- 新生・パナソニック デジタルがサービス提供開始 - 分析だけでは終わらない持続的なデータドリブン経営を

パナソニック グループのIT事業を担う3社が、2026年4月に「パナソニック デジタル株式会社」として統合された。製造DXからICT基盤構築、映像ソリューションまで、異なる強みを持つ3社の統合は、顧客にどのような価値をもたらすのか。新たにリリースした、グループ内の実践知を凝縮したデータ活用プラットフォーム「DataVein(データヴェイン)」に込めた思いとともに、執行役員 CTOの片岡栄司氏に訊いた。

分散する強みを束ね
顧客課題に総合力で応える

今回統合された3社はそれぞれ、グループ内で培った知見を外部顧客への提供にも活かしてきた事業体だ。パナソニック インフォメーションシステムズはITデリバリーを中核に、ERP・CRM・データ分析・AI活用などを社内外へ展開。パナソニック ソリューションテクノロジーは製造DXやオフィス・教育・知財向けSaaSを手がけ、パナソニック ネットソリューションズは映像監視システムやワークフロー管理などで外部市場に実績を持つ。

統合の背景には、パナソニック グループ全体の経営改革がある。グループCEOの楠見 雄規氏が主導するこの改革は事業ポートフォリオの見直しと収益性の向上を2本柱とし、IT部門にも役割の再定義が求められた。グループのIT組織でデータ分析ソリューションの開発・外販を長年牽引し、現在は執行役員としてデータアナリティクス領域を統括する片岡氏は、「IT部門のコスト効率化と、ソリューション事業の外販を通じた直接的な収益貢献、この2つが、グループITの課題として課せられています」と指摘する。

3社が1つになることで、分散していた機能がワンストップで顧客に届けられるようになる。製造DXのノウハウ、データ活用の強み、各種デジタルソリューションによる品質向上――。「それぞれの専門性を集約し、そこから最適なものを選択してお届けできることは、お客様にとって大きなベネフィットになります」と片岡氏は語る。

現場で生まれ経営の後押しで
磨かれた「DataVein」

3社の統合を機に、パナソニック デジタルがデータ活用支援の中核ブランドとして打ち出した新たなサービス・プラットフォームが「DataVein」だ。長年グループ内外で培ってきた知見を体系化したもので、新会社の看板サービスの一つと位置付けられている。その思想を読み解く鍵が、片岡氏自身のキャリアにある。2013年、同氏がデータ分析組織を立ち上げた当時、チームはわずか5人。ITがいかにビジネス価値の創出に貢献できるかを問い続けながら、ボトムアップで地道に実績を積んできた。

「DXの取り組みはトップダウンとボトムアップの両方が噛み合ったとき、初めて成果に近づけます」と片岡氏は言い切る。トップダウンの推進力として機能してきたのが、パナソニック グループが全社規模で展開する企業変革プロジェクト「PX(Panasonic Transformation)」だ。経営層が主導し、ITの変革にとどまらず業務プロセスや組織文化の変革まで一体で推進するこの取り組みが、DataVeinの実践の場であり、後ろ盾となってきた。

「企業によって文化も生い立ちも違います。それぞれの実態を理解した上で、経営と現場の両側から同時にアプローチできることが、私たちの最大の強みです」。10年以上にわたる実践から生まれたその経験を、外部顧客に届ける器がDataVeinだ。

データドリブンな意思決定が継続的に行える組織の実現へ

仕組みを作るだけではなく
成果が出るまで伴走する

DataVeinという名称は、事業現場に眠るデータを鉱脈(Vein)に見立てたことに由来する。未発掘の可能性を掘り起こしビジネス価値へと変えていくという思想だ。

構成は3つの柱からなる。「業務プロセス革新」ではツール先行を避け、プロセスマイニングやビジネスアナリシスによる現状分析から課題整理、ロードマップ策定までを支援する。「意思決定インテリジェンス」では統計解析・機械学習・生成AIなどを組み合わせ、意思決定の仕組みを構築。「分析活用・自走化支援」では研修やコミュニティ形成を通じてデータ活用の文化を根付かせるまで、一気通貫で伴走する。実際、パナソニック グループ社内のデータ分析コミュニティには8,000名以上が参加し、アクティブ率80%以上を維持しているという。

「仕組みを作って提供するだけではありません。その結果どれだけの顧客課題が解決されたのか、どれだけの価値を実感していただけたのか、徹底的に確認させていただきます」と片岡氏は力を込める。

一から構築するよりも
コストと時間を大幅に節約

片岡氏
パナソニック デジタル株式会社
執行役員 CTO
AI・データアナリティクス
事業開発・R&D担当
片岡栄司

DataVeinを支えるのが、グループ内70部門以上の実績から生まれた30のテンプレート群だ。製造・SCM領域で200事例、設計・開発分野で100事例の実績を基に、マーケティングから経営管理まで幅広い業務領域のベストプラクティスが揃う。「工場のKPI可視化や異常検知など、製造業の現場に共通する課題は多いのです。テンプレートを活用しカスタマイズすることで、一から構築するよりコストも時間も大幅に節約できます」と片岡氏は説明する。

なお、個別機能ごとに用いるツールは主流の2~3種類に絞り、包括的かつリーズナブルに提供する考えだ。共通のツールを組織全体で使うことが、現場への浸透をさらに後押しする。

膨大な経験値があるからこそ
顧客に価値を提供できる

「データやAIを活用したい、でも企画段階から先に進めない」――そうした悩みを抱く経営者は多い。IT投資の決断はしたものの、現場での定着と成果創出が追いつかないという不安もある。

「私たちはパナソニック グループという実際のフィールドで、何度も試して、失敗して、改善してきました。だからこそ、お客様と同じ目線で課題に向き合えます」と片岡氏は述べる。

現場に根差した伴走、それが、DataVeinを通じてパナソニック デジタルが提供する本質的な価値だ。グループ内で磨いてきたノウハウを体系化し、外の世界へ広く届け、顧客のDXとビジネス成長に貢献する。新生パナソニック デジタルが動き出した。

片岡氏