AI時代の経営変革は「業務を正しく回す」から「変化し続ける」ための経営基盤へ
SAPを 「変革の基盤」として 再定義する

経営を取り巻く環境が刻一刻と変化する「不確実性の時代」。変化に合わせて、組織や業務プロセスを柔軟に見直さないとこの時代を生き抜いていくのは困難だが、業務を回す仕組みであるERP(統合基幹業務システム)が硬直化した状態だと、俊敏に対応できず、変化に飲み込まれてしまう恐れがある。SAPジャパンは、環境変化に応じて自らをアジャイルに変えていけるERPを、これからの経営に求められる「変革の基盤」として再定義すべき、と説く。同社の新たな代表取締役社長に就任した堀川嘉朗氏に話を聞いた。

変化に俊敏に対応するために
必要なものとは?

地政学リスクの高まりや、それに伴うサプライチェーンの寸断、原材料価格の急変動など、今の経営を取り巻く環境は、「目まぐるしい」といった生やさしい言葉では形容しがたいほど、激変を繰り返している。しかも、昨日の常識が、朝には全く別の常識に上書きされるほどの急激な変化が常態化しており、経営の難度は格段に上がっている。

「今、経営を進める上で一番難しいのは、前提が常に変わり続ける環境の中で、いかに正しい判断を下せるかということ。私自身、会社の舵取りを任されるようになってから、痛いほどその難しさを実感しています」

そのように語るのは、今年4月1日、SAPジャパンの代表取締役社長に就任したばかりの堀川嘉朗氏だ。

堀川 嘉朗 氏

SAPジャパン
代表取締役社長

堀川 嘉朗

1998年4月、日本ディジタルイクイップメント入社。2002年11月、デル入社。2013年12月、SAPジャパン入社。2019年1月、同社バイスプレジデントサービス事業本部サービス営業本部長就任。2021年4月、同社常務執行役員サービス事業本部長就任。2022年4月、同社常務執行役員クラウドサクセスサービス事業本部長就任。2024年4月、同社常務執行役員最高事業責任者就任。2026年4月1日、同社代表取締役社長就任。

同氏は2013年12月にSAPジャパンに入社後、サービス営業部長を振り出しに、常務執行役員 サービス事業本部長、常務執行役員 最高事業責任者(CBO)など、一貫してSAPのユーザー企業と最前線で向き合うポジションに身を置いてきた。それだけに、顧客を取り巻く環境がこの10年余りでいかに変化したのかを肌身で感じ取っているが、その堀川氏ですら、「半歩先も読めないほど経営を取り巻く環境が激変するという今日の状況は、正直、予想を超えるものでした。多くの経営者は、あまりの変化の激しさに戸惑いを感じているのではないでしょうか」と明かす。

しかし、「変化が当たり前の時代になったのなら、企業はそれに適応しながら、柔軟に生き抜いていかなければなりません。幸い、今の時代は、先行きを予見するための材料である大量のデータが社内外に存在し、それを瞬時に分析して、経営判断に重要な示唆をもたらすAIも日々進化を遂げています。これらの武器を有効に使いこなせば、変化に俊敏に対応しながらビジネスを継続し、発展させられるはずです」と堀川氏は確信する。

ERPに対する従来の概念が、
変化を妨げる足かせに

だが、堀川氏の提言とは裏腹に、日本企業の多くは、目の前で起こっている変化に柔軟に対応できない状況にある。

足かせとなっているのは、業務プロセスを回すための基盤であるERPだ。

従来、多くの企業は、業務手順を「最適な形」に標準化するための“道具”としてERPを導入してきた。現行の業務プロセスを徹底的に分析・評価し、標準化・効率化された理想的な業務フローを定義し、そのフローが円滑に回るようなシステムを構築する。そうしたビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)を中核とした経営変革を実践することが、企業の競争力を高める正しい方法であると信じられてきた。

「そのため、過去のERP導入プロジェクトにおいては、ERPを導入すること自体が『ゴール』であると捉えられてきました。かつてのように経営環境がさほど急激に変化しなかった時代であれば、その考え方も通用したかもしれません。しかし、『最適化』の名の下に一度ERPで固定されてしまった業務プロセスは、そう簡単に変えられるものではありません。経営を取り巻く環境はどんどん変化しているのに、多くの企業は、それに合わせて業務の進め方を変え続けられる柔軟性を失っているのです」と堀川氏は指摘する。

では、どうすればその足かせを取り除けるのか?

堀川氏は「ERPを利用する意義そのものを再定義し、『変革の基盤』として活用すべきです」と提言する。

「以下の要件を備えた『変革の基盤』としてのERPが求められています。

①ビジネスや組織は変化し続けることを前提に、ERP導入後もどこで業務プロセスのボトルネックが発生しているのかを把握し、To Be像(あるべき姿)を常に更新し続ける『BPRのライフサイクル』を提供すること。

②将来の予測が難しい世界において、予算と実績の比較にとどまらず、地政学、規制、サプライチェーンのリスクなど様々な仮説を立ててシミュレーションできる『高度な意思決定』を実現できること。

③バックオフィスのみではなく、サプライチェーンやバリューチェーン、市場全体につながるコネクティビティまで含めた『エンド・ツー・エンドの業務プロセスおよびデータ』をサポートすること。

これらが実現してこそ、変化に柔軟に対応しながら、成長を持続できるようになるのです」(堀川氏)

データが
「ワンファクト・ワンプレース」に
集約される環境が不可欠

ERPを「変革の基盤」として再定義する上で、最初のステップとなるのはオンプレミスからクラウドへの移行である。

社内に閉じた状態で、業務プロセスが固定化されてしまうオンプレミスのERPは、変化に柔軟に対応できない。その点、クラウドERPは、時代の変化やテクノロジーの進化に合わせて機能をアップデートし続けることができ、常にその時点で最善の業務プロセスに刷新できる。変化の激しい時代において、クラウドERPの選択は、もはや必然だと言えるだろう。

ただし、このメリットを享受するには、ERPを常にアップデートしやすい状態に保っておくことが不可欠だ。自社の強みをなるべく残そうとして、標準機能に過分なカスタマイズ(追加開発)を施すと、新しい機能がスムーズに取り込めなくなる。

「そうした問題を回避するため、SAPはシステムの中核機能(コア)のカスタマイズを最小限に抑え、標準機能を最大限に活用する『クリーンコア』という運用戦略をお客様に提唱しています。追加する機能はコアから分離した状態で開発し、新しい機能やアップデートを取り込みやすくするための戦略です」と堀川氏は説明する。

もう1つ、堀川氏がクラウドERPを選定する上で重要なポイントとして挙げるのは、社内外のありとあらゆるデータを柔軟に取り込み、一元化して、AIに正しく分析させられる製品であるかどうかだ。これが、未来に関する様々なシミュレーションを精度高く行わせるための大前提となるからである。

「AIの分析精度を高めるためには、業務に関するあらゆるデータが『ワンファクト・ワンプレース(1つの事実・1つの場所)』に集約され、常に正しい状態で分析できる環境を整えなければなりません。当社が提供する『SAP Business Suite』は、それが実現できる数少ないクラウドERPスイートの一つであると自信を持って言えます。財務、人事、製造、調達、CRM(顧客関係管理)、SCM(サプライチェーン管理)など、業務運営に必要なシステム機能がすべて統合され、AIに分析させるデータも集約できるからです」(堀川氏)

「和魂洋才」で変革を支え、
最も信頼されるパートナーとなる

堀川氏によると、SAPのクラウドERPの強みは「基幹業務、データ、AI、企業間連携までを1つの文脈でつなげられること」だという。

「『SAP Business Suite』は、アプリケーション・データ・AIの好循環が回るように設計されています。標準化されたアプリケーションによる業務で正しいデータが蓄積され、それをAIが分析して、より良い業務プロセスを提案。それによって改善した業務に基づくデータも蓄積され、そのデータを基にAIがさらなる提案を行うという好循環が回るようになっているのです。この“フライホイール効果”で、業務プロセスを永続的に進化できるようにすることが、SAPのクラウドERPの大きな特徴だと言えます」(堀川氏)

アプリケーション×データ×AIの好循環
(フライホイール効果)

図版1

SAPが提供するクラウドERPスイートの「SAP Business Suite」は、アプリケーション・データ・AIの好循環が回るように設計されている。この「フライホイール効果」によって、どんなに経営環境が変わろうと、それに合わせた最適な業務プロセスへのカイゼンが継続できるようになるのが大きな特徴だ

さらに、「SAP Business Suite」には、社内のみならず、社外の様々なデータを取り込んで一元化できる「SAP Business Data Cloud」、サプライヤーのシステムとも連携して、サプライチェーンおよびバリューチェーン全体で業務プロセスの最適化を図る「SAP Business Network」もネイティブ統合されている。

「地政学リスクの高まりや規制・ルールの変更などは、サプライヤーにも大きな影響を与えており、もはや自社の業務を最適化するだけでは、真の競争力を生み出すことは困難になっています。調達や委託生産、物流などバリューチェーン全体での最適化が求められており、『SAP Business Suite』はそのニーズにお応えできる数少ない製品であると自負しています」(堀川氏)

時代ごと、業界ごとのニーズの変化や、AIの急速な進化を先取りしながら、SAPのクラウドERPも進化を遂げ続けている。

「当面の方向性としては、AI・データ・アプリケーションの統合がさらに深まっていきます。AIの存在感はこれまで以上に高まり、単なる相談相手ではなく、複数のプロセスをまたいで自律的に業務を支援する存在となる予定です。今年5月に開催されるSAP Sapphire(SAPの年次イベント)では、その一端がお披露目できるはずですので、どうぞご期待ください」と堀川氏は語る。

新社長・堀川氏の指揮の下で動き出した新生SAPジャパンは、「和魂洋才」で顧客の変革を支え、日本で最も信頼されるパートナーとなることを目指している。

「日本企業が得意とするカイゼンの力に、データとAIを掛け合わせることで、日本経済の発展を陰ながらご支援させていただきます。ぜひ一緒に頑張っていきましょう」(堀川氏)

SAP Business Suite:
企業変革を支援する5つの重点領域

図版2

「SAP Business Suite」には、財務、人事、製造、調達、CRM(顧客関係管理)、SCM(サプライチェーン管理)など、業務運営に必要なERPがすべて統合されている。すべての業務をAIアシスタントの「Joule(ジュール)」が支援し、業種や業務に深く根差した知見に基づいて、最適なオペレーションを提案する

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