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AIを「使う」だけでは競争力にならない AI時代に成果を生み続ける
企業の「適応力」とは

AIの導入が急速に進む一方、それを成果や競争力につなげられる企業はまだ限られている。AI活用がコモディティー化する中、企業は何を磨くべきなのか。NTT DATAの西村忠興氏は、そのカギを「適応力」と指摘する。AI時代に企業が備えるべき力と、日本企業が持つ可能性について日経BPの森重和春が聞いた。

2030年の競争力を左右する
企業の「適応力」とは

西村 忠興氏

NTTデータ
常務執行役員 CAIO
西村 忠興氏

――「AIを『使う』だけでは競争力にならない」とのテーマには、どのような問題意識があるのでしょうか?

AI活用では、導入と成果の間にギャップが生まれています。約90%の企業が個人での活用や既存の業務プロセスの自動化までは進んでいるものの、今後2年以内に投資対効果を明確に示せる、きちんとリターンが出せると考えている企業は約20%という統計もあります。

要するに、AIを使ってはいても、経営に資するような効率化や生産性向上、新たな事業価値の創出につなげる道筋をまだ十分に描けていない状況です。一方でAI活用は急速にコモディティー化し、トークンコストや安全性といった新たな課題も出ています。AIを導入していること自体では、いずれ差がつかなくなる。では、これからの時代に企業の競争力を左右するものは何なのか。そうした問題意識を込めています。

――使うこと自体で差がつかないとすれば、何が重要になりますか?

これから企業に求められるのは、その時々の変化を取り込み、成果へ転換し続ける「適応力」だと考えています。

そのために企業が向き合うべきことは、大きく4つあります。「人や組織をどう進化させるか」「自社のデータやノウハウをどうAIに活用するか」「AIをいかに安全に使い続けるか」「その時々でどのツールやモデルを選択するか」です。AIの進化によって、この4つの問いへの答えは変わり続けます。重要なのは、1つの未来を前提に正解を決めることではなく、変化に応じて答えを更新し続けることです。

AI時代の「適応力」

AIの進化に応じて4つの課題への「答え」を更新し続けることが、企業の適応力となる

自ら実践し、その知見を
お客さまの変革へつなげる

――NTT DATAは、その4つの課題にどう取り組んでいますか?

私たちは、AI活用を提案する立場である一方、自身も大規模なAIユーザーです。まず自ら使い、そこで得た知見をお客さまへの提案や支援に還元することを重視しています。

まず「人・組織」では、社員のAI活用度を可視化し、高度AI人材の育成と、社員全体のAI活用レベルの底上げを両輪で進めています。ただ、AIの知識だけでは不十分です。システムやサービスの品質保証など、業務の本質を理解する教育も欠かせません。そのためAI人材教育と本質的な業務教育をセットで進めています。

「自社データ活用」では、暗黙知をAIで利用できる形にする仕組みを作りました。例えば財務審査の処理フローでAIと人間の判断を比較し、両者に差分が出た際に、その背景にある明文化されていない判断基準やノウハウを抽出・形式知化し、再びAIに取り込むループを回しています。

「AIガバナンス」では、AI Firewallを導入し、AIサービスの利用状況を可視化しています。実際にやってみると、想像以上に多様なAIサービスが使われていることが分かりました。こうした利用実態を把握し、リスクに応じた統制につなげています。

「技術・コスト」では、用途に応じて適切なツールやモデルを選択できるガイドを整備するとともに、性能、セキュリティー、コストなどを踏まえてAIを使い分けられるプラットフォームの整備も進めています。

AIの技術は非常に速いスピードで変わります。特定のモデルやツールを一度選んで終わりではなく、その時々で最適なものを選び直せる状態をつくることが大切です。

NTT DATAの取り組み

AI時代の4つの課題に対して具体的な取り組みを進めている

日本企業の「暗黙知」は宝の山
AIという翼で、さらに遠くへ

――実際にAIを使い込んだからこそ分かった勘所は?

1つは「AIの適用領域をどう見極めるか」です。すべてにAIを適用すれば、当然コストがかかります。ルールベースのツールやRPAで十分な領域もあります。何でもAIに置き換えるのではなく、AI、従来のテクノロジー、そして人の判断を、コストパフォーマンスも含めて適材適所で使い分ける必要があります。

もう1つが企業固有の知識やノウハウの重要性です。自社に蓄積された暗黙知をAIが活用できる知識やデータに変え、成果につなげていくことが重要です。製造業をはじめ、日本企業には多くの暗黙知がありますが、私はこれこそ「宝の山」だと捉えています。

以前、あるAIベンチャーのCEOと「AIは人間に翼を与えるか」という話をしました。答えは「Yes。ただし、自力である程度飛べる人に対しては」というもので、非常に腹落ちしました。日本企業はすでに、品質の高いものを作り上げる力を持っています。そこにAIという翼が加われば、さらに遠くまで飛べるのではないでしょうか。

――最後に、AIに向き合う経営者へメッセージをお願いします。

2030年、さらにその先を考えても、「これだけをやっておけばいい」という答えはありません。だからこそ、重要なのは「適応力」です。生き残るのは、強いものでも賢いものでもなく、変化に対応できるものだといわれます。まさに今、そういう時代が来ています。

大切なのは、思考停止しないことです。「このAIを導入すれば終わり」「このやり方が正解」と決めるのではなく、実際に活用しながら、変化に合わせて試行錯誤を繰り返していく。

NTT DATA自身もAIを使いながら変化に適応し続け、そこで得た経験や知見をお客さまに還元していきます。AIの導入自体を目的とするのではなく、お客さまの成果創出や新たな価値の実現に向けて、変革パートナーとして伴走し、日本の社会全体の「適応力」を高めることに貢献したいと考えています。

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