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感染症に苦しむ世界中の人々のために日本の製薬会社ができることは? 日本からアジア、そして世界へ PwCと共にワクチンの安定供給に挑む明治グループ医薬品セグメント

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行が始まってから、約6年半がたった。だが世界各国では今も、途上国を中心に様々な感染症が流行し続けている。このような状況を鑑み、国境を越えたワクチンの安定供給に挑んでいるのが、明治グループの医薬品セグメントだ。その具体的な取り組みと、世界における感染症治療薬・ワクチン供給の現況や課題について、同社と伴走するPwCコンサルティングの専門家に聞いた。

国内のみならず、
海外にもワクチンを
安定供給する

新型コロナウイルス感染症の位置付けが、季節性インフルエンザと同じ「5類感染症」に変更されたのは2023年5月のこと。それからすでに3年以上が経過しており、世界中を巻き込んだパンデミックの記憶も、多くの日本人にとってはもはや過去のものとなりつつある。

だが、PwCコンサルティングの執行役員 パートナーでヘルスケア・医薬ライフサイエンス事業部を管掌するヴィリヤブパ プルック(エディ)氏は「今でも東南アジアやアフリカ、中南米といった途上国はもちろん、先進国も含め、世界のあちこちで様々な感染症の流行が続いています。日本だけにいると、その恐ろしさは実感できないかもしれませんが、世界では常にアラートが鳴り続けているのです」と警鐘を鳴らす。

左からヴィリヤブパ プルック(エディ)氏、前田 洋輔氏

(写真左)
PwCコンサルティング
ヘルスケア・
医薬ライフサイエンス事業部
執行役員 パートナー

ヴィリヤブパ
プルック(エディ)

(写真右)
PwCコンサルティング
ヘルスケア・
医薬ライフサイエンス事業部
シニアマネージャー

前田 洋輔

感染症の厄介な点は、その影響を受けやすい国・地域の多くが発展途上のため、治療薬やワクチンの大半を先進国などからの輸入に頼らざるを得ないことだ。

「国によっては政治体制や財政面などの問題で、思うように治療薬やワクチンが確保できない場合もあります。結果的に制御できなくなれば、感染症は国外にまで広がり、世界中に影響が及ぶかもしれません。ですから、感染症対策は当事国の自助努力だけに委ねるのではなく、国際協力によって取り組む必要があるのです」(エディ氏)

日本政府もここ数年、感染症対策のための国際協力を積極的に行っている。きっかけはやはり新型コロナウイルス感染症のパンデミックだ。

「ひとたびパンデミックに襲われると、多くの人命が脅かされるだけでなく、想像もつかないほど巨額の経済的損失を被る可能性があることを、国としても強く実感したのでしょう。国内における治療薬やワクチンを確保するだけでなく、要請に応じて途上国を中心とする海外にも供給できるようにする制度や体制作りが進んでいます」(エディ氏)

このような国の動きと歩調を合わせるように、国内の医薬品メーカーも感染症の治療薬・ワクチンの開発や供給を強化し、国内のみならず、海外にも安定供給できる体制作りを進めている。その代表格と言えるのが、明治グループの医薬品事業会社であるMeiji Seika ファルマだ。

ワクチンの
安定供給を担える
日本では数少ない
医薬品メーカー

Meiji Seika ファルマは、お菓子や乳製品でおなじみの明治グループが、食品セグメントと並ぶ事業の柱としている医薬品セグメントの中核事業会社である。

一見するとつながりが見えにくい「食品」と「医薬品」の共通点とは――。実は明治グループは1946年に抗生物質(抗菌薬)であるペニシリンの研究・製造を始めている。

「戦後間もない時期、国内全体で医薬品不足が深刻化する中、いち早くペニシリンを安定供給できる体制を整えて、社会課題の解決に貢献したのです。さらに、国内だけでなく海外での供給不足に対応するため、50年には抗生物質の輸出を開始しています。早くから、東南アジアをはじめとする途上国の医療支援に取り組んできたわけです」

そう語るのは、Meiji Seika ファルマ 代表取締役社長の永里敏秋氏である。

左から永里 敏秋氏、石川 誠氏

(写真左)
Meiji Seika ファルマ
代表取締役社長

永里 敏秋

(写真右)
Meiji Seika ファルマ
経営戦略本部 経営企画部
シニアスペシャリスト

石川 誠

こうした歴史を経て、同社は抗菌薬の各系統にわたる幅広い製品ラインアップを強みに、感染症領域のリーディングカンパニーとしての地位を確立。18年には、インフルエンザワクチンなどの各種ワクチンを開発・生産するKMバイオロジクスが明治グループに加わり、Meiji Seika ファルマはその資産を生かしてワクチンの領域へと事業を広げた。今、ワクチンの安定供給を担える日本では数少ない医薬品メーカーの一つである。

「明治グループは、抗生物質の領域で約80年にわたって世界に貢献してきましたが、KMバイオロジクスも前身から数えるとワクチンの開発・生産で約80年の実績があります。その両社の力を結集し、ワクチンを海外にも安定供給できる体制を整えて、感染症予防やパンデミックの抑制という地球規模での公衆衛生課題の解決に貢献していきたいと考えています」と永里氏は想いを語る。

ひと言で「安定供給」と言うが、それは決してたやすいことではない。新型コロナの感染拡大時に、日本がワクチンの確保にどれだけ苦しんだのかを思い返せば想像がつくだろう。

「感染症のワクチンは需給の波が極端に大きく、流行が過ぎ去ると一気に需要が急減するため、ビジネスとしては成り立ちにくい性質を持っています。短期的な収益だけを目的とするなら、ワクチンの安定供給という事業は著しく経済合理性に欠けるのです」と語るのは、Meiji Seika ファルマ 経営戦略本部 経営企画部 シニアスペシャリストの石川 誠氏である。

こうした使命感は、経営トップの強い意志に支えられている。永里氏は次のように語る。

「ワクチン事業は、需要の波が極めて大きく、ビジネスとしては決して楽な領域ではありません。それでも私たちが取り組み続けるのは、抗生物質で約80年、ワクチンでも約80年という両領域の蓄積を持つ企業として、果たすべき社会的責任があるからです。経営者として、この使命から逃げるという選択肢はないと考えています」

さらに、グローバル展開への想いも明確だ。

「日本の製薬会社が、本気で『日本発のグローバルワクチン』を世界に届ける――。これは私たちの世代が果たすべき挑戦です。10年、20年先の世界の公衆衛生に貢献できる会社でありたい。その想いで、社員一丸となって歩みを進めています」(永里氏)

困難を乗り越えながら
日本発の
グローバルワクチンを
開発

では、なぜ明治グループ 医薬品セグメントは、ワクチンの開発・生産に取り組むのか? それは、創業以来「人々の健康」に長く向き合ってきた明治グループの伝統を守り抜いていきたいと考えているからだ。

「食の延長線上にあるのが健康であり、我々が取り組む感染症治療やワクチンの領域です。たとえ経済合理性に欠けるとしても、求める人々にしっかりワクチンをお届けできる体制は、『人々の健康』を守る社会的責任としてしっかり整えたい。そして、なぜ我々がそれをやるのかと言えば、感染症治療およびワクチンの開発・生産に関して約80年の蓄積を持つ会社は、日本では明治グループ以外に存在しないからです」と石川氏は説明する。

明治グループ 医薬品セグメントは、海外で流行する感染症に対応する「日本発のグローバルワクチン」の開発にも力を注ぐ。

その1つが、国際的な公衆衛生課題であるデングウイルス感染症(デング熱)に対する弱毒生4価デングワクチン「KD-382」だ。初期研究段階から約15年の研究を経て、現在は第Ⅱ相臨床試験(フェーズ2)に進んでいる。デング熱は国内での症例がほとんどないため、発症予防効果を検証する最終的な第Ⅲ相臨床試験(フェーズ3)は流行地域である東南アジアや中南米で実施する必要がある。途上国を中心とした治験は、同社にとって初の試みだという。

「国ごとに制度や規制、医療ニーズは異なるので、それぞれに合わせて試験を進めていかなければなりません。また、国際共同試験のため、各治験実施国の状況を理解し、安全性や有効性に関する評価に差異が出ないように配慮する必要があります。初めての挑戦ですので様々な困難な課題にぶつかりますが、『日本発のグローバルワクチンを何としても生み出したい』という強い想いで難題に向き合っています」

このように語るのは、「KD-382」の開発に取り組むKMバイオロジクス 研究開発本部 研究開発アセットマネジメント副部長の新村靖彦氏である。

新村 靖彦氏

KMバイオロジクス
研究開発本部
研究開発アセットマネジメント部
副部長

新村 靖彦

こうした途上国での臨床試験という挑戦について、エディ氏は、業界を俯瞰する立場から次のように評価する。

「日本の製薬会社が、自国にほとんど症例のない感染症に対し、15年もの長期にわたり研究開発を続け、現地で国際共同治験を展開する――。これは世界的に見ても極めて意義深い取り組みです。短期的な収益では測れない、人類への貢献という大きな価値を生み出す挑戦であり、明治グループのような企業の存在は、日本の製薬産業全体の国際的なプレゼンス向上にもつながっています」

一方で、グローバルワクチンの開発・供給は、一企業の努力だけで完結するものではないという。各国の政府、規制当局、国際機関、そして現地の医療機関――多様なステークホルダーとの連携が不可欠であり、その複雑性は年々増している。

「だからこそ、私たちPwCコンサルティングは、グローバルなネットワークと業界知見を結集し、こうした志ある企業の挑戦を戦略面から支えていくことが使命だと考えています」(エディ氏)

パートナーと緊密に
連携しながら、
ワクチンを世界に届ける

明治グループ 医薬品セグメントは、アフリカで流行しているエムポックスウイルスによる感染症(旧称:サル痘)の予防に効果がある「乾燥細胞培養痘そうワクチン LC16『KMB』」も供給している。同社は世界に3社しかないエムポックスワクチンの供給メーカーの一つであり、世界保健機関(WHO)や厚生労働省などの関係機関と協力しながら、エムポックスに関する国際的な公衆衛生上の課題への対応に貢献していきたいと考えている。

その一環として、25年に日本政府により同社製のLC16ワクチン305万回分が、アフリカのコンゴ民主共和国に無償供与され、現地での流行抑制のために大規模接種が進められている。

こうした取り組みについて、現場で明治グループの支援にあたるPwCコンサルティングヘルスケア・医薬ライフサイエンス事業部 シニアマネージャーの前田洋輔氏は次のように語る。

「明治グループが展開している海外での臨床試験やワクチンの安定供給は、各国政府や国際機関、現地パートナーとの緊密な連携なしには実現できません。私たちPwCコンサルティングは、グローバルネットワークを活用したパートナーシップ組成に加え、各国の規制・薬事動向を踏まえた進出戦略、現地でのサプライチェーン構築、公衆衛生上の緊急事態への即応体制作りまで、幅広く支援しています」

PwCはグローバルに広がる拠点ネットワークを通じ、現地のヘルスケア・医薬ライフサイエンス専門家が各国の医療制度や規制環境に精通している。日本企業が単独では踏み込みにくい途上国においても、現地の政府機関や国際機関、医療機関との橋渡し役を担うことができるという。

「明治グループの『日本発のグローバルワクチンを世界に届ける』という強い想いに、私たちも深く共感しています。戦略立案から実行支援まで、一貫して並走するパートナーでありたいと考えています」(前田氏)

永里氏は、「コロナ禍の教訓を踏まえ、国内でのワクチンの安定供給に貢献することはもちろん、日本政府をはじめとする各国のパートナーと緊密に連携しながら、品質の高い日本発のグローバルワクチンを世界に広くお届けしていきたいと考えています。ぜひご期待ください」と力強く語る。

明治グループ 医薬品セグメントの挑戦に、エディ氏も期待を寄せる。

「感染症対策は、もはや一企業・一国だけで解決できる課題ではなく、官民連携、国際協力、そして異業種の知見を結集したエコシステム作りが不可欠です。明治グループのような志ある日本の製薬会社が、グローバルワクチンの担い手として世界に存在感を示していくこと――その挑戦は、感染症に苦しむ世界中の人々に希望をもたらすだけでなく、日本のヘルスケア産業のグローバル化をけん引する象徴的な動きでもあります。私たちPwCコンサルティングは、その歩みを全力でサポートしてまいります」

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