加速する4つのパラダイムシフトにどう向き合うか 日本を支える中小企業が 生き残るために考えるべきこと

株式会社日本M&Aセンターホールディングス 代表取締役社長 三宅卓氏

日本の中小企業は今、厳しい岐路に立たされている。多くの企業で経営者の高齢化が進んでおり、とりわけ足元では後継者不在や人材不足により黒字廃業も問題になっている。中小企業の現場では何が起きているのか、そして危機を乗り越えるにはどのような方策が求められるのか。

中小企業が直面している
未曽有のパラダイムシフト

日本の中小企業には、これまでも経営者の高齢化や少子化による人材不足といった課題が山積していた。しかしこれらの改善は思うようには進まず、状況はむしろ深刻さを増している。「日本の中小企業は今、大きなパラダイムシフトの危機にさらされています」と警鐘を鳴らすのは、日本M&Aセンターホールディングス代表取締役社長の三宅卓氏だ。4月に著書『未来をひらく経営の選択』を上梓しているが、パラダイムシフトへの対応が待ったなしの状況となっているからだ。

三宅氏は4つのパラダイムシフトとして、①後継者不在と廃業の激増、②生産年齢人口の減少による人材不足、③円安や物価高による利益の激減、④AIへの対応の遅れを挙げる。そのうち後継者不在と人材不足は構造的な課題だ。

「中小企業の後継者不在率は5割を超え、今後10年で100万社が廃業するリスクがあります。25年公表の休廃業件数は約7万件※なので十分あり得る数字。さらに問題なのは、このうち半数は黒字廃業という点です。高い技術力で地域の産業を支えてきた企業の廃業はサプライチェーンの崩壊にもつながりかねません。また中小企業にとって採用も大きな課題ですが、少子化が進む日本では、今後さらなる生産年齢人口の減少が進むと言われています。とりわけ地方では人材が確保できず、事業継続の困難さが増しています」

近年になって中小企業を苦しめているのが、円安や物価高による利益の減少とAIへの対応遅れだ。

「資源を輸入に頼る日本は、為替変動の影響が大きく、世界的なインフレと急激な円安が中小企業を苦しめています。国民所得が伸び悩み、値上がり分を価格転嫁できない中で台頭してきたのがAIです。従来もコンピューターの小型化や高性能化は進んできましたが、AIはそれとは比較にならない劇的な変化をもたらし、驚くべきスピードでビジネスシーンに導入され始めています。AIを使いこなせるか否かは企業の存続を左右しますが、中小企業では自社の課題として捉えられていないケースも見られ、資本力も人材も限られているため導入がままならないという現実もあります」

三宅氏が挙げたこれらのパラダイムシフトは、いずれも一過性のものではなく不可逆的なものばかりだ。中小企業にとっての危機は将来にわたって、経営者だけではなく働く従業員の生活、ひいては社会全体の課題でもあることを認識して、危機感を持つ必要があるだろう。

※帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2025年)」

最適なマッチングの提供と
成約の先にある成功を重視

では、中小企業はこのパラダイムシフトにどう向き合い、乗り越えればいいのか。長年、中小企業の経営課題解決に取り組んできた三宅氏は「中小規模の企業が単独でこの流れに立ち向かうのは難しいです」と語る。

「なぜなら、スケールメリットによる効率化が望めないうえ、少子化によって採用が売り手市場となり、資本力や人材といったリソースの差から大手企業との格差が広がり、生産性の面で不利になりやすいからです。今40〜50代の経営者の間でM&Aが注目されてきているのも、比較的若い世代がパラダイムシフトに気づき、大手の企業グループなどに入って経営の手腕を振るいたいと考え始めているからです」

三宅氏自身も35年間、数百件のM&A成約に関わる中、M&Aの効用を確信している。そこで欠かせないのが、最適なマッチングと成約の先の成功を目指すことだ。

「マッチングについては、売り手企業と買い手企業のいずれも定量・定性両面から徹底的に分析します。全国の地方銀行や会計事務所、大手金融機関などとの日本最大級のネットワークもフルに活用しながら国内外でマッチングを行っています」

成約の先の成功を目指す点については、売り手企業と買い手企業が共に幸せになってほしいとの強い思いがあると三宅氏は言う。

「売り手と買い手が共に成長してこそM&Aは成功となります。そのためにはPMI(M&A後の経営統合)も重視していますし、売り手企業の経営者がリタイアする際は、財産承継プランなど第二の人生設計もお手伝いしています」

同社では成約時に関係者が出席するM&A成約式を開催。経営者の家族らも招待され、サプライズで手紙の朗読や花束の贈呈といった演出もある。

「会社は人生が紡がれる場所です。従業員や家族の生活を支え、夢や希望が育まれる大切な場所だからこそ、M&Aは成功しなければなりません。その第一歩となる機会を用意しています」

写真:M&A成約式
M&A成約式は、売り手企業の経営者のこれまでの歩みを称える場であり、同時に買い手企業の経営者が成長に向けた決意を新たにする節目となる

日本を支える中小企業だから
M&Aで存続と発展を支援

三宅氏は、M&Aによる地方創生を果たすため、新たな取り組みも進めている。

「都市と地方の人材ギャップを解消するため、地方銀行と提携して地域特化型サーチファンド『J-Search』を始動させました。経営者を目指す人材と地域の中小企業をつなぐことが狙いであり、現在は全国5エリアで展開をしていますが、今後はさらに拡充していきます。また、全国の中小企業への上場支援にも注力し、“スター企業”を輩出することで、地域経済の活性化や雇用創出につながる地方創生にも取り組んでいます」

M&Aで中小企業の存続と発展が実現し、地方の多くの中堅・中小企業が100億円企業へと飛躍すれば、地方創生のみならず日本創生にもつながるというのが、三宅氏の描く未来像だ。だからこそ毎年、全国を訪問し、セミナーに登壇してM&Aの必要性を訴えてきた。

「未曽有のパラダイムシフトが起きている中で、中小企業が自社だけで戦うことが難しくなっています。そんな今、M&Aは危機を成長に変える戦略です。高度な技術や地域の文化を支える中小企業だからこそ、優れた企業と手を組むことで次の成長へと歩みを進めてほしいと願っています」

写真:三宅 卓氏

「未来をひらく経営の選択 危機を乗り越え会社と家族を守り抜くM&A戦略」日経BP 日本経済新聞出版

三宅卓「未来をひらく経営の選択 危機を乗り越え会社と家族を守り抜くM&A戦略」
中小企業の経営環境を一変させる4つのパラダイムシフトを踏まえ、経営者が進むべき道を伝える一冊。三宅氏が登壇する「経営みらい設計勉強会」は、2026年4月より全国31会場で順次開催。 『経営みらい設計勉強会』の詳細についてはこちら

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