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変化を力に変える、世界標準への転換 売上高14億円企業が実現したSAPのERP導入・競争力強化の3年間の軌跡

医療機器用の極小部品を精密加工する西田精機(本社・福島県西会津町)は、スムーズな事業承継と“100年企業”に向けた永続的成長を実現するため、SAPのERPを基盤とする共同利用型ERPプラットフォーム「CMEs」を導入。社長の「勘と経験」に頼る経営から、リアルタイムな数値に基づいて判断、行動できるデータドリブン経営へとかじを切った。福島の売上高14億円規模の中小企業が、世界標準への転換の道を歩んでいる。

高精度な精密加工技術で極小部品を製造

「もともとは、東京の小さな町工場でした。事業のさらなる発展・成長を見据えて、社長の決断で本社を東京から西会津町へ移したのが6年前。新領域への挑戦やグローバル市場の開拓などで飛躍的な成長を目指していますが、ようやくそのための体制が整ってきました」

このように語るのは、福島県西会津町に本社を置く精密加工メーカー、西田精機の常務取締役、西田 真氏である。

1949年に創業し、70年以上の歴史を持つ西田精機は、ある大手医療機器メーカーから極小部品の精密加工を請け負ってきた。同社は最小径0.3mmの小さな金属部品を、誤差わずか1/1000mm以下という圧倒的な精度で加工できる技術を持つ。「高精度な精密加工技術です」と話す西田氏の言葉は、決して誇張ではない。

西田精機 常務取締役 西田 真

西田精機
常務取締役

西田 真 氏

その優れた加工技術は発注元の医療機器メーカーから高く評価され、受注する品目の数量は年を追うごとに増えていった。当然、家族経営の町工場では請け負い切れなくなり、1970年代に西会津町に第2工場を設置。2014年には会津若松市に第3工場を設けた。2020年の本社移転に伴い、東京・板橋区にあった工場は閉鎖。現在は西会津の本社工場と会津若松工場の2拠点で約200人が働く。量産品目は約2500種、月産約500万個で、売上高は約17億円に上る(2025年度実績)。

受注が増え続けたもう1つの理由は、「どんな注文にも確実に対応する」という同社の姿勢だ。

「お客様にご迷惑をおかけしないように、常に十分な在庫を確保し、急な注文があってもすぐにお届けできる体制を整えてきました。『この時期に、これぐらい注文が入りそうだ』という先行きをあらかじめ予想し、それに合わせて多めに部品を作っておくのです。おかげで、注文を受けても納品が間に合わないということはなく、お客様から高い信頼を頂いてきました」(西田氏)

こうした姿勢から、いつしか西田精機では顧客への安定供給を最優先し、急な需要変動にも対応できるよう十分な在庫を確保しておくという考え方が定着し、「西田スタンダード」と呼ばれる不文律となった。

「西田スタンダード」から「グローバルスタンダード」へ転換

在庫を十分に確保することで、タイムリーな納品を保証するという「西田スタンダード」が、西田精機のこれまでの発展を支えてきたことは間違いない。だが、同社代表取締役社長の西田 高氏は「このままでいいのか?」と疑問を感じるようになったという。

「当社は長年、特定の主要顧客との深い取引関係の中で成長してきました。そのお客様の信頼に応えるために確立したのが『西田スタンダード』だったのです。今後、会社をさらに発展させていくためには、世界中で新しいお客様を開拓し、これまでチャレンジしたことのない領域にも果敢に挑んでいかなければならない。

そのためには『西田スタンダード』から転換し、世界でのビジネスに対応できる『グローバルスタンダード』を取り入れるべきではないかと考えたのです」と、西田 真氏は社長の想いを代弁する。

そしてもう1つ、会社のさらなる発展を妨げかねない要素として、西田 高氏が懸念していたことがある。事業承継だ。

同社の受注予測や生産計画作りなどは、すべて社長の西田 高氏が、長年の「勘と経験」に頼って行っていた。つまり、重要な経営判断や需要予測が社長個人の長年の経験に大きく依存していたため、その知見を組織の資産として継承していく必要があった。

「裏を返せば、事業承継をしたら、当社がこれまで培ってきた強みが消滅してしまう。社長の知見を次世代へ継承し、組織として活用できる仕組みにしていくことが課題になっていました。我々には “100年企業”を目指して会社を発展させ続けたいという強い想いがあり、それを実現するためには、これまでのやり方を抜本的に変える必要があると考えたのです」(西田 真氏)

そんな折、西田精機が出合ったのがSAPである。同社が参加する会津地方の産官学フォーラムで、社長の西田 高氏がインダストリー4.0の考え方と、SAP S/4HANAを基盤とした中小企業向け共同利用型ERPプラットフォーム「CMEs (Connected Manufacturing Enterprises)」の構想を聞いたことがERP導入・経営変革を考えるきっかけになった。

「社長は、SAPは大企業向けに製品・ソリューションを提供している会社だ、という印象を抱いていたようですが、中小企業向けのERPも提供していると知って興味を持ったそうです」と西田 真氏は明かす。

「これを使ってデータドリブン経営を実践すれば、『勘と経験』への依存から脱却し、スムーズな事業承継や、永続的な成長が実現できるのではないか」

そう考えた社長の西田 高氏は、2020年9月、CMEsの導入を決断。「西田スタンダード」を、世界標準のERPに合わせて「グローバルスタンダード」に転換する経営変革が始まった。

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