
環境変化の加速が止まらない。既存事業の延長線上だけでは、大手企業でも将来を描くのが難しい時代だ。自社の強みを生かした新規事業を立ち上げ成長させていくことが、企業価値を維持・向上させる上で欠かせない。問題は立ち上げ後の持続的な成長にある。特に競争が激しく変化の早い通信市場において、安定した収益基盤を築くことは至難の業だ。難題に挑み、2017年6月の誕生から8期連続、すべての事業で増収増益を続けてきたのがU-NEXT HOLDINGS傘下のUSEN NETWORKSである。同社はいかにして、小規模店舗市場をターゲットにした月額課金モデルを成功に導いたのか。その裏側にあった、事業成長を加速させる“秘策”に迫る。
法人及び個人事業主向けインターネット回線の「USEN光 plus」とインターネットサービスプロバイダの「USEN NET」。この2つが、USEN NETWORKSの主力サービスだ。顧客層はともに、飲食や物販など小規模な店舗や全国展開のチェーン店、地場チェーン店を想定する。
2018年3月に「USEN NET」、同年10月に「USEN光 plus」のサービスを提供し始めてから、店舗市場を迅速に攻略し、売上高を着実に伸ばしてきた。
この事業、USEN NETWORKSにとって実はなじみ深いものだ。
前身は、店舗向けBGM配信を祖業とするUSENと、コンテンツ配信およびインターネット通信関連事業を展開してきたU-NEXT。2017年12月の経営統合以降は、ホールディングス体制のもと、両社が連携して同じ通信サービスを提供してきた。
USEN NETWORKS
取締役副社長
山田敏雅 氏
ただ、統合前は競合が多い個人向け市場に参入してきたこともあり、USEN NETWORKS取締役副社長の山田敏雅氏は「大手通信キャリアを中心にキャッシュバック合戦に陥り、消耗戦を強いられました。一方でライフタイムバリューを読みづらい。結局、事業を見直した経緯があります」と過去を振り返る。
USEN NETWORKS
取締役副社長
山田敏雅 氏
2017年6月に誕生したUSEN NETWORKSでは、前身2社の経営統合を背景に事業会社としてのサービスを検討する中、USEN時代の市場である店舗とU-NEXT時代の事業である光回線サービスの提供を組み合わせる方向を探る。
ビジネスとしては、月額課金型。NTT東日本・西日本から光回線の卸売を受け、その回線を自社サービスとして提供していく。サービス提供を取り次ぐだけの手数料ビジネスとは異なり、将来の安定成長を実現するには欠かせないモデルだ。
それだけに、債権の確実な回収が求められる。ところが、店舗市場の未回収リスクの高さは、USEN時代に経験済み。そこをどう乗り越えるか。
しかも、事業開始まで時間の猶予はない。通信分野は成長著しい市場である。乗り遅れることのないスピード感も欠かせない。
USEN NETWORKSでは自ずと、外注化の道を選ぶことになる。
候補者としては、与信から督促まで請求業務の全てを任せられる事業者を探した。「一定の手数料を支払えば提供サービスの月額利用料を確実に受け取れる、そんな事業者を選定の主軸に据えました。お客様は小規模な店舗。与信審査の信頼性も重視しました」と山田氏は説明する。
候補数社をふるいに掛け、導入を決めたのがネットプロテクションズだ。決め手は、サービス水準と手数料金額のバランスにある。
同社が提供するのは、企業間取引の請求業務を丸ごと引き受ける「NP掛け払い」というサービスだ。与信から、請求書発行、代金回収、入金管理、督促まで、業務の全てを請け負う。しかも、未回収リスクは原則としてゼロだ。
評価したサービスには、債権回収の状況報告がある。
「U-NEXT時代に外注していた事業者は債権回収の状況報告が弊社希望と合わず、現場では業務負荷となっておりました。報告を受けた時にはすでに、回収不能に陥っていた例もあったほどです。光回線サービスは月額課金ですから、月単位では把握しておき、適切な対応が必要でした」(山田氏)
与信審査の精度の高さも、サービスとして評価した。
与信審査で求められるのは、厳格さだけではない。未回収リスクが実際には高くない店舗を、見込み客から落とすことになりかねないからだ。「厳格すぎず、柔軟すぎないという、精度の高い審査が求められます」(山田氏)
ネットプロテクションズ
B to B セールスグループ NP掛け払い事業統括責任者
揚田大地 氏
「NP掛け払い」の与信審査は、ほかの掛け払いサービスではふるい落とされるような事業者でも、すくい取ることがあるという。与信審査の通過率は2025年3月現在、99%と極めて高い。その理由を、ネットプロテクションズB to B セールスグループNP掛け払い事業統括責任者の揚田大地氏が説明する。
ネットプロテクションズ
B to B セールスグループ NP掛け払い事業統括責任者
揚田大地 氏
「2011年のサービス提供開始以来、グレーゾーンの事業者でも審査を通して、これらの事業者を含む取引データの蓄積を基に、審査の精度を高めています。一般には与信判断が困難な事業者にも与信可能な独自の信用基盤を築いています」
「NP掛け払い」の導入以降、USEN NETWORKSでは再構築後の事業で市場開拓に専念できたという。「請求業務は全て、外注です。その結果、私たちはマーケティングに全精力を傾けることができました」と山田氏は効果を説く。
USEN NETWORKS
執行役員
大江延之 氏
ただ市場を開拓しても、債権の未回収ばかりが目立つようでは事業は成り立たない。USEN NETWORKS執行役員の大江延之氏はこう強調する。「店舗を軸に事業展開を進めたこと、提供サービスの月額利用料の回収をネットプロテクションズにお任せした決断は間違ってはいなかった。回収は順調以上の成果を残しています。今ではこの事業モデルに確信を持てるようにもなりました」
USEN NETWORKS
執行役員
大江延之 氏
導入から8年目。現場担当者間では、運用上の課題や懸念点を早い段階で共有できる、良好な関係が築かれている。「それが結果的に、未収率を低水準に抑え、重大なトラブルを未然に防ぐ運用につながっている、と実感しています」(大江氏)
USEN NETWORKSにとっては、請求業務を全て外注するとはいえ、現場での判断が求められる場面もある。そこに、ネットプロテクションズとの間で積み上げてきたノウハウが生きる。「強制解約が必要でも明確な基準に従って判断を下しやすい。こうした成果があることも、手数料というコストを掛けてでも請求業務は外注するのが得策、という社内での現在の見方につながっています」と大江氏は分析する。
経営層としては、将来計画を立てやすい点に価値があるという。
請求業務を全て自社でやろうとすると、リスクコストが読みづらい。例えば、未収が発生すれば、督促という業務が必要になる。規模感によっては、多くの人員を充当する必要にも迫られる。状況次第でリスクコストは変動する。
ところが、「NP掛け払い」なら、手数料は定額なので把握可能。「将来計画を立てる中、年間のリスクコストを予算化する必要があります。その時に金額を見通せると、計画を立てやすくて都合がいい」と山田氏は評価する。
「NP掛け払い」は、別事業者にも勧めている。
別事業者とは、USEN NETWORKSから光回線サービスの卸売りを受け、同サービスの提供に新たに乗り出す事業者である。同社では、請求業務の外注先まで紹介することで、事業を進めやすくする狙いだ。「事業開始以来、卸売り先の半数ほどが『NP掛け払い』の導入にも興味をもっていただいています」と大江氏は明かす。
ビジネスに請求業務はつきもの。企業の安定成長にとって、それを誰が担うのが適切か。優れたパートナーはかように存在する。中長期の視点に立てば、自ずと答えは出るはずだ。

株式会社ネットプロテクションズ
本社
東京都千代田区麹町4丁目2-6 住友不動産麹町ファーストビル5階
創業
2000年1月
概要
後払い(BNPL)決済サービスのリーディングカンパニー。個人・法人向けにサービス展開し、購入者/購入企業・加盟店の双方に価値提供している。20年以上にわたって決済事業に取り組み、累計取扱件数は5.8億件を突破している。その過程で、信用リスクを見極めて吸収する力、月間で何百万件にも登る請求業務を高効率で行う力を磨き上げてきた。サービスの提供を通して商取引における資金回収のリスクや手間を大きく削減し、誰もが安心かつスムーズに商取引できる社会の実現を目指している。

株式会社USEN NETWORKS
本社
東京都品川区上大崎三丁目1番1号目黒セントラルスクエア
創業
2017年6月16日
概要
「関わるすべてのお客様に常に必要とされる“満足”をお届けすること」を企業理念とし、USEN&U-NEXT GROUPのコーポレートスローガン「NEXT for U」のもと、通信技術とIoT技術を駆使した店舗・オフィス向けサービスを提供することで、生産性の向上とともにコスト削減を実現し、顧客満足度向上に努める。法人向け光回線サービス「USEN光 plus」、個人向け光回線サービス「USEN光01」をはじめとする、様々な通信サービスの提供を行う。