通信サービスのみならず、DX、金融、エネルギーなど、多様な事業を展開するKDDI。
2024年4月にコンビニエンスストア大手、ローソンを持分法適用会社化し、25年10月からAIとロボットを活用した店舗DXの実証実験を開始するなど、通信技術による「つなぐチカラ」と最先端テクノロジーを融合させて、生活や産業に多彩なベネフィットをもたらす価値の創出に挑み続けている。
競合する通信大手との熾烈な戦いを勝ち抜き、ユーザーから選ばれ続ける存在となるため、強みである5G通信の品質を磨き、データドリブン、生成AIの技術を掛け合わせたコア事業を形成。このコア事業を中核とし、成長をけん引する事業領域「Orbit1(DX/金融/エネルギー)」と、新たな成長に挑戦する事業領域「Orbit2(モビリティ/宇宙/ヘルスケア/Web3・メタバース/スポーツ・エンタメ)」に取り組む事業戦略「新サテライトグロース戦略」を24年5月に策定した。
「新サテライトグロース戦略」を支える屋台骨として、各事業の持続的成長を支え、競争力の源泉となる新たな価値創造の担い手となっているのがKDDIの情報システム本部だ。
「我々が開発・運用する事業用システムの品質は、KDDIがお客様に提供するサービスの品質に直結します。フロント系では、全国のauショップがスマートフォンの加入手続きなどを行うためのシステム。基幹系では、お客様の契約管理や料金計算のシステムなど、あらゆるシステムがKDDIの価値創造の原点となっているのです」
そう語るのは、KDDI コア技術統括本部 情報システム本部長 シニアディレクターの増田克哉氏である。
さらに、激しい社会変化へ対応するため、KDDIの情報システム本部が経営層から期待されている役割は、システムの開発・維持管理や運用改善にとどまらず「事業の成長と新しい価値創造を支える」という役割を果たすことだった。
テクノロジーの急速な進歩とともに、デジタルデータやAIをいかに活用するかということは、あらゆる企業の重要テーマとなっているが、5G通信とともに、データドリブン、生成AIでコア事業を形成するKDDIにとって、その重要性の高さは言うまでもない。
「システムにデジタルデータやAIを適用するのみならず、それらを使った新たなビジネスの創出や、マネタイズ化にも貢献しています」と増田氏は説明する。
しかし、経営層から期待されている、顧客満足度を高めながら、各事業の持続的な成長を支え、「新たな事業創造の担い手」となるには、クリアすべき多くの課題があった。
KDDIは中期経営戦略として「サステナビリティ経営」を掲げ、その下で「新サテライトグロース戦略」により通信の枠を超えた多角的な事業領域の拡大に挑んでいる。さらに、持続可能な社会の実現に向けて、6つの重要課題(マテリアリティ)にも継続的に取り組んでいる。その中でも、事業を支える人財の力が不可欠であることから、情報システム本部が現在、取り組んでいるのは、「多様なプロ人財の活躍とエンゲージメント向上」だ。
かつてのKDDIの情報システム部門は、事業部門と外部ベンダーとの間に立ち、要件の伝達や進捗管理を行う「調整役」としての側面が色濃かった。システム開発の多くを外部ベンダーに依存していたため、開発そのものの手触り感が薄く、組織としてのエンゲージメントや技術力の蓄積に課題を抱えていたのである。
「私たちが目指す『プロ人財』とは、単に要件通りにシステムを開発・管理する存在ではありません。最新のテクノロジーを自分たちのものにし、経営や事業部門に対して能動的に解決策を提案し、自らの手で開発・実装・運用までを完遂できる人材です。つまり、ビジネスの裏方ではなく、サービス創出の『主役』となることを目指しています」と増田氏は力を込める。
この変革の最大のトリガーとなったのが、クラウドの急速な進化とAIの台頭だ。KDDIでは23年より、老朽化した約160の基幹系システム等を刷新する大規模プロジェクトを推進している。
「クラウドシフトは、これまでブラックボックス化していたシステムを『内製化』するための絶好の機会です。AIを開発プロセスに組み込み、自分たちの手でスピーディにシステムを作り上げる。この経験を通じて、市場の変化に即応できる柔軟な組織へと生まれ変わり、情報システム本部のメンバー一人ひとりがビジネスに貢献する喜びを感じられる組織へと進化させていきます」(増田氏)