効率化から、成果へ。「業務」「空間」「知」をつなぐワークプレイスのインテグレーター  効率化から、成果へ。「業務」「空間」「知」をつなぐワークプレイスのインテグレーター

生成AIをはじめとする新しいテクノロジーの導入が加速している。しかし、個々の作業は速くなっても企業全体の成果につながっているとは限らない。複雑に連なる業務プロセスを見渡し、人、業務、データ、テクノロジー、働く場所を一体で変えなければ、部分的な効率化にとどまってしまうからだ。
リコーは2026年3月に発表した「中期経営戦略'26」で、お客様の働く場(ワークプレイス)において、お客様の競争優位性と差別化に貢献するグローバル随一のインテグレーターとして、世界各国のお客様のに貢献する方針を掲げた。複合機やプリンターの会社として広く知られる同社が、なぜ今インテグレーターを目指すのか。株式会社リコー CMO(最高マーケティング責任者)の小林一則氏に話を聞いた。

BEYOND EFFICIENCY

個人の効率化だけでは
企業の成果につながらない

生成AIの登場により一人ひとりの仕事の進め方は大きく変わり始めている。数時間かかっていた作業が数分で終わるといった変化を日々の業務の中で実感している人も多いだろう。一方、組織の仕事は、アプリケーション上で完結する作業、人の判断が欠かせない作業、複数部門が関わる作業などが複雑につながっている。そのため、個人の生産性向上が、そのまま企業全体の成果につながるとは限らない。

「生産ラインでは、一部の工程を効率化しても、別の場所にボトルネックが残っていれば、全体の生産性は高まりません。企業の仕事も同じです。AIの導入そのものを目的にするのではなく、ビジネス全体を見渡し、どこをどう変え、どのような成果を得るのかに焦点を置く必要があります」(小林氏)

株式会社リコー
コーポレート上席執行役員
CMO
インテグレーションマーケティング本部 本部長

小林一則氏

小林氏は、企業がテクノロジーを成果につなげるための要点を四つ挙げる。一つ目は、取り組みをテクノロジー導入ではなくビジネストランスフォーメーションとして捉えること。二つ目は、作業時間の短縮だけでなく、売上や利益、顧客価値といったアウトカムから逆算すること。三つ目は、業務をエンド・ツー・エンドで捉え、AIを使うべきポイントを見極めること。そして四つ目が、正しく使えるデータと、安定運用やセキュリティー、ガバナンスを含む基盤を整えることだ。

株式会社リコー
コーポレート上席執行役員
CMO
インテグレーションマーケティング本部 本部長

小林一則氏

企業競争力を高める4つの要素

「企業が新しい技術の導入を急ぎ、社内でのユースケースを探して導入してみるものの、焦って導入したせいで全体設計が疎かで十分な成果が出ないまま終わってしまう。そして次の技術が登場すると、また同じことを繰り返す。私は、そうしたケースをこれまで何度も見てきました」(小林氏)

こうした循環から抜け出すには、個別の製品やツールを選ぶだけでなく、業務全体を理解し、成果が生まれるところまで設計・運用できるパートナーが必要になる。

INTEGRATOR

製品を作って売る会社から、
成果に伴走するインテグレーターへ

リコーは長年、複合機やプリンターにとどまらない多様な製品・サービスで「働く」を支え、2020年には「デジタルサービスの会社」への変革を宣言するなど、事業領域を広げてきた。「インテグレーター」は、その変革をさらに進める新たな方向性だ。今回打ち出したのは、その実態と目指す方向を、より明確に示す言葉だ。リコーが考えるインテグレーターは、複数の製品やサービスを単に組み合わせる存在ではない。ハードウエア、ソフトウエア、ITインフラに加え、業務プロセスの設計やアウトソーシング、ワークプレイスの構築・運用までを対象とする。自社の技術だけに閉じず、パートナー企業の製品やサービスも組み合わせながら、顧客ごとに異なる課題に対して最適な形をつくる。

リコーの強み

リコーがインテグレーターとしてつなぐものは、大きく三つある。一つは「業務」。データ、人、AIを業務とつなぎ、個々の作業の効率化にとどまらず、業務プロセス全体を最適化する。二つ目は「空間」だ。オフィス、現場、遠隔地をシームレスにつなぎ、人と人、人とAIが自然に協働できる働く環境をつくる。そして三つ目が「知」である。個人や部門に閉じていた経験やノウハウを、AIやデータを活用しながら組織の知へと変え、継続的な価値創出につなげていく。

「お客様の『業務』『空間』『知』は、それぞれ独立しているわけではありません。これらを横断的につなぎ、お客様にとって最適なワークプレイスをつくる。それが、私たちが目指すインテグレーターです」

ただし、一度つなげば完成というわけではない。事業環境が変われば業務も変わる。テクノロジーの進化によって働く場所や人とAIの関係も変わり、企業に蓄積される知も増え続ける。

「お客様の事業も働き方も、テクノロジーも変わり続けます。だから私たちもその変化を捉え、その時々に必要なものをつなぎ直しながら、成果が生まれるところまで伴走していく。それがリコーの価値提供です」

EARNED TRUST

140万社との接点で培った
リコーの「現場理解」と信頼

この役割をリコーが担ううえで基盤となるのが、世界約140万社のお客様との接点だ。長年にわたってオフィスや現場に入り、業務や働き方への理解を深めてきた。加えて、ソフトウエア、プリンティング、光学・画像処理、環境、生産・分析・制御、材料・デバイス、そしてセキュリティーなど、複合機をはじめとする事業で蓄積してきた幅広い技術が重なることがリコーの強みだという。

リコーグループは、日本、米州、欧州、アジア・パシフィックに拠点を置き、世界約200の国と地域で事業を展開している

しかし、小林氏がそれ以上に重視するものがある。長年の顧客との関係の中で築き上げてきた信頼だ。

「お客様からよくいっていただくのが、『リコーには安心して任せられる』『逃げずに、最後まできちんとやってくれる』という言葉です。私たちが今、お客様とお付き合いできているのは、創業者や先輩たちが信頼を築き、受け継いできてくれたからです。そこがすべてのベースだと思っています」(小林氏)

その信頼が、新しい相談の入口になる。小林氏が欧州に赴任した2014~15年ごろから取引が始まった、あるグローバル製造企業との関係も当初はプリンターや複合機の提供から始まった。運用上のトラブルや複雑な要求に一つずつ向き合い、10年以上にわたって安定した運用・保守を続ける中で、「プリンターとは関係がないが、こんなことはできないか」と相談される関係へ変わっていった。

このグローバル製造企業が抱えていたのは、国や地域ごとに分散したサプライヤーを統合し、セキュリティーや運用ルール、サービス品質をグローバルで一定水準にそろえたいという課題だった。リコーは約200の国と地域で培った提供・サポート体制と、グローバル専任チームを生かしてそのニーズを実現した。現在は世界各地の会議室を対象とするマネージドサービスまで支援領域を広げている。

この事例が象徴するように、リコーが目指す伴走とは、同じサービスを長く提供し続けることではない。お客様の事業や働き方の変化を捉え、その時々の課題に応じて、提供する価値そのものを変えていくことだ。

一方で、グローバル企業が求める「どこでも同じ品質」と、地域や顧客に合わせた「きめ細かな最適化」は、時に相反する。例えば同じフランスに拠点を置くグローバル企業でも、英語でのサポートを当然とする企業もあれば、フランス語での対応を必須とする企業もある。リコーはこうした要望に応じて、現地に赴くスタッフも、英語で対応できる人材、フランス語で対応する人材と柔軟に組み合わせている。国や地域によっては、その市場独自のアプリケーションを提供することもある。

「地域に根差したサービスは、私たちのビジネスの大部分を占めます。一方、グローバル企業は、国内外のどの拠点でも、同じサービスを同じ品質で受けたいと考えます。ローカルにきめ細かく対応する力と、グローバルで一貫した価値を届ける力。その両方を持ち、使い分けられることが私たちの強みです」(小林氏)

One RICOH

「One RICOH」で
地域と事業の強みをつなぐ

その力を最大限に活かすため、リコーは2026年4月、地域と事業がより機動的に連携できる新たな経営体制へ移行した。各地域が培ってきた顧客理解と、各事業が持つ製品・技術・サービスを結び付け、より大きな価値を生み出す狙いだ。一方で、各組織の自律性が高まるほど、地域や事業ごとの個別最適に陥るおそれもある。そこで、グループ全体として最適な価値を生み出すために打ち出したのが「One RICOH」という考え方である。

「One RICOHは、すべてを一つの組織に統合するという意味ではありません。地域や事業がそれぞれ持つ強みをつなぎ、重複を減らし、リコーグループとしてお客様にとっての最適解をつくるための考え方です」(小林氏)

小林氏が本部長を務めるインテグレーションマーケティング本部は、まさにこの「つなぐ」役割を担う。地域、事業、人、技術、顧客接点で得た知見を横断的につなぎ、必要に応じて社外のパートナーの力も組み合わせながら、お客様にとっての最適解をつくる。

お客様の業務、空間、知をつなぐために、まずリコー自身が地域、事業、技術、知見をつなぐ。One RICOHは、そのための基盤でもある。

TRUST and PRiDE

「『働く』を変えたい」とき
リコーが最初に思い出される
存在になりたい

リコーの企業理念の原点にあるのが、創業者の市村清氏が提唱した「三愛精神(人を愛し 国を愛し 勤めを愛す)」だ。その精神を受け継ぎ、現在は「“はたらく”に歓びを」を企業理念の「使命と目指す姿」に掲げている。働く人に寄り添い、変革を起こし続けることで、人ならではの創造力の発揮を支え、持続可能な未来の社会をつくることを目指している。

「お客様が『働く』を少し変えたいと思ったとき、まずリコーを思い出してもらえるようになりたいと思っています。そうしたお客様を、実績と信頼によって一社ずつ増やしていくことが、会社としても私自身としても目指していることです」

そのために小林氏が組織運営で大切にしてきた言葉が「TRUST and PRiDE」だ。始まりは2013年、ソリューション開発に携わるメンバーと「自分たちはどうありたいか」を考えたワークショップだった。そこで出たのが「自分の仕事に誇りを持ちたい」という声だった。では、何があれば誇りを持てるのか。議論を重ねる中でたどり着いたのが、周囲に貢献し、信頼を得ることだった。

「仕事を通じて成果を出し、相手に貢献し信頼を築く。その信頼があって初めて、自分の仕事に誇りを持てる。だからTRUST(信頼)が先で、PRIDE(誇り)が後なのです。私自身も発言や行動をするとき、それは本当に人から信頼されるものかを常に考えています」(小林氏)

AIをはじめとする技術が急速に進化する中、企業に求められるのは、個別のツールを導入するだけでなく、変化を成果へつなげることだ。お客様の現場を理解し、「業務」、「空間」、「知」をつなぎ、さらに社内外の技術やサービスを最適に組み合わせながら、成果創出まで伴走する。この営みに完成はない。お客様の事業や働き方が変われば、求められる環境も変わり、それに応じてリコーが提供すべき価値も変わる。その変化に寄り添い、必要なものをつなぎ直しながら価値を生み出し続ける。その積み重ねによって、お客様の競争優位性と差別化に貢献する。それが、リコーが目指すインテグレーターの姿だ。

2026年11月4日-6日 Gartner IT Symposium/Xpo™にリコーが登壇

株式会社リコーは、2026年11月4日(水)から6日(金)の3日間、パシフィコ横浜ノースで開催される「Gartner IT Symposium/Xpo™」に出展します。セッションでの登壇や、Exhibit Showcase(展示エリア)でのブース出展も行います。

GARTNER and IT SYMPOSIUM/XPO are trademarks of Gartner, Inc. and/or its affiliates and is used herein with permission. All rights reserved.

アンケートはリコーが実施します。ご回答内容はSurveyMonkeyに送信され、リコーが取得し、今後のサービスの質向上やマーケティング戦略の立案に利用させていただきます。問1~6の回答のみが送信され、個人情報や行動履歴など回答以外は送信されません。なお、日経BPは本アンケートに関するいかなるデータも取得しません。