「現場起点のスピード経営」Case Study GENDA GiGO Entertainment
GENDA GiGO Entertainmentが仕掛けた“引き算のDX”

7000人分のエラー対応を「8割削減し、実質的なチェック業務をゼロにした」設計思想

「ASOBIで世界を熱くする」をビジョンに掲げ、アミューズメント施設市場で国内トップクラスのシェアを誇るGENDA GiGO Entertainment。新規出店やM&Aによる急拡大で店舗は400を超え、アルバイトスタッフは約7000人に達した。店舗は土日も夜間も稼働するが、本社の人事部はそうではない。現場の申請業務が本社の営業時間に縛られる従来の仕組みでは、成長のスピードに追いつけなくなっていた。そこで同社が踏み切ったのが、ある“引き算”だ。人がチェックしなくてもミスが起きない「チェックレス」の仕組みにより、月500件発生していたエラー対応を8割削減。人事部の工数を大幅に解放した。この変革を支えた「クラウドハウス」の導入経緯と、現場・人事部・経営に広がった効果について、キーパーソンに話を聞いた。

毎日繰り返される
“現場と本社の終わらない往復”

 GENDA GiGO Entertainment 人事部には、かつて“毎朝のルーティン”があった。前日に届いた入力エラーと差し戻しの確認・対応だ。月にして約500件。人事企画課の谷中 沙枝子氏は「人事部の担当者2人が、毎日3時間をエラーチェックと差し戻しに費やしていました」と振り返る。
株式会社GENDA GiGO Entertainment 管理本部 人事部 人事企画課 谷中 沙枝子氏
株式会社GENDA GiGO Entertainment
管理本部 人事部
人事企画課
谷中 沙枝子
 「ASOBIで世界を熱くする」を掲げる同社の主力は、いわゆるゲームセンターの事業だ。かつての「暗い」「怖い」というイメージは過去のもの。今は明るく清潔な店内に、クレーンゲームや音楽ゲーム、プリントシール機など多彩な機種が並び、家族連れからインバウンド客まで幅広い層が訪れる。安全・安心に配慮された、“楽しさの総量を上げていく”店舗運営も魅力を高めている。

 この店舗運営を現場で支えているのが大勢のアルバイトスタッフだ。遊戯の説明や機器の故障対応、景品の補充など、担う業務は多岐にわたり、1店舗あたり10~40人、大型店では100人にもなる。その約7000人の労務情報は、各店舗の店長が人事労務サービスに入力して登録することになっていた。

 しかし、この現場登録の仕組みがスムーズに回っていなかった。同社は2022年に、市場で広く採用されていたSaaS型の人事労務サービスを導入したのだが、ペーパーレスは実現できても、現場と人事部の業務そのものは効率化されなかった。画面のカスタマイズ性が低く、同社の手続きには関係のない項目まで常に表示される状態だった。

 その結果、人事部は日々のエラー対応に追われ、スタッフの契約期間や時給額が正しく反映されない事態が頻発した。一時は契約切れのまま勤務を続けているスタッフが約600人に上り、法的リスクを回避するために契約更新ルールそのものの見直しを迫られた。時給の未反映を本人からの連絡で初めて知ることすらあったという。

 「この状態ではアルバイトスタッフが気持ちよく働くことはできません。そもそも店長の仕事は、採用面接やスタッフ教育、シフト作成、接客と、山ほどあります。主はお客様サービスや店舗マネジメントであり、スタッフの情報の代行入力ではないのです」と同社の清水 広介氏は振り返る。
株式会社GENDA GiGO Entertainment 管理本部 人事部 人事企画課 課長 清水 広介氏
株式会社GENDA GiGO Entertainment
管理本部 人事部
人事企画課 課長
清水 広介

「チェックレス」――
間違えようがない仕組みをつくる

 清水氏が解決策として求めたことは明確だった。「店長がマニュアルを見なくても、間違えずに使える仕組み」――つまり、人がチェックせずともミスが起き得ない「チェックレス」の設計思想だ。

 この要件に応えたのが、Techouseの「CloudHouse(クラウドハウス)」である(図)。
図 クラウドハウス(CloudHouse) 一般的なSaaSは入力の正確性を人に委ねる。だから現場や人事の負担が大きく、ミスも生まれる。クラウドハウスは条件に応じた自動判定・算定や自動アラートなどのシステムがミスを防ぐ。「電子化したが効率的にならない」という課題は、システムの切り替えで解決する
 クラウドハウスを選定した理由について、清水氏は2点を挙げる。第一に、カスタマイズ性の高いパーツ群が用意されており、組み合わせるだけで自社の業務に合った仕組みを実現できること。第二に、導入から運用まで伴走するカスタマーサクセス体制が整っていることだ。

 「手続きごとに必要最低限の項目だけを表示し、不要な項目は最初から見せない。入力欄には二重三重の自動チェックを施せる。これだけで、入力ミスの大半は原理的に起きなくなります」と清水氏は語る。

 導入に当たっては、クラウドハウスのカスタマーサクセスが同社のオペレーション課題を棚卸しした上で、解決策を共に設計した。アルバイトの採用・契約更新・退職など手続きの種類ごとに必要な項目だけを並べた専用画面を構築。入力値の自動チェック、勤怠・給与計算システムとの自動連携も組み込み、従来は人の目と手で行っていた各種チェック作業を、仕組みそのものに埋め込んでいった。

 さらに「チェックレス」の設計思想は、アルバイトスタッフによるセルフ申請化まで実現した。入社手続きで必要となるマイナンバーや銀行口座情報の登録は、以前はスタッフに書類を記入してもらい、店長が代行入力していた。しかしクラウドハウスのスマートフォン画面であれば、ITに不慣れなスタッフでも迷わず操作でき、自動チェックによりミスも起こらない。

 「スタッフ本人が入力することで、店長の代行入力という、ミスを生みやすいプロセスそのものがなくなったのです」と谷中氏は説明する。実際、スタッフからは「スマートフォンで完結できるので楽」と好評で、住所変更などほかの手続きにもセルフ申請の範囲を広げつつある。

 手続きの進捗管理も大きく変わった。以前のサービスでは、雇用契約の画面を開いては締結状況を確認し、通勤申請の管理画面を開いては申請状況を確認する――システム化した書類の数だけ、結局このような画面切り替えが発生していた。

 しかしクラウドハウスでは、従業員一覧を開くだけで手続きの進捗パーセンテージが一目で分かる。マイナンバー管理についても、細かな権限設定とワークフローにより、多段階で承認者を設定でき、特権管理者だけがマイナンバーまで確認できるといった管理体制を容易に実現でき、セキュリティー上の懸念も解消された。
左は今回の取り組みに伴走したカスタマーサクセス シニアマネージャー 長崎 涼氏
左は今回の取り組みに伴走した
カスタマーサクセス シニアマネージャー 長崎 涼氏
 なお、一般的にシステム切り替えでは現場の混乱を伴うものだが、今回はほとんど問題もなく移行できたと清水氏は言う。

 「カスタマーサクセスの長崎さんが店長会にも出席し、操作説明や質疑応答に直接対応してくれました。『見れば分かる』画面設計と合わせて、店長の不安を事前に取り除けたことは大きかったと思います」

 リリース後の人事部への問い合わせもほとんどなかった。以前のサービスでは操作が分かりにくく、店長からの質問が日常的に発生していたことを考えると、大きな変化だ。

「他部署からのクレームが出ない」――
地味だが本当に凄いこと

 勤怠・給与計算システムとの連携が自動化されたことで、情報システム部門の負荷が大きく改善された。かつて日常業務となっていたエラー対応が消滅し、年末年始などの長期休暇中に人事部から要請されていたトラブル対応のための待機業務も完全に不要となったのだ。

 契約管理面では、自動通知の仕組みにより「契約期限のアラートがホーム画面とメールで届くので、更新対応の漏れがなくなった」と現場の店長からも好評だ。

 事業拡大に伴い店舗が増える中、新任の店長でも迷わずミスなく店舗運営できる点は大きい。入力や差し戻し対応に費やしていた時間を、接客や店舗の改善に振り向けられるようになったことは、顧客サービスの質にも直結している。

 清水氏は「多様な職種、勤務時間で多くの人が働いているのに、クラウドハウスを中心にスムーズに業務が回っている。様々なシステムの導入にかかわってきましたが、現場からクレームが出ないということは、当たり前のようでいて当たり前ではない。地味ですが本当に凄いことだと思っています」と語る。

 「一般的なSaaSだと、提案段階では『できる、できる』といっていたのに、いざ導入してみるとできないことだらけ。しかしクラウドハウスの場合は、『そんなのできるの?』と感じるような機能まで、さらに期待を超えてくるから驚きます(笑)」と、谷中氏も口をそろえる。

ルーティンとしての「チェック」が消え、
人事部は“攻め”に転じた

 現場のミスが消え、人事のチェックが消え、他部署からのクレームが消えた。こうして、人事部の業務マニュアルから1つの工程が消えた。「出勤したらまずエラーチェック」――毎朝2人が3時間をかけていたルーティンの工程は、チェックレス設計の実現によりその8割が削減された。残る例外対応もわずかとなり、マニュアルから「エラーチェック」の項目を削除できるほど、業務のあり方が激変した。

 守りに費やしていた時間を攻めに振り向けられるようになったことで、人事部への期待そのものが変わり始めている。

 同社は2026年2月に人事関連の組織体制を見直し、これまで分かれていた「労務管理」と「人材育成・成長支援」を担う組織を統合した。今後は社員・アルバイトスタッフの教育や活躍支援に向けた、攻めの取り組みが一層重要になるという。

 「そもそも以前は、新しいことにチャレンジするための時間やリソースがありませんでした。クラウドハウスによって“攻め”の時間を確保できたことは、経営戦略上でも大きなメリットだと思います」と清水氏は強調する。

 変化は社内の空気にも表れている。かつてはエラーの頻発で他部署から苦言を受けることも少なくなかった。それが今では、「リファラル採用の申請をクラウドハウスでシステム化できるのではないか」と気付いた採用課から相談があり、リファラル申請のシステム化も実現した。「ほかの課から怒られる側だった人事部が、今では『うちにも使わせてほしい』と相談される側になりました」と谷中氏は笑う。

 アルバイトスタッフだけでなく正社員側もまだまだ紙ベースの業務は多く残っており、清水氏は「人数も増えている今が、次の導入タイミングだと考えています」と明かす。

 GiGOグループではゲームセンター以外にもボウリング場やカフェなど様々なアミューズメント施設を運営している。アルバイトスタッフの管理が課題になりやすいこれらの事業でも、今回の手法が共有されれば一層の効果拡大が期待できるだろう。

 実際、既にGiGOグループ内の2社がクラウドハウスを導入している。「グループ企業から相談があった際には、積極的に情報を共有していきます」と清水氏は言う。

 「引き算のDX」によって、店舗・人事部の業務効率化と顧客サービスの向上を両立する体制を確立したGENDA GiGO Entertainment。現場起点のスピード経営を加速させる同社の今後に注目だ。
お問い合わせ
株式会社Techouse(CloudHouse) サービスページ:
https://jp.cloud-house.com/

お問い合わせフォーム:
https://jp.cloud-house.com/contact/