DE&I対談/SCREEN ホールディングス×PwCコンサルティングDE&I対談/SCREEN ホールディングス×PwCコンサルティング

多様性を尊重し、一人ひとりと向き合う 新しい文化・組織づくりの変革がスタート

多様性を尊重し、一人ひとりと向き合う 新しい文化・組織づくりの変革がスタート
  • PwCコンサルティング合同会社
    シニアマネージャー
    吉田 亜希子
  • PwCコンサルティング合同会社
    執行役員
    ビジネスマネジメントトランスフォーメーション事業部
    パートナー
    坪井 淳
  • 株式会社SCREENホールディングス
    人財戦略本部
    人事室 室長
    西田 晴美
  • 株式会社SCREENホールディングス
    人財戦略本部
    人事室 人材・組織開発課 課長
    三谷 祐子
  • 株式会社SCREENホールディングス
    人財戦略本部
    人事室 人材・組織開発課
    人材開発チーム マネジャー
    岩坂 潤
事業成長が続く中で、組織のパフォーマンスをどう最大化するか――。多くの日本企業が直面するこの問いに、SCREENホールディングスはDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の観点から向き合っている。同社が課題視したのは、制度や施策の有無ではなく、それらが「実際に機能しているのか」という点だ。クロスメンタリングやサーベイ、HRデータ分析を通じて浮かび上がったのは、女性活躍という枠を超えた、組織構造そのものの課題だった。DE&Iを経営戦略と連動させ、人と組織の変革につなげるにはどうしたらよいのか。SCREENホールディングスとその支援を行っているPwCコンサルティングの挑戦について話を聞いた。

クロスメンタリングで得た
"気づき"と"驚き"

――半導体製造装置市場を取り巻く事業環境は、この数年で大きく変化しています。SCREENホールディングスの人財戦略や組織運営について、その方向性や課題をお聞かせください。

三谷氏 近年は理系女子の入社希望が増えており、新卒採用者に占める女性の割合は目標として掲げている20%を、ここ数年ほぼ達成しています。一方で、仕事に対する考え方や価値観、働き方が多様化する中で、5年後、10年後も選ばれる企業であり続けるためには、今から何に取り組むべきかを考える必要がありました。将来を見据えたとき、DE&Iが自然に根付いたカルチャーへと変えていくことが欠かせないのではないか――。そうした問題意識を持つようになりました。

西田氏 政府の方針でもある女性活躍や男女共同参画は、当社としても長年取り組んできたテーマです。新卒採用者に占める女性の割合は着実に増えてきましたが、女性管理職比率は約5%と、日本企業平均と比べるとまだ十分とはいえません。そこで、組織文化の変革に向けた第一歩として、まずは女性活躍の促進に本格的に取り組むことにしました。
株式会社SCREENホールディングス 人財戦略本部 人事室 室長 西田 晴美氏
株式会社SCREENホールディングス
人財戦略本部
人事室 室長
西田 晴美
人財戦略の企画から実行までを統括し、人材の能力発揮と組織成果の最大化を目指している。採用・育成・配置・評価の各施策を一体的に推進するとともに、女性や障がい者を含む多様な人材の活躍促進にも取り組む
坪井氏 最近では、DE&Iをさらに発展させた概念として「DEIB(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン&ビロンギング)」が注目されています。多様性を尊重するだけでなく、個々の状況に応じた公平な機会を提供し、組織活動に巻き込むことで、最終的に全社員が「自分は組織に必要な一員になれている」と心から感じられる状態を作るという考え方です。男女を問わず育児や家事に関わる人が増える中、ダイバーシティの経営的効果を本質的に高めるためには、女性活躍に限らず広くすべての社員に対してDEIBの考え方を浸透させることが重要です。

西田氏 当社でももちろんこれを意識しており、2019年ごろからセルフマネジメント研修や相互理解を促す研修など、様々な施策を実施してきました。ただ、正直なところ、社員一人ひとりの意識や行動が大きく変わってきているという実感を持てない状況が続いていたのも事実です。

吉田氏 多くの企業にご相談いただく中で、「マクロ的な施策」と「現場(ミクロ)の実態」のギャップに悩む企業は少なくありません。マクロ的な施策を各部門に落とし込んだときに、現場の特性や個々の社員の状況の違いにより、運用がうまくいかず狙った効果が得られないというケースをよく耳にします。マクロでは施策の目的や組織全体にとってのベネフィットを正しく訴求しつつ、ミクロの視点では、部門固有の状況や一人ひとりの状況の違いに柔軟に寄り添う運用やコミュニケーションが必要となります。

三谷氏 私たちもそこに気づいて、"個"にフォーカスしてクロスメンタリングを実施することにしたのです。同様の課題感を持つ複数の企業と2025年から取り組みを開始しています。
株式会社SCREENホールディングス 人財戦略本部 人事室 人材・組織開発課 課長 三谷 祐子氏
株式会社SCREENホールディングス
人財戦略本部
人事室 人材・組織開発課 課長
三谷 祐子
人財育成と、個々の力を引き出す組織の基盤づくりを担う。経営と現場双方の声を踏まえて、本領域における戦略・施策の策定から実行までを一貫して推進している
※クロスメンタリング:メンター(支援者、助言者)とメンティ(支援・助言を受ける立場)を異なる企業同士で組み合わせて行う、キャリア形成支援のための協働プログラム。社外人財がメンターになることで、企業という組織を離れて、自分の悩みや考えと向き合い、本音で議論しやすくなる


――クロスメンタリングを実施して、どのような"気づき"を得られたのでしょうか。

三谷氏 メンティとして参加した女性管理職候補からは「ファーストペンギン(リスクを恐れず、最初に飛び込む人)になるイメージを持てない」という声が多く寄せられました。

 また、女性管理職登用に対する現場の受け止め方にも違いがあることが分かりました。理解を示す部門がある一方で、「なぜ女性だけを優遇するのか」と疑問を呈する声もあったのです。

岩坂氏 「なぜ女性だけ管理職登用を後押しするのか」という意見は、実は当事者である女性からも上がっていました。一方で、男性社員から「自分もクロスメンタリングに参加したい」という声が出てきたことも印象的でした。DE&Iについて考える機会を求めているのは、決して女性だけではないということに気づかされました。
株式会社SCREENホールディングス 人財戦略本部 人事室 人材・組織開発課 人材開発チーム マネジャー 岩坂 潤氏
株式会社SCREENホールディングス
人財戦略本部
人事室 人材・組織開発課
人材開発チーム マネジャー
岩坂 潤
人財の教育・育成を担当。多様な人材の成長を支援し、次世代経営人材の育成や階層別研修、ダイバーシティ関連施策の企画・推進を担当している
西田氏 こうした気づきを通じて、目指すべき方向性が徐々に明確になってきました。なぜDE&Iに取り組むのか。それは、多様な人財や価値観を受け入れ、公平・公正な環境の中で働きやすさや働きがいを高めることが、結果として組織を強くし、企業価値の向上につながると考えているからです。
 女性活躍はあくまでDE&I施策の1つに過ぎません。"点"ではなく、DE&Iという共通認識を組織全体で持つことが大前提だと実感しました。

坪井氏 DE&Iに限らず、様々な人事の課題は、実は互いに構造的につながっているケースがほとんどです。"点"で施策を打っても、それが真因の解決につながらなければ"モグラ叩き"のように別の課題が顔を出す。これは多くの企業が直面する共通の悩みです。
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 ビジネスマネジメントトランスフォーメーション事業部 パートナー 坪井 淳氏
PwCコンサルティング合同会社
執行役員
ビジネスマネジメントトランスフォーメーション事業部
パートナー
坪井 淳
多様な業界の組織・人事領域のコンサルティングに従事。経営・事業戦略起点の人事戦略策定、採用・育成・組織づくりに向けた施策の策定・実行を支援する
吉田氏 企業としてDE&Iに取り組んでいても、「なぜそれをやるのか」と問われたときに、明確な答えを持てていないケースは少なくありません。私たちはこれまでの数々の支援を通じて、DE&I推進における重要ポイントが2つあると感じていました。自社の文脈で「Why DE&I?」を明確にすること、そして「データに基づいて戦略のストーリーを語る」ということです。今回の取り組みを通じて、SCREENホールディングスがこの2つのポイントに正面から取り組もうとしている点に共感し、私たちもぜひその一助となりたいとの思いで支援させていただきました。

共通認識づくりのパートナーに
PwCコンサルティングを選定

――DE&Iの推進に向け、PwCコンサルティングをパートナーとして選ばれた決め手は、どのような点だったのでしょうか。

三谷氏 女性活躍の観点でのサーベイや分析だけでなく、HRデータも含めて、総合的に分析し、全体像を整理するご提案をいただけたことです。

西田氏 加えて、私たちはDE&Iを一部門の取り組みではなく、全社的な共通認識として浸透させたいと考えていました。そのためには、当社の事業環境や企業文化を理解した上で、「どう進めるべきか」まで一緒に考え、伴走してくれるパートナーが必要だったのです。PwCコンサルティングの提案は、まさにそこまで見据えた内容でした。

岩坂氏 PwCコンサルティングは日本の製造業を幅広く支援してきた実績があり、当グループの企業文化についても深く理解してくれていました。サーベイを実施・分析するだけでなく、そこからどのように施策につなげるのか。その際に重要となる、経営へのアプローチと現場へのアプローチの両方に知見がある点も、選定の決め手になりました。

――PwCコンサルティングでは企業活動におけるDE&Iをどのように位置づけていますか。

吉田氏 PwCコンサルティングでは、DE&IやDEIBを単なる人事施策ではなく、組織や人財戦略そのものを変えていく大きな変革だと捉えています。重要なのは、表面的な課題への対応ではなく、その背景にある構造的な要因を捉えた上で、どのような状態を目指すのかという「世界観」を描くことです。
PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー 吉田 亜希子氏
PwCコンサルティング合同会社
シニアマネージャー
吉田 亜希子
DEIB(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン&ビロンギング)関連ソリューションのリード担当。ダイバーシティの現状分析、戦略およびロードマップの策定と実装、意識・行動変容支援のワークショップなどを幅広く支援する
坪井氏 PwCコンサルティングでは、DEIBに取り組む意義を大きく4つの観点から整理しています。

 1つ目は「環境への適応力の向上」です。日本企業は同質性を強みに成長してきましたが、環境変化が激しい時代においては、同質性の高さゆえに環境の変化を見落とす可能性があります。

 2つ目は「イノベーションの促進」です。同質性の高い組織では、改善はできても新たな価値を生み出すには限界があります。一方、多様な視点や考えを持つ組織では、それらがぶつかることでイノベーションが生じます。多様性に富んだ組織では、意思決定に時間を要するなどのコストも生じますが、これは現代企業が成長する上での必要なコストといってよいでしょう。

 3つ目は「組織の健全性」です。評価や登用においてアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を排除し、心理的安全性を担保することで、組織としての健全性が高まります。

 そして4つ目が「人財の確保と定着」です。多様性を受け入れることが組織の働きやすさや働きがいにつながり、人が集まり長く活躍できる組織の実現につながります。特にグローバルに事業を展開する企業にとっては、DEIBは必要不可欠といえるでしょう。

サーベイの結果を分析し、
構造的課題に示唆

――PwCコンサルティングは具体的にどのような支援を行ったのでしょうか。

坪井氏 まずはDE&Iに関するサーベイを実施し、その結果を多角的に分析しました。あわせて、実現を阻んでいる要因がどこにあるのかを可視化し、経営層や社員の意識変革を促す組織構成や人事制度などのハード面の施策、および社員の意識や行動の変化を促すソフト面の施策、の双方を含めた打ち手の全体像を整理しました。

吉田氏 設問づくりでは、「何を、どのように聞けば本音が見えてくるのか」を強く意識しました。一般的な質問を当てはめるのではなく、SCREENホールディングスの事業環境やこれまでの取り組みの文脈を踏まえた設計を心掛けています。

 それらの情報があったからこそ、分析の精度を高めることができました。実際にサーベイ結果を見ていくと、いくつか特徴的な傾向が浮かび上がってきました。

 一般的には、昇格や育成機会に性差が表れることが多いですが、今回の調査でも、上長側の部下に対する推薦意欲や管理職への期待の面で男性>女性の差があり、本人の挑戦意欲でも男性>女性の性差がありました。ただし、その性差以上に、育児・介護ケア責任の有無による影響が大きいことが分かりました。

 これを読み解くと、上司側としては「これ以上負担を増やしてよいのか」という過度な配慮や「(育児・介護の負担がある人は)管理職としての責任を果たせないだろう」という思い込みにより、本人の成長機会を抑制している可能性が想定されます。一方本人側としては、自身の状況を踏まえたキャリアプランと成長機会について、上司とのコミュニケーションがしっかりできていないために、「自分には無理」と思い込み、しり込みしている可能性が想定されます。

西田氏 サーベイ結果からは、私たちが発信してきたDE&Iの本質的な考え方が、十分に伝わっていなかったことも明らかになりました。経営陣は女性活躍やDE&Iに前向きですが、社員に「DE&Iとは何か」「なぜ必要なのか」と問うと、自分の言葉で説明できる人は全体の3割程度にとどまっていました。

岩坂氏 働きやすさや働きがいについては、以前実施したエンゲージメントサーベイと似た傾向が見られました。DE&Iはそれらと構造的につながっており、帰属意識にも影響している。「こうすることで働きやすくなり、働きがいも高まる」という一人ひとりの活躍の文脈で説明していく必要があると感じました。

坪井氏 組織が抱える課題には、個人の工夫で解決できるものと、構造的に取り組む必要があるものがあります。一人ひとりの声に耳を傾けつつ、そこにデータを掛け合わせて整理することで、どこを個人に委ね、どこを組織として変えるべきかが見えてきます。
 すべてを一度に解決することはできませんから、優先順位を付けながら段階的に進めていくことが重要です。

経営からの発信で
意識・行動変容につなげる

――今回得られた示唆を基に、今後どのような取り組みを進めていく予定でしょうか。

西田氏 今回のサーベイ結果を分析・考察したレポートが、今後の取り組みの出発点になります。まずはこの内容を経営陣に共有し、DE&Iを全社的な共通認識として浸透させるため、優先順位を明確にしていく考えです。

坪井氏 その際に重要になるのが、経営トップが自身の言葉で「なぜDEIBが必要なのか」「それが自社にとってどのような意味を持つのか」を語ることです。トップのメッセージがあって初めて、DEIBは単なる人事施策ではなく、経営の意思として現場に伝わっていくからです。

 次のステップとして求められるのが、DEIBを支える仕組みや制度を整える取り組み(ハードの改革)と、DEIBに対する人の意識・行動を変えるための取り組み(ソフトの改革)です。ソフトとハードを両輪で回すことにより、DEIB戦略・施策の目的が腹落ちした状態で、仕組みや制度が適正に運用され、組織や人の行動が変わり、組織のパフォーマンス向上につながるという好循環を生み出すことができます。

三谷氏 私たちが特に重視しているのが、社員が新しいことにチャレンジしやすくなるための「余白づくり」です。例えば、特定の部門や個人に業務が過度に集中している場合には、それを整理・是正する。そうすることで、これまで余裕がなかった人にも時間的・心理的な余白が生まれます。

 余白が生まれれば、管理職に挑戦する、スキルアップのための学習に取り組む、新しいテーマに手を挙げるといった選択肢も広がります。この「余白づくり」は、DE&Iの観点だけでなく、エンゲージメント向上やイノベーション創出の観点からも、優先度の高い取り組みだと考えています。

――最後に、経営層・人事責任者の方々に向けて、DE&Iに取り組む上で大切だと感じているポイントやメッセージがあればお願いします。

吉田氏 「DE&I=女性活躍」と考える傾向が強いのですが、それはあくまで捉え方の1つです。いろんな考えや価値観の人を含めての多様性なので、コンフリクト(摩擦)が起こるのは当たり前です。そこから逃げないで、オープンに高い透明性をもって議論する。その姿を見せることが、DE&Iに本気で向き合っている企業姿勢を示すことになるでしょう。

西田氏 仕組みや制度化を考える場合、会社としてのマクロ的な視点は必要ですが、その先には社員がいます。どうすれば、一人ひとりが能力を最大限に発揮し活躍できるかを考える。そこから目を背けず、多様な人たちを巻き込みながら、組織が活性化していく道筋を探していくことが大切だと感じています。一緒に前を向いて一歩ずつ進めていきましょう。

坪井氏 繰り返しになりますが、DEIBは重要な経営アジェンダです。正しいことを正しいやり方でやっていけば、組織は強くなり、イノベーションにつながる。PwCコンサルティングはこれまで培ってきた知見とノウハウを生かして、日本企業の変革と成長を支援していきたいと考えています。
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