

好きなキャラクターを身近に感じ、応援する「推し活」。グッズを購入したり、作品の世界観に触れたり、その体験を写真や動画に収めてSNSで共有したりと、楽しみ方は多様化している。こうしたなか、店舗やイベント会場に設置されるサイネージも、商品や情報を伝えるだけでなく、作品とファンとの新たな接点を生み出し、その場ならではの体験をつくるメディアとしての活用が期待されている。
その可能性を示したのが、千葉・幕張メッセで2026年9月17日~21日に開催された「東京ゲームショウ2026」の「Astrae Oratio(アストラエ・オラティオ)」ブースに登場したSamsung Electronics(以下、Samsung)の3Dディスプレー「Samsung Spatial Signage(以下、Samsungスペーシャルサイネージ)」だ。専用の3Dメガネを使わず、キャラクターが目の前に存在するかのような立体感を生み出し、デジタル上のキャラクターや作品世界とファンをつなぐ、新たな接点をつくり出した。

東京ゲームショウ2026の「アストラエ・オラティオ」ブースの様子。ディスプレーの周りに来場者が集まり、ゲームの世界観を体験している。Samsungスペーシャルサイネージは、空間に自然に溶け込みながら来場者の注目を集め、ブース体験に没入感を与えた
まるでエレベーターの中に立っているかのように、ゲームのキャラクターが等身大で映し出され、来場者の目の前でくるりと身を翻す――。東京ゲームショウ2026のNC社のブースでは、高さ約190cmの縦型画面を備えた85インチのSamsungスペーシャルサイネージを使い、新作モバイルゲーム「アストラエ・オラティオ」のキャラクターがそこに存在しているかのような演出が展開された。


ブース入口に設置された、85インチの専用メガネなしで楽しめる3DディスプレーSamsungスペーシャルサイネージ。ゲーム内の「特区庁」のエレベーターのシーンを表現し、「アストラエ・オラティオ」のキャラクターを印象的な奥行き感とともに映し出すことで来場者の注目を集めた
「アストラエ・オラティオ」は、魔法が日常に浸透したファンタジー世界を舞台とする、新作の新伝奇魔法RPGだ。作品世界を思わせるエレベーター風の空間に組み込まれた85インチモデルのSamsungスペーシャルサイネージでは、画面の奥にもう一つの空間が続いているような立体感を表現。試遊を待つ列には32インチモデルも設置され、来場者は並びながら奥行き感のあるキャラクター映像を楽しむことができた。
「来場者には、ブースに足を踏み入れた瞬間から、等身大のキャラクターと向き合い、ゲームの世界に没入していただきたいと考えました。サブカルチャージャンルのゲームにおいて、キャラクターの生き生きとした表現やリアリティーは特に重要です。Samsungスペーシャルサイネージによって、これを実現できると考えました」(NCのアストラエ・オラティオ事業部長 イ・ヨンス氏)
会場では、画面に生まれる奥行き感に気付いて足を止め、キャラクターの動きに見入ったり、スマートフォンを向けて動画を撮影したりする来場者が多く見られた。NCによると、ブースでの滞在時間も長くなったという。また、試遊を待つ来場者も32インチモデルに目を向け、キャラクターの動きや立体表現を楽しんでおり、待機列そのものがコンテンツに触れる場となっていた。Samsung スペーシャルサイネージは、思わず写真や動画に収めたくなる撮影スポットとなるとともに、待ち時間を作品の世界観に触れられる時間へと変えていた。

ブース内ラウンジに、壁掛けのアートフレームのような形で設置された32インチのSamsungスペーシャルサイネージは、厚さわずか49.4mmの超薄型設計により、来場者の動線を妨げることなく、空間に自然に溶け込む。試遊を待つ来場者にとっても動画を撮影したり作品の世界観を楽しんだりできる魅力的なスポットとなった
こうした立体表現を支えているのが、Samsung独自の特許技術「3Dプレート」である。両眼視差の原理を応用し、左右の目に異なる映像を届けることで、専用の3Dメガネを使わずに奥行きを感じさせる。薄型の筐体でも、コンテンツを高解像度の2Dで鮮明に表示しつつ背景に深さを加えることで、画質を保ったまま立体感のある映像を生み出せる。
このサイネージの活用を広げる上で、もう一つの特徴となるのが設置のしやすさだ。85インチモデルは厚さ52mm、重さ49kg。32インチモデルは厚さ49.4mm、重さ8.5kgで、いずれもVESA規格に対応し、大型の専用筐体や大掛かりな建築改修を前提とせず、既存の壁面や通路、待機スペース、棚、カウンターなどに、一般的なサイネージに近い感覚で導入できる。
「来場者の動線設計はとても難しい課題でしたが、スペーシャルサイネージは非常に薄型であるため、設置しやすく、空間を効果的に活用することができました」とイ・ヨンス氏は説明する。「その結果、来場者向けのグッズを保管するスペースも確保できました」
ブース入口では、NCはこのインスタレーションを視覚的な焦点であると同時に、レイアウトの機能的な一部として活用した。ディスプレーが来場者の注目を集める一方、その背後のスペースはグッズを保管するための隠れた収納スペースとして活用された。
来場者は、「このようにボックス型で表現されると、もっと大きなものだと思いました」と語り、さらに「これだけ限られたスペースに収められるのは、すごいと思います」と付け加えた。
85インチモデルは、旗艦店やミュージアム、大規模イベントなどで、実物大の人物やキャラクターを表現し、離れた場所から注目を集める用途に適している。一方、FHD解像度の縦型画面を備えた32インチモデルは、棚やカウンター、ショーケースなどにも設置しやすい。靴やジュエリー、小型電子機器などを360度回転させ、正面だけでなく側面や背面まで立体的に見せるなど、大型ディスプレーを置きにくい店舗にもスペーシャルサイネージを取り入れられる。
Samsung スペーシャルサイネージの活用は、ゲームイベント以外にも広がっている。韓国のテーマパーク「エバーランド」のサファリワールドでは、アトラクションの待機列に設置し、等身大のトラやライオンが現れるような映像で、待ち時間を没入感のあるエンターテインメント体験へと変えた。米国のガバナーズ・ボール・ミュージック・フェスティバルでは、85インチモデルを使ってアパレルやアクセサリーなどを紹介し、グッズとの出会いやリテール体験を高めた。

左:韓国・エバーランド サファリワールドの待機エリアでは待ち時間を没入型の体験へと変えた/右上:米国・Governors Ball Music Festivalではグッズの閲覧やショッピング体験を高めた/右下:ドイツ・Gamescom 2026ではファンが楽しめるインタラクティブな3Dフォトゾーンとして活用された
キャラクターや作品を応援する「推し活」文化が根付く日本では、ファンが好きな存在と出会える体験と、限られた店舗空間を有効に使える設置性の両方が求められる。大型画面で等身大のキャラクターを印象的に見せ、小型画面で商品やキャラクターとの接点をつくる。こうしたサイズの使い分けによって、キャラクターショップやポップアップストアを、商品を見るだけでなく、作品の世界を体験し、共有したくなる場所へ変えていくことも可能になる。
「日本には、お気に入りのキャラクターや作品をリアルな空間で体験したいというファンが数多くいます。Samsungスペーシャルサイネージによって、専門店やポップアップショップなどに、キャラクターの存在をより身近に感じられる体験を広げていきたいと考えています」(Samsung Electronics Japanのサイネージ販売チーム担当者)
東京ゲームショウ2026の「アストラエ・オラティオ」ブースで示されたのは、大画面の迫力だけではない。一般的なサイネージに近い感覚で設置できる薄型設計と、空間に合わせて選べるサイズ展開によって、デジタル上のキャラクターや作品世界をリアルな空間へ展開できることもSamsungスペーシャルサイネージの大きな特徴だ。ゲーム、小売、レジャー、音楽など、デジタルコンテンツをリアルな体験へ変える試みは、業種を超えた新たな顧客接点として、今後さらに重要性を増していきそうだ。
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