は強くおっしゃっていました。

その石山先生に、この「MS Co-Innovationカレッジ」について分析していただきました。このリカレントプログラムは、転居の伴わない社員の皆さんが、オンライン講義やフィールドワークを通じて得た学びや気付きを活かして、地域に根差し地域共創に取り組むことを目指しています。

三井住友海上においては、舩曵社長のリーダーシップの下、地域に根差した取組により、提供価値の総量を組織全体で上げていくんだということを強く掲げられているため、共創学の面においても非常に大きな意味があると評価いただいています。

舩曵氏:私も石山先生の『越境学習入門』を拝読し、多くの示唆を得ました。私たちのようなユニバーサル型の会社においては、地域で働く社員の存在こそが事業の基盤となります。このリカレントプログラムを通じて、地域に根差す社員が前向きに挑戦し、その姿が地域で働くことの魅力を発信するロールモデルとなっていくことを期待しています。

宮田氏:社員の皆さんには地域のストーリーを深く理解して、そこに寄り添えるスキルを身に付けていただくことで、地域で夢を語れる、保険から派生して可能性を生み出すことができるようになると思っています。

舩曵氏:社員が地域の夢や可能性を語れるようになったとしたら、それが何よりうれしいことです。仮にこの取組を通じて、保険とは直接関係のない分野で起業する道を選んだとしても、私たちはそれを前向きに受け止めたいと考えています。新たに生まれる企業は、地域経済にとって大きな力になるからです。

私自身、いつか退任した際には、地域に貢献できるスタートアップに挑戦してみたいと考えています。そのときは、ぜひご指導いただければ幸いです。

宮田氏:未来を創るために、私たちも全力で伴走します!

井上氏:こういった地域共創の思想を、ぜひ全国に広げていきたいですね。

宮田氏:これからの地方創生は、東京のまね事をするというような画一的な方法だけではうまくいきません。その地域が本来持っている文化を肯定し、地域のストーリーをつくっていく、ビジネスとして表現していく。ある地域でそれができる人は他の地域でもできますから、ローカルエンゲージメントに基づいた取組のエキスパートになれます。企業において役員の一角にそんな方がいれば、社全体としても大きな力になると思います。そして、そのような人が増えれば、日本の新しい文化の形を創ることができると信じています。

舩曵氏:気候変動への対応や少子化対策、地域活性化は、今や多くの人が日本の重要な課題だと認識しています。では、それを誰が担っていくのか。自治体だけに任せて解決できるものではありませんし、企業においても、本社で働く社員だけで解決するものではありません。地域で働く社員一人ひとりが、地域と共に考え、行動していくことが、課題解決への第一歩だと考えています。

「MS Co-Innovationカレッジ」は、そのための人財育成という、未来への投資です。その一期生となる社員たちは、とにかく楽しんでほしい。楽しむことこそが、地域共創には欠かせない力だと考えるからです。

もちろん、こうした課題は当社一社だけで解決できるものではありません。多くの企業が志を持ち、それぞれの立場で取り組んでいくことが必要です。皆が一丸となって地域を活性化することができれば、経済は好循環を生み、企業も成長していきます。CoIUとの取組が、そのサイクルを生み出すトリガーとなり、全国へと広がっていくことを期待しています。

宮田氏:地域の未来をどう創るのか、そこに生きる人たちの人生にどう寄り添うのかということは、リカレント教育プログラムともすごく共鳴する部分があります。一つの企業、一つの利益ではなく、地域に生きる人々や企業の皆さんが、一つの生態系として、共に学び、新しい文化を紡ぎながら、互いに響き合い高め合う「Better Co-being」を実現していく。そんな世界を目指して、CoIUは全力で取り組んでいきます。

井上氏:CoIUは、既成概念に捉われず、多様な価値観を尊重し、楽しく未来を切り拓く。そんな人財を、賛同いただける企業の皆さまと共に育ててまいります。

三井住友海上火災保険

https://www.ms-ins.com/

Co-Innovation University

https://coiu.jp/