
帳票が止まれば、業務も止まる30年で築いた、メーカーとSIerの信頼
製品は、お客さまの声を生かすことで進化する。メーカーにとって難しいのは、現場のニーズをいかに把握するか。ウイングアークのデジタル帳票基盤SVFにおいて、日立ソリューションズの存在は単なるパートナーではない。メーカーとSIerの垣根を超え、共に新たな価値を創出してきた。日立ソリューションズ 代表取締役 取締役社長 森田英嗣氏とウイングアーク 取締役会長 内野弘幸氏が、30年前の出会いから現在までを振り返る。「SVFが変わったこと、変わらなかったこと」を通じて、企業活動を支える帳票の過去から現在、未来を読み解く。
お客さまから
帳票出力基盤SVFを逆提案
――日立ソリューションズとウイングアークのパートナー関係は30年にわたるとお聞きしています。提供開始30周年のSVFの歴史とも重なります。最初の出会いについてお聞かせください。
森田 1997年に、私は日立製作所でプロジェクトマネージャーとして医薬品メーカーのERPパッケージ(SAP R/3)導入プロジェクトに携わっていました。国内におけるSAP R/3導入では先行事例の一つだったと思います。当時、国際競争の激化、薬事法並びに国際レギュレーションへの対応、研究開発投資の拡大など、医薬品製造業界を取り巻く環境は大きく変化していました。それに応え成長を続けるため、業務効率化やシステム投資の最適化を目的にERP導入への関心が高まっていました。基幹システムの構築とともに、周辺システムとの連携を進める過程で、お客さまから帳票出力基盤SVFの逆提案がありました。これが私とSVF、ウイングアークの内野さんとの出会いでした。
株式会社日立ソリューションズ
代表取締役 取締役社長
森田 英嗣 氏
内野 当時、お客さまではスプール機能をSVF採用の重要な要件としていました。スプール機能は、ディスク上に帳票データを保存しておき、プレビューでいつでも見ることができるようにしておくとともに、部署によって帳票を印刷する、印刷しないという制御を行うものです。
森田 お客さまの現場では工場の中で出てくる帳票に合わせて仕事をしていました。そのため、部署に合わせた印刷の制御が必要だったのです。
内野 単なる機能拡張ではなく、業務の要望に合わせて製品の機能をつくったというかたちでした。他のお客さまにも共通のニーズだったことから挑戦したのですが、実現に向けた道のりは険しかったです。結果的に、スプール機能はSVFが帳票基盤市場でシェアを獲得していく差別化要因となりました。
森田 私たちもSAP R/3の周辺機能のテンプレート化を進める中で、スプール機能を持つSVFと連携したソリューションを商品化し売上を上げました。
内野 私も森田さんが手掛けていた医薬品メーカーのERP導入プロジェクトに携わった後、そこで開発したものをベースに「SVF for SAP R/3」をリリースしました。国内のSAPユーザー急増に伴い、SVFの導入も拡大しました。今のSVFの原点は、日立との最初の出会いにあったと思っています。
タイムスタンプでAI時代の帳票に
求められる真正性を証明
――最初の出会いから、どのように関係が続いていくのでしょうか?
森田 1990年代から2000年代にかけて、メインフレームからのダウンサイジングやオープン化が進み、多くの企業で基幹システム刷新が行われました。ITが変化しても、帳票は取引先に対し、請求書や納品書などの業務結果を正確に伝える「最終成果物」、時には「証憑」として、企業活動の信頼を支える役割を果たしました。
SVFは、基幹システムのデータを、日本独自の商習慣や現場要件に合わせ、正確かつ安定的に出力できる基盤としてお客さまから高い評価を得ました。また帳票設計や仕組みの標準化は、システム全体の効率化、品質向上にも貢献したと思います。2000年代前半に、日立ソリューションズはSAPにこだわらずSVFの取り扱いをはじめました。SVFが国内帳票基盤のデファクトに近いポジションで広がる中、日立ソリューションズはパートナーのSIerとしてお客さまの課題を解決し拡販していきました。
内野 帳票が出ないと業務が止まってしまいます。そう考えると、帳票はミッションクリティカル領域です。SVFではオープン化に応えるべく、スプール機能も含めて完成度や信頼性を高めるために改善を行いました。UNIXでもしっかり動くように、開発言語もC言語からJavaに変えました。また、2000年代にはインターネット環境で業務系ソフトウエアを動かすことがITトレンドとなりました。日立のアプリケーションサーバCosminexus(コズミネクサス)などと連携し、SVFはPDFを生成するエンジンの役割を担いはじめました。
ウイングアーク1st株式会社
取締役会長
内野 弘幸 氏
森田 現在では、クラウド化や電子取引、ペーパーレス化、AI活用などにより帳票に求められる役割も変化しています。これまでは業務結果の出力が中心でしたが、DXの進展に伴い帳票は単なる紙やPDFではなく、業務プロセスやデータをつなぐ役割を担う重要な存在です。
内野 SVFは帳票をプリンターで出すというイメージが強いと思いますが、今やPDF生成エンジンの売上がメインです。電子帳簿保存法対応はもとより、最近ではAIを使って帳票データを活用できるよう機能を強化しています。また、帳票は企業間取引を証明するものです。その真正性を担保するためにタイムスタンプ技術を研究し、1秒間に1000文書以上にタイムスタンプを付与できるデジタルトラストサービス「Trustee(トラスティ)」を2025年8月にリリースしました。
森田 帳票にタイムスタンプを付与するという機能を開発するきっかけは何でしたか?
内野 きっかけは、生成AIが領収書写真の金額を簡単に改ざんできるというニュースの社会的インパクトの大きさでした。目視では、改ざんされたかどうかは分かりません。SVFでは、Trusteeと連携し帳票作成時にタイムスタンプを押すことができます。安心安全な取引を支える基盤として、タイムスタンプの意義を啓発し、普及に努めていきたいと思います。
森田 AIやDXが進展しても、帳票がビジネスにおいて提供するべき価値は「信頼」であるという本質は変わることがないと考えています。帳票は、企業間取引や会計・監査、法令対応、社内取引など、企業活動の根幹に関わる場面で利用されます。電子文書交換における国際標準規格Peppolをはじめとする、デジタル文書流通基盤の普及に伴い、「Trustee」のように帳票の信頼性を担保する仕組みはますます重要になると思います。日立では、帳票の電子化、ペーパーレス化にとどまらず、業務プロセス全体の効率化、データ活用、ガバナンス強化を通じてお客さまの持続的成長に貢献していきたいと考えています。
メーカーとSIerの関係を超えて
顧客価値を創出するパートナー
――両社の長期的な信頼関係構築において、大切にしてきた姿勢や考え方をお聞かせください。
森田 この30年間、日立ソリューションズとウイングアークは製品、技術、サポート、プロモーションなど幅広い領域で連携し事業を拡大するとともに、メーカーとSIerの関係を超え、ともに業務課題を解決する重要なパートナーとして歩んできました。日々の案件対応やトラブル時の支援、勉強会、情報共有など、一つひとつの積み重ねが信頼関係の基盤となっています。帳票領域はお客さまの業務に深く関わるため、困った時にすぐ相談できること、最後まで一緒に考え抜くことが重要です。これを実践し、お客さまの業務課題を起点に提案や支援を続けてきたことが、長期的な関係が続く大きな理由だと考えています。
内野 日立ソリューションズでは、ウイングアークをプロジェクトの一員として接していただいており、お客さま先へ同行することもあります。メーカーとSIerの垣根を超えて一緒にお客さまの課題を解決するという一体感は得難いものだと感じています。
森田 2025年4月より代表取締役社長として経営全般を担当していますが、日立ソリューションズには、「パートナーと一緒にやろう」というスタンスが強くあると思います。また、日本発のメーカーを応援したいという雰囲気も社内にあります。その代表格がウイングアークです。メーカーとSIerという立場の違いはあっても、目指すゴールはお客さまの成功です。対等な立場で前向きに議論し続けてきたことが、30年にわたる信頼関係を支えてきました。今後もさらにレベルを上げた協力関係を築いていきたいと思います。
内野 日立ソリューションズは、SVFをはじめとするウイングアーク製品の可能性を一緒に拓いていただける大切なパートナーです。DX、AX(AIトランスフォーメーション)がさらに進展していく中で、国内企業や社会の発展に共に寄与していきたいと思います。
森田 最初の出会いの後、内野さんとはしばらく仕事をご一緒する機会がありませんでした。SVF30周年記念企画として再会し、当時を振り返ることができたことを大変うれしく思っています。
内野 30年が経ちましたが、今日お話しして当時を思い出しました。森田さんと一緒に仕事をしたことは、SVFはもとより私にとっても貴重な財産だったと改めて思いました。本日はありがとうございました。
※掲載情報は2026年9月時点のものです。




