佐藤 敦氏、海浦 隆一氏

最大70%の効率化で
企業競争力向上を加速

NTT DATAが推進する
AI活用によるソフトウェア開発変革

生成AI(人工知能)の進化はソフトウェア開発の世界も大きく変えようとしている。多くの大規模なソフトウェア開発プロジェクトを手がけてきたNTT DATAでは、いち早く生成AIを活用したソフトウェア開発に着手。これまで500件のプロジェクトに適用し、様々な技術を組み合わせて2027年度には開発工程全体で70%の生産性向上を目標に掲げる。AI活用がなぜ必要とされ、現在はどこまで進んでいるのか。情報システムを活用する企業にはどのような影響をもたらすのか。同社でAIを活用したソフトウェア開発をリードする2人のキーパーソンに今後の展開を含めて話を聞いた。

AI活用が「2025年の崖」を乗り越えるハシゴになる

――技術革新統括本部は最先端のソフトウェア開発の技術を研究し、日本と海外の事業会社に展開していく役割を担っているとお聞きしました。AIについてはどのように捉えているのでしょうか。

佐藤 AIについてはDX(デジタルトランスフォーメーション)と同じような文脈で捉えています。単なる先進的なツールの一つと位置付けるのか、経営革新をもたらすものと考えるか。経営層の姿勢によって企業のビジネスに好機をもたらせるか、明暗が分かれてきます。

佐藤 敦氏
株式会社NTTデータグループ
技術革新統括本部 AI技術部長
佐藤 敦

 特に日本企業はコスト改善という基本的な命題に加え、ITエンジニアの絶対的な不足や有識者の高齢化という社会的な課題を抱えており、「2025年の崖」の存在が指摘されてきました。労働集約型からの脱却につながるAI活用はこの崖を乗り越えるハシゴになれる可能性があります。

 これまで多くの日本企業は、システムの老朽化やコードのスパゲッティー化などの技術的な負債の解消を先送りにしてきました。日本企業のシステム予算の7割は既存システムの維持で占められていると言われています。AIで開発効率を上げれば、浮いたリソースを新しいビジネス創出のためのIT投資に振り分けることができます。

 AIはレガシーシステムを刷新し、技術的な負債を解消する強力な武器であり、将来の発展に向けた一筋の光明といえるでしょう。この好機をつかむことができるか否かは、経営層が技術活用の思い切った決断をし、強いコミットメントをもって臨めるかにかかっています。

 「ITはコストセンター」という発想ではなく、限られた人的・技術的リソースを「戦略資産」としてどう生かすかという視点が重要になってきます。NTT DATAではすでにシステム開発にAIを活用し、効率化を進めています。幸い、当グループには長い期間をかけて培ってきた全社レベルの開発標準「TERASOLUNA(テラソルナ)」があります。AI活用にも適用できる基盤であるため、AI活用を前提にこの開発標準を全面的に見直すことで、エンタープライズレベルのシステム開発にAIを適用できるように取り組みを進めてきました。

タスク単位の活用からプロセス全体の自動化へ

――いつごろからどのようにしてAI活用に取り組んできたのでしょうか。

海浦 2023年度の下期から本格的にAI活用を開始しました。開発工程の中で最もAI適用による効果が高いと分析されたプログラムの製造工程を主なターゲットとしてタスクの自動化に取り組みました。

海浦 隆一氏
株式会社NTTデータグループ
技術革新統括本部 AI技術部 部長
海浦 隆一

 2024年度もその取り組みを継続し、活用できるアセットを拡充しながら徐々に具体的なユースケースで実証実験を行ってきました。これまで事業部の案件など累計500以上の開発プロジェクトに適用し、システム開発の効率化を実現しています。

 当初は個別の工程ごとに適用するというタスク単位での活用でしたが、2025年度からは自社開発したAIエージェントを活用し、タスクとタスクをつなぐプロセスの自動化にも取り組んできました。

 目指してきたのは、要求分析から設計、製造、テストに至る一連のプロセスを、AIの自律的な判断によって効率的につないでいく、エージェンティックAI的なアプローチです。成果物の作成については、作成指示後、エージェントが自律的に処理を行います。一方、工程間をつなぐ判断や品質・妥当性の確認については、人間によるチェックを前提としており、完全な自律化ではなく、人とAIの協調によるプロセス設計としています。現在は、こうした人とAIの協調によるプロセス設計の枠組みとしては概ね出来上がっている段階です。

――生産性向上の目標はあるのでしょうか。

海浦 様々な技術を組み合わせ、2027年度に開発工程全体で最大70%の生産性向上を実現するという目標を掲げており、目標達成に向けて順調に進めています。

佐藤 プロジェクトの規模は大小あり、小規模のものであれば全部AIネイティブで開発できるため大きな生産性向上も可能です。ただ、規模により生産性の効果は様々です。

AI技術活用に対するNTT DATAの取り組み全体像「積極的なAI活用の推進」と「AIガバナンスの徹底」の両輪で取り組み、ビジネス拡大を図る
生成AIを活用した開発の将来像 AIエージェント・生成AIを徹底活用した生産性向上

パートナーの選定がAI活用の成果を左右する

――AIを活用したソフトウェア開発ではどのようなところに留意すべきでしょうか。

海浦 2つあります。ひとつはガバナンスとセットで考える必要がある点です。業務に組み込むには倫理・コンプライアンス・社会的リスクでの対応も必要です。もうひとつは、AIが何でも解決できる万能ツールではないという点です。得手不得手を見極めたうえで、従来の開発手法や技術と使い分けたり組み合わせたりすることが求められます。

佐藤 パートナーの選定も重要です。ユーザー企業がAIを活用したシステム開発に取り組む際、自ら最新技術の情報を広く収集して分析、適用するのは困難です。AIの適用領域は広く、進化も早い領域のため、専門知識を持った信頼できるパートナーの支援が不可欠です。

 そのパートナーを選定する際の重要なポイントは、グローバルの最新テクノロジーに常にアクセスでき、グローバルにおける同業のベストプラクティスを活用可能であること。加えて、ビジネス成果へのコミットです。NTT DATAは「提言」「実装」「成果」を謳い、この3要素を通じてお客様にビジネス価値を提供することにこだわっています。

佐藤 敦氏
「パートナーを選定する際の重要なポイントは、提言して終わりでなく、実装してビジネス成果を上げるところまで伴走してくれるかどうかです」(佐藤氏)

――NTT DATAはユーザー企業に対してどのようなアプローチを行っていくのでしょうか。

海浦 AI活用アセットを体系化し、お客様の開発プロジェクトに適用することで、開発期間の短縮と品質向上を両立し、ビジネス価値の早期創出につなげていきます。

 また、AI活用のアセットの成果物をそのままお客様への納品に活用できるようになると、さらに効果が得られると考えます。設計書や他ドキュメントの納品が求められる場合、納品物の形態が変化することをお客様にもご理解いただけるように、アセットの改善を重ねていきます。

開発期間を短縮して時間的価値を提供

――今後はどのようにしてAIを活用したソフトウェア開発を広げていくのでしょうか。

佐藤 長年にわたって蓄積してきた基幹システムの開発工程の体系化された知見があることが私たちの強みです。要件のすり合わせ、後続工程を意識した設計など、見落としてはならない観点が多くあります。それらのナレッジをエージェントに取り込んでいくことにより、エンタープライズ品質にスケールできます。

 AIを活用するために必要となる要素を整備するとともに、数万人いるパートナー企業に向けたトレーニング制度も充実させ、エコシステム全体の力を向上させていきます。並行して新しいプロセスに対応した開発手法の準備も進めているところです。

 プログラミングの自動化はあくまでも開発工程の一部であり、AIの適用範囲はもっと幅広いものです。単純なコスト削減ではなく、開発期間の短縮によるサービスや製品の早期市場投入といったビジネス価値の創出につなげていきます。

海浦 隆一氏
「AIネイティブな開発手法を小規模なソフトウェアから大規模で高品質なソフトウェアまで幅広く適用し、新たな付加価値の創出を目指します」(海浦氏)

海浦 既存の開発手法とAIネイティブな開発手法は用途や目的が異なります。それぞれの強みを生かしながら両軸で整理・推進していくことが重要だと考えています。既存の開発手法は、人間が開発の中心であり人間に最適化されていました。AIネイティブな開発手法はAIを前提に開発プロセスそのものを見直し、AIを価値創出の中核に据えるアプローチです。既存の開発手法の中での生成AI活用範囲を着実に広げながら、AIネイティブ型の開発を小規模なソフトウェアから段階的に適用し、エンタープライズレベルの大規模・高品質なシステムへと展開していきます。従来手法とは異なるAIネイティブな開発アプローチに挑戦することで、新たな付加価値の創出につなげていきます。

佐藤 生成AIを活用することで有識者のノウハウを形式知化できると同時に、既存のソースコードから設計書などの開発ドキュメントを生成するリバースエンジニアリングも実行できます。それを武器に新たな業種、業界に対象を広げていくこともできると考えています。

 AIという新しい武器を活用し、これまでおつき合いのなかったユーザー企業にも新しいソフトウェア開発手法により、ビジネス価値を提供していきます。

株式会社NTTデータグループ

https://www.nttdata.com/global/ja/

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