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防災トランスメーションフォーラム
◆セールスフォース・ジャパン

「集めるデータ」から「動くデータ・AI」へ
過去の教訓が導く最新防災DXの現場力

大規模災害時には、被災者一人ひとりに必要な支援をどれだけ早く、漏れなく届けられるかが問われる。そこで求められるのは、被災者を軸にした平時から情報をつなぐ仕組みだ。具体的にはどうしたら実現できるのか。「第2回防災X(トランスフォーメーション)フォーラム」に登壇したセールスフォース・ジャパンの公共ビジネス開発本部 ディレクター 事業開発担当の小田幸弘氏は、テクノロジーベンダーの立場から、今後の防災DXが向かうべき方向性と具体的なソリューションを語った。

全国1000以上の自治体への導入実績を誇っているSalesforceでは、現在「Agentforce Public Sector」を提供するなど、生成AI及び自立型AIエージェントの活用にも力を入れている。

セールスフォース・ジャパンの小田幸弘氏は防災分野で手掛けてきた取り組みとして、県・市区町村の情報を集約する「防災情報共有システム」、平時と災害時を1つのアプリで橋渡しする「住民向け防災アプリ」、罹災証明書の受付から発行までの全フェーズを支える管理システムなどを挙げる。

「ある自治体では、地図連携や画像・ファイル管理のSaaSと組み合わせた罹災証明受付システムを、わずか一晩で構築した例もあります」と災害時に必要とされるスピード対応を実現してきたと胸を張った。

能登半島地震の公的報告から
防災DXへ4つの課題を提示

小田 幸弘氏

株式会社セールスフォース・ジャパン
公共ビジネス開発本部
ディレクター 事業開発担当
小田 幸弘

同社はこれまで蓄積してきた知見をもとに、2024年に発生した能登半島地震の公的レポートを独自に分析し、次世代の防災DXに向けた4つの課題を提示している。

1つめは住民台帳や避難所の名簿、通信アプリなどの情報を被災者と紐づける仕組みが十分でないこと。2つめは避難所から仮設住宅へ移る際に、被災者の状況(コンテキスト)がうまく引き継がれないこと。3つめが物資の量だけでなく、乳幼児や高齢者といった被災者の属性と連動した供給が不十分なこと。4つめが各種データの照合・突合など、自治体職員に求められる作業負担が大きいことである。

小田氏は「AIはトリアージなど生死を判断するような使い方ではなく、こうした業務の中に組み込んでいくことが重要だ」と指摘する。

CRMを活用した「被災者カルテ」
ノーコード/ローコードで構築

これらの解決策として同社が示すのが、認知・判断・実行をAIで垂直統合する4層からなるエージェンティック・アーキテクチャだ。

最下層(第1層)は、住民基本台帳や医療・福祉データなどをリアルタイムに統合し、AIの判断に根拠を与える「Data 360」と呼ばれるデータ基盤である。その上の第2層には、被災者一人ひとりを軸に罹災証明や給付金支給などの業務を一元管理するCRM「Agentforce Public Sector」を据え、第3層に、業務プロセスに組み込む形で機能するAIエージェント「Agentforce」を配置する。

最上層(第4層)の「Engagement」では、LINEやSMS(ショートメッセージサービス)、住民ポータルなど多様なチャネルを統合し、情報の入口と出口(=支援)を一本化する。

このアーキテクチャを体現するユースケースの1つめが、CRMを活用した「被災者カルテ」だ。石川県が公開している「広域被災者データベース」の導入手順書・仕様書を分析し、Salesforce の実装仕様に落とし込んだ。「全体の8 〜9割をノーコード/ローコードで構築した」(小田氏)。

具体的な機能としては、被災者の基本情報や要配慮者の状態、世帯情報、居所の時系列変化、健康・介護アセスメント、電子申請の履歴などを被災者カルテとして1つの画面に集約した。自治体の担当者が交代しても、この画面を見れば、これまでの支援の経緯を即座に把握できる。カルテを解析するAIエージェントも組み込まれており、支援漏れの防止や次のアクションの提案など、職員の意思決定を後押しすることが可能になっている。

QUICK Data Cast

「災害ケースマネジメント」や
「物資供給」もAIエージェントで

2つめのユースケースは「災害ケースマネジメント」。福祉分野で運用されてきたケースマネジメント機能を災害対応向けに転用し、被災者が生活再建を実現するまで途切れることなく伴走する仕組みも構築可能とした。

訪問員や避難所スタッフ、NPO・専門機関などの関係者がSlackを介して情報を共有。AIエージェントがアセスメント情報からケアプラン案を自動生成したり、一定期間フォローが途絶えているケースを検知して次のアクションを提案したりできる。人とAIエージェントが対話しながら支援を進めるこうした世界観が、今後の災害ケースマネジメントの現場にも必要であると考える。

3つめのユースケースは「物資供給」だ。避難所にどれだけの物資があるかという在庫中心の管理から、「そこにどんな人が何人いるか」という、人を軸に加えた供給の最適化へと発想を転換した。

避難者リストに記録された年齢や要介護度などの属性データと、気象・道路状況、外部の在庫・物流データを統合してAIエージェントが需要を予測。一定の閾値(しきいち)を下回れば、物資供給担当者の発注・配送手配の意思決定支援をAIエージェントが行い、物資が届いたタイミングでLINEやSMSなどにより、対象となる住民とその家族にピンポイントで通知する仕組みも考えられる。

AI活用と個人情報保護を
両立する「信頼のガードレール」

講演最後のQ&Aセッションで日経BP 総合研究所の黒田隆明にAIエージェント活用の現状を問われた小田氏は、「今はまだPoC(概念実証)の段階だ」とし、「業務プロセスへの組み込みを見据え、検証を重ねながら実装するサイクルが求められる」と答えた。

講演で小田氏が強調したのは、AI活用と個人情報保護を両立させる「信頼のガードレール」という概念だ。

Salesforceでは、生成AIへ送信する前に個人情報を自動マスキングする「Einstein Trust Layer」、判断根拠を監査ログとして記録する透明性の仕組み、役割に応じてアクセス権限を制御する仕組みの3本柱によって、災害対策基本法や個人情報保護法などの法令・指針に準拠しながら、安心してAIを活用できる基盤を提供する考えだ。

「Engagement、AIエージェント、CRM、Data 360を4層に束ねることで、防災DXはこれまでの『集めるデータ』から、被災者を助けるために自ら動く『動くデータ・AI』へと進化していきます」と小田氏。

防災DXの本質はテクノロジーではなく、個々の被災者に向き合う仕組みづくりだ。セールスフォース・ジャパンでは今後のAIエージェントの活用を見据えた「エージェンティック・アーキテクチャ」により、防災における自助・共助・公助の取り組みを大きく進化させる。

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