労働力不足と変化に対応するチーム強化戦略が求められる中、チームリーダーを悩ませるのが「非定型業務」の属人化だ。本セミナーでは、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)や自動化を戦略的に活用し、チームを着実に強化する実践的なマネジメント術を提示。単なる知識にとどまらず、明日からのヒントとネットワーキングの機会を提供するものとなった。その模様をレポートする。

非定型業務から生まれる業務課題と
リーダーが実践すべき変革の鍵とは?

株式会社クロスリバー

代表取締役
CEO

越川 慎司

 長らく生産性の低さに悩まされてきた日本企業。働き方改革は進んでいるものの、残業時間は大きく減っていないとの指摘もある。これまでに815社・17万3000人に働き方改革のコンサルを行ってきた越川氏は、「目指すべき頂上は残業削減ではなく、“More with Less”――より少ないリソースでより多くの成果を出すことだ」と語る。

 越川氏は、金曜午後3時に内省の時間を設ける取り組みを実施。結果、平均11%の無駄が可視化された。その時間を新規事業開発やAI活用に振り向けた企業が成果を上げているという。

 「まずやるべきは“足す”ことではなく“引く”こと。業務をコアとノンコアに切り分ける。その選択肢としてAIやBPOがあります」(越川氏)

 だが、多くの企業が途中で頓挫する。なぜか。30年以上にわたり、BPO事業を展開してきたリクルートスタッフィングの高島氏は「やめることを見つけ続けるのは想像以上に難しい」と指摘する。ある食品会社では、外勤営業の業務を調査した結果、実に55%が売上げに直結しないノンコア業務だった。しかも業務は属人化し、ピュアセールスタイムを圧迫していたという。

 生産性向上を掲げ、いきなり自動化やAI導入を検討する企業は少なくない。しかし本質はその前段階にある。業務を棚卸しし、構造を可視化することだ。とはいえ、自社だけでの実行は容易ではない。そこで増えているのが、業務棚卸し・可視化を行う「業務調査サービス」である。

株式会社リクルートスタッフィング

BPOソリューション営業部
部長

高島 理沙子

 「社員が本来担うべき業務を特定するため、当社では業界横断で蓄積した可視化の知見をもとにさまざまな提案をしています。やめてもよい業務を判断する材料を提供するのが我々の役割です」(高島氏)

 越川氏も、「最もアウトソースしにくいのは“重要そう”な仕事。この“そう”を外すには外部の視点が有効だ」と語り、外部活用の意義をこう強調した。

 「イノベーションは技術革新ではなく新結合。異なる人が交わることで化学反応が起きる。商店街とインターネットを組み合わせたらAmazonが。コンビニとスポーツジムを組み合わせたらチョコザップができる。ポイントは、できるだけ離れた人と連携すること。BPOもその一つです。今日導入しなくても致命傷にはなりません。しかし未来への投資として、AIやBPOは外せない選択肢になるでしょう」

BPO導入で属人化業務の改革を実現した
ホーチキと成功のポイントについて議論

 ホーチキは1918年に創業した日本初の火災報知器メーカーだ。同社のBPO導入の契機となったのは「2024年問題」に伴う組織を支える人材の確保だった。対象は、防災システムの設定内容が図面どおりかを確認する「全点チェック業務」。体系的なマニュアル整備が進んでおらず、精度にもばらつきが生じ、属人化が常態化していた。贄田氏はこの業務をBPOすることで、人材を戦力増強が必要な領域へ振り向ける構想を描いた。

ホーチキ株式会社 東京支店

施工管理部 施工技術課
課長

贄田 康宏

 そもそも、なぜ属人化が進んだのか。贄田氏は「業務への関心の偏り」に原因があったと分析する 。「全点チェック業務は重要ではあるものの緊急性は高くない。緊急案件が入ればそちらが優先され、周囲の関心も薄れる。その結果、やり方が自己流になり、属人化へと進んでしまった」。

 プロジェクトは同年7月に始動。半年で基本業務の移行を完了させた。以降は月1回の定例会で運用状況を確認し、改善を重ねながら定常化へと移行している。その効果は明確だ。「業務を独立させたことで、属人的な判断に依存しなくなりました。他拠点の業務も担えるようになり、繁閑の波を吸収しやすくなっています」(贄田氏)。

 高島氏は、成功のポイントを「可視化の徹底」にあると解説する 。「運用を引き受ける前に業務調査を実施し、作業レベルやフローを細部まで洗い出しました。その上で無駄や自動化の可能性を抽出、整理とマニュアル作成を進めて標準化の土台をつくりました」。

 もっとも、現場には「自分の仕事がなくなるのではないか」という不安がある。長年担当してきた社員へのヒアリングは容易ではない。今回、短期間で移行が進んだ背景には、贄田氏の“巻き込み力”があったと高島氏は評価する。どのように合意形成を図ったのか 。「社員には最終的な体制像を示し、BPOによって業務が楽になるというビジョンを共有しました。特に抵抗感の強いメンバーには時間をかけて説明。上層部には“必要性”よりも“可能性”を伝え、進捗を共有しました」(贄田氏)。

モデレーター:日経BP 総合研究所

チーフコンサルタント
主席研究員

小林 暢子

 越川氏は、巻き込みや合意形成はAIには代替できない領域だとし、その上でミドルマネジメント層にこう示唆した。「リーダーの役割はメンバーが続けられない課題を見つけること。そのためには2つ上の役職目線で業務を見る必要があります。それでも見えない部分は、BPOなど第三者の力を借りるべきです」。

 導入前は「全点チェック業務を外に出すことはできない」という思い込みがあったという贄田氏。しかし可視化と標準化を経た今では他業務への展開可能性も視野に入れているという。高島氏は「可視化こそ、業務改革の第一歩。そのための手段としてぜひBPOを活用してほしい」と呼びかけた。

株式会社リクルートスタッフィング

BPOデザイン部プロジェクト企画グループ
プロジェクトデザイナー

陸原 正晃

今回のセミナーでは「属人化からの脱却は『実情把握』から! 〜悪循環を断ち切るための非定型業務の可視化メソッド〜」と題したワークショップも開催。参加者は専用フレームワークを用い、自社の非定型業務を具体的に書き出して工程ごとに分解。業務の流れや判断基準を可視化するプロセスを体験することで、課題把握や解決に向けたヒントとなったという感想が上がった。

株式会社リクルートスタッフィング

BPOデザイン部プロジェクト企画グループ プロジェクトデザイナー 陸原 正晃

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