事務用品の商社として1890(明治23)年に産声を上げ、136年の歴史を歩んできたイトーキ。戦後、スチールデスクに代表されるオフィス家具の製造・販売を開始し、これが事業の柱となった。
そして今、同社はオフィス家具の枠を超え、事業領域を大きく広げている。
「現在進行中の中期経営計画(2024年12月期~2026年12月期)より、当社の事業モデルを3つのフェーズに分けています。1つ目の『Office1.0』は、オフィス家具をはじめとする創業以来の商品製造・販売。『Office2.0』は、オフィスの空間設計まで含めた空間ソリューションの提供。そして『Office3.0』は、AIやIoTなどを使ってオフィスの利用状況を分析し、より良い“働き方”を提案するオフィスDXの提供です」と語るのは、イトーキの執行役員でDX本部長の竹内尚志氏である。
時代とともに、オフィスを取り巻く課題やニーズは目まぐるしく変わる。最近の一例で言えば、コロナ禍以降、在宅勤務を選びがちになった社員に「出社したい」と思ってもらえるようなオフィスづくりや社員同士のコミュニケーション向上の相談が増えているという。
「そうした刻々と変化するオフィスへのニーズを俊敏に捉え、事業を進化させていくためには、社内で動いている基幹系システムの抜本的な変革が不可欠だと考えました。そこで、2010年代の後半から刷新プロジェクトが動き出したのです」と竹内氏は説明する。
イトーキの基幹系システムは稼働から約20年が経過し、老朽化とブラックボックス化が進んでいた。社内や協力会社の運用面での負担やエンジニア不足に加え、データセンターの保守コストの増加、セキュリティ面での不安などの課題も抱えていた。結果として、新事業に必要なデータ連携や分析といった抜本的な変化が困難になり、システムがビジネス成長の足かせとなっていたことが、変革を急務とした理由である。
「長年、保守を外部パートナーに依頼し続けた結果、社内に技術ノウハウが蓄積されず、社員が育つ機会も失われていました。抜本的な刷新を主導するスキルも知見も不足しており、時代の変化に合わせて機能を変えたくても、変えられない状態のため刷新することにしたのです。基幹システムの選定にあたっては、業務への適合率だけでなく、拡張性やセキュリティ、海外への事業展開も考えて、導入後にも新機能がアップデートされるクラウドベースの基幹系パッケージとしました」(竹内氏)
こうして2018年、イトーキは複数候補の中から、基幹系システムを選定。刷新プロジェクトが動き出した。ところが、約3年が経過し、かなり開発が進んだところで、プロジェクトは中止を余儀なくされてしまう。原因は、せっかくクラウドベースのパッケージシステムに入れ替えようとしたのに、そのメリットがほとんど生かせない状態になってしまったことだ。
「刷新にあたって大目標としたのは、Fit to Standardの考えを取り入れ、できるだけ新たに入れるシステムに業務を合わせることでした。ところが、従来のシステムで利用できた機能は残してほしいという要望があまりにも多く、パッケージの標準機能の利用を断念し、多くのアドオン開発に切り替えていくことになりました。その結果、ほとんどスクラッチと同じ仕上がりになってしまったのです」と竹内氏は振り返る。
アドオンがあまりにも多いと、クラウドベースのシステムがアップデートされるたびに、それに合わせた修正や変更を行わなければならないので、将来にわたって膨大な費用と工数が発生する。かと言って、進めなければニーズの変化に対応した最新機能が利用できなくなり、時代にどんどん取り残されるというジレンマを抱えかねない状況に追い込まれてしまったのだ。
「多額の投資を行ったものの、これでは、時代の変化に合わせて仕事の進め方を変えていくという当初の理想を実現できないと考え、ERPパッケージを変更して、プロジェクトを仕切り直すことにしました」と、竹内氏は苦渋の決断であったことを明かした。
大きな失敗を経験したが、ここで基幹系システムの刷新プロジェクトを止めるわけにはいかない。イトーキが次に選んだのがOracle Fusion Cloud Applicationsである。前プロジェクトで何が問題だったのかを徹底研究し、それらを解決できる特徴を最も多く備えていると評価して、2021年に最終選定した。
特徴の1つは、データオリエンテッドなアーキテクチャにより、データドリブン経営に貢献できる仕組みである点だ。「『標準化、簡素化、自動化』を大目標に設定したものの、イトーキの事業は『Office1.0』から『Office 3.0』まで多岐にわたり、お客様も法人と個人に分かれているなど、どうしてもシステムの標準機能だけではカバーし切れない業務もあります。そんな、やむを得ずアドオンしなければならない機能を個別のアプリケーションに追加しても、OCIを活用しシステム全体で一元化されたデータ活用ができる点を評価しました」と竹内氏は明かす。