中川 智博氏 蟻川 元氏
Fit to Standardで連結仕訳の作業工数を9割以上削減

ビジネスの成長とAI活用を見据え、拡張性や柔軟なシステム連携を重視
8カ月という短期間で強力な経営基盤を手にしたリオ・ホールディングス

Fit to Standard+クリーンコア・アプローチで新しい会計基盤を構築

新たな基幹システムは「SAP Cloud ERP」を中核に据えた構成とした。連結決算には対応する「SAP S/4HANA for Group Reporting」、システム連携プラットフォームの「SAP Integration Suite」、そしてアプリケーション拡張やデータ活用の基盤として「SAP Business Technology Platform(SAP BTP)」を組み合わせている。

図1

この基幹システムの構築に際しては、当初の計画通り、業務をSAPの標準機能に合わせるFit to Standardを徹底した。個別性の高い各種工事の発注管理および計上申請フローは周辺システムで吸収し、APIを用いてSAPに連携する仕組みを構築。また、既存の物件賃貸管理システム等とのデータ連携にはSAP Integration Suiteを活用した。

要件を決めてから、およそ8カ月後の2025年8月に稼働を開始。旧システムからの切り替えを行った。

「新年度で切り替えようとすると旧システムで本決算を進めながら新システムに対応しなければならず、経理担当者の負担が大きくなってしまいます。監査法人とも相談の上、期中の8月にシステムの切り替えを行いました。2025年8月の月次からSAPの新システムで処理しています」と蟻川氏は振り返る。実務に詳しい同氏ならではの視点と言えよう。

機能面でとくに力を入れた点が、連結決算処理の効率化だったという。ホテル事業などの子会社だけではなく、特定の不動産物件だけを管理する資産管理法人も多く、連結対象子会社は100社以上に及ぶからだ。

「たとえば固定資産に関して、単体の帳簿、税務申告用の帳簿、連結での時価評価額の帳簿など、複数の帳簿を管理しなければなりません。以前は表計算ソフトを使って手作業で管理し、連結での償却を計算して入力する、といった作業が必要でした」(蟻川氏)

今回のシステム刷新では、SAP Cloud ERPが持つ固定資産台帳の並行管理機能を使い、単体での償却費、連結での償却費、および税務調整の金額を事前に設定したマスタ情報を用いてすべて自動計算するように工夫したという。また、SAP S/4HANA for Group Reportingが有する連結自動組替機能を活用し、指定した条件を満たす単体元帳の仕訳データを連結上で自動振替するような工夫も盛り込んだ。

「膨大な固定資産明細や取引先別の組み換えなど、データ移行は件数の多さに加えSAP側の複数元帳へ正しく数値を反映させる必要があり、難易度の高い作業となりました。それでも、フォーティエンスコンサルティングのサポートを受けながら、業務をSAPの標準機能に合わせるFit to Standardを徹底し、SAP Cloud ERPのコアはクリーンに保ったまま、どうしてもカスタマイズが必要な部分はSAP Cloud ERPの外部に拡張する “クリーンコア・アプローチ”によって、新しい経営基盤を構築することができました」(蟻川氏)

図2

SAP S/4HANA for Group Reportingで実現される連結機能。単体会計のデータを連結会計のデータとして使用できるため、データ収集などの工数を大幅に削減できる

連結仕訳作業や消し込み作業の工数を9割以上削減

SAPを導入した効果は、2025会計年度(2025年1月~12月)の決算処理のときに如実に現れた。

「連結仕訳の起票が自動化されたことで、これまでの手作業による連結仕訳作業の9割以上が削減されました。また、従来は会社ごとに個別入力していた仕訳についても、SAPでは複数会社分の仕訳データを一括で取り込めるため、業務処理単位でグループ各社の作業を一元化できるようになりました。そのほか、不動産賃貸ビジネスでは多数のテナントに対する債権管理にも多くの工数を要しますが、フォーティエンスコンサルティングと試行錯誤しながら組み込んだ自動消し込み機能のおかげで、会計システム側での処理は大半が自動化されました。社内でも大きな効果がでてきています」と蟻川氏はその一端を述べる。

また、連結会計機能を持つSAP S/4HANA for Group Reportingの導入と前述のような様々な工夫によって、単体決算処理を進めていくだけで連結決算処理もほぼ同時に終わるようになったことも大きな成果として挙げる。

また、同社はAIの活用にも積極的だ。今後、SAPのAIアシスタントとAIエージェントをまとめて実行する「SAP Joule」を使って、SAP BTP上で利用するプログラムの開発支援や業務データ分析の高度化などにも取り組んでいく考えだ。

SAPの導入プロジェクトが一段落した今、中川氏は「SAPというグローバルスタンダードな基盤が入りましたので、周辺のシステムと連携させながら、どうビジネスの成長につなげていくか、これからがとても楽しみです」と語る。

「我々のような規模の企業にとっては大きなIT投資ではありますが、やはりこれからはAIを活用していかないとビジネスとして難しくなっていくことは確実です。いずれ経営を次の世代に渡したときのことを含めて、SAPで体制を整えることができたと考えています」(中川氏)

SAPという強力な基盤を手にしたリオ・ホールディングスが、さらなる成長を見据えて新たな一歩を歩み始めた。

リオ・ホールディングスは、Fit to Standardによるクリーンコア・アプローチの採用、会計処理や決算処理の大幅な効率化、他のシステムとの連携性の強化、AI活用に向けた基盤づくりなどが評価され、2026年6月に「SAP Japan Customer Award 2025」を受賞した。また、フォーティエンスコンサルティングは「SAP Appreciation for Partner Excellence 2026」において「SAP Project Excellence」を受賞している。

今回のリオ・ホールディングスの取り組みが示すように、業務を標準化するFit to Standardの考え方や、クリーンコアを保ちながら拡張性を確保するアーキテクチャは、これからの企業成長を支える重要な要素となっている。また、8カ月という短期間での稼働開始や、連結決算の大幅な効率化、さらにはAI活用への取り組みは、クラウドERPの価値を如実に示すものと言える。

こうした価値を、中堅中小企業向けに体系化したSAP Cloud ERPのオファリングが「SAP GROW」である。SAP GROWは、AIを活用したクラウドERPを基盤に、財務・人事・サプライチェーンといった基幹業務を統合し、企業の効率化と持続的な成長を支援する。業界のベストプラクティスに基づく標準化アプローチを採用することで、短期間での立ち上げと、高い生産性の両立を実現できる点が特長だ。

さらに、SAP GROWは将来的な事業拡大やシステム連携、AI活用を見据えた柔軟な拡張性を備えている。外部システムとの連携やAIによる業務自動化、データ活用による迅速な意思決定といった取り組みを段階的に進めることが可能となり、企業は変化する市場環境の中でも競争力を高め続けることができる。

ビジネスの成長とデジタル化、さらにはAI活用を見据えた経営基盤の構築を検討する企業にとって、SAP GROWはその第一歩を力強く支える選択肢と言えるだろう。

SAPの最新クラウドERPソリューション「SAP GROW」の詳細はこちら SAPサイト

https://www.sap.com/japan/index.html

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