“与信判断の即時化”から
人間の与信判断のサポートツールへ発想を転換
──FFGは、九州を地盤とした地域金融グループとして、地域の経済発展に寄与するとともに、近年ではDXを起点とした既存ビジネスの変革に取り組んでいらっしゃいます。御社におけるDXの位置づけと課題について教えてください。

執行役員 リスク統括部長
株式会社福岡銀行
執行役員 融資統括部長
髙着 敦史 氏

リスク統括部 デジタル与信企画チーム
DX推進本部 兼務
株式会社福岡銀行
融資統括部 デジタル与信企画チーム
部長代理
吉野 拓 氏
髙着 FFGでは、2016年の金融・非金融データの利活用などを推進するiBankマーケティングの設立を契機に、金融業界でも先駆けてDXの取り組みを推進してきました。目下、推進する「第8次中期経営計画(以下・中計)」では、とくにAIを活用した既存ビジネスの変革を基本方針の一つに掲げています。
とくに、銀行にとって基幹業務の一つである融資業務は、デジタル化が難しい領域とされてきたため、稟議書作成や準備などのデスクワークに法人担当者の融資業務時間の約6割が費やされている非効率な状況が課題となっていました。
そこで、FFGでは、DX推進のキーワードである「デジタル×ヒューマン」に基づき、事務作業を軽減し、中計のテーマにも掲げる「お客さまとの接点高度化(営業の質・量の引き上げ)」の徹底追求を実現するべく、長年、属人的なノウハウ(暗黙知)に依存してきた融資領域で、デジタルを活用した効率化を目指すこととなりました。
──具体的なアプローチについて教えてください。
吉野 22年4月ごろから初期のアプローチとして、与信判断そのものを即時化する機械学習モデルの開発を考案し、同年10月ごろより開発をスタートさせました。過去の融資データや財務情報を基に、AIが与信可否をスコアリングするというもので、まさに“人に代わって判断するAI”を目指した挑戦でした。
しかし、与信判断という極めてセンシティブな領域においては、モデルの精度など求められる要求レベルが非常に高く、クリアには大きな苦労を要しました。
──PwCコンサルティングでは、FFGのDXなどを支援する中で、当初の与信判断の即時化モデルの開発における難しさをどう捉えていましたか。

執行役員 パートナー
テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部
三善 心平 氏
三善 大きく2つが挙げられます。1つ目は、吉野さんが指摘された与信判断領域ならではの高い品質基準の担保です。AIの導入に際しては、人による審査で否決すべき案件を可決するような“間違い”は絶対にあってはなりません。そのためには、数多くのサンプルを用い、過去の稟議データを用いた統計的な精度や予測誤差について、検証を繰り返し実施する必要があります。
しかし、過去の長期的な稟議データを基にモデルを構築しようとすると、コロナ禍や為替変動など外部環境の大きな変化がノイズとなり、AIの判断材料となる共通項を見つけ出すことが難しく、モデルの精度を高める上で非常に難しい論点となりました。
時間とコストの観点から、AIの適用対象を限定せざるを得ず、結果として効率化の効果も限定的になるという構造上のジレンマにも直面しました。
2つ目は説明責任の難しさです。アウトプットの品質と説明性を確保するため、AIモデルのアルゴリズムは慎重に選定し、判断プロセスと根拠について一定の出力はできるものの、現場で審査に携わる方々の納得感を得られる水準での説明責任については、依然、大きな課題となりました。
吉野 そのような状況の中、23年ごろから生成AIの実装・活用が本格的に世界に浸透したことが転機となりました。
AIが得意とする情報整理・構造化のプロセスに着目し、与信判断そのものをAIに任せるのではなく、FFGが持つ融資に関する知見を形式知化し、担当者が判断に至る前の案件の組み立てや審査資料作成を支援する方向へ発想を転換しました。
FFGは、過去の不良債権処理やその後の事業再生で培った目利き力(審査力)に強みがあると自負しています。生成AIの登場により、そういった“暗黙知”を可視化し活用できるチャンスと捉え、人の判断をサポートするために生成AIの活用を目指すアプローチでプロジェクトを推進することにしました。