横河電機株式会社 取締役 代表執行役社長 重野 邦正氏
PROFILE
重野邦正(しげの・くにまさ)
1968年生まれ。九州工業大卒。1991年、横河電機株式会社入社。主に海外事業(中東・アフリカ地域)で経験を積み、現地法人社長や統括代表を歴任。2024年4月、同社執行役常務デジタルソリューション統括本部長。2025年4月より現職。
技術のYOKOGAWAとして
価値を提供
信頼されるパートナーになる
顧客主義、現場主義を貫く
中東で女性エンジチームを発足
1991年に新卒で横河電機に入社し、技術職としてスタートアップ部門で国内外のプラント立ち上げに携わりました。プラントの安全・安心を確保するため、皆さん真剣です。数ある現場の中でも、あるプラントでの立ち上げは特に印象に残っています。緊張感に満ちた現場でしたが、プラントが初めて稼働した瞬間は歓声が上がり感動に包まれました。厳しかったサイトマネジャーの目にも涙があふれていました。あの光景は今でも忘れられません。このときの達成感が、私の仕事の原点であり原動力です。
仕事で訪れた国は27カ国。2007年からは14年間、中東・アフリカなどを担当しました。当時、女性の社会進出が進んでいなかったサウジアラビアで、当社は女性のエンジニアリングチームを発足。採用した社員は今でも現地で活躍し続けています。
中東は多様な国籍の人々が集まっており、10カ国以上のスタッフとチームで仕事を進めていく必要がありました。言語や文化の違いによる苦労も多々ありましたが、「当社はお客様にどんな価値を提供できるのか」という1点においては、分かり合うことができたのです。顧客価値の追求は共通言語であることを、海外経験で身を持って実感しました。2025年4月に社長に就任してからも、思いは変わりません。当社はお客様の信頼を得て、お客様の価値を最大化できる「トラステッドパートナー」を目指しています。
自律制御AIをプラントに実装し
持続可能社会と顧客の成長を支援
横河電機は1915年、電気計器研究所としてスタートし、以来110年にわたり技術を磨いてきました。OT(オペレーショナルテクノロジー)領域のデータ計測と生産制御を強みとし、売り上げ5,624億円のうち9割超が制御事業、海外比率は約7割です。日本に続き、中東やアジアの割合が大きく、近年ではインドも伸びています。
「制御」の技術は、石油精製、石油化学、高機能化学、繊維、鉄鋼、医薬、食品、水など幅広い領域で活用され、高い安全性が求められます。この分野において、当社の技術はお客様から大きな信頼を得ていると自負しています。
特に今注力しているのが、50年の歴史を持つ当社の制御システム「CENTUM(センタム)」にAIを統合した、自律制御AI(注1)ソリューションです。人手不足や技術伝承、作業効率化、環境負荷軽減といった課題に直面するお客様に対して、プラントの既存設備を生かしながら安全かつ定量的成果をもたらすものです。
2022年にENEOSマテリアルの化学プラントに世界で初めて(注2)自律制御AIを実装。約1年の安定稼働やCO2排出量40%削減などを受け正式採用されました。これまで約4年間、安定稼働しています。
25年にはサウジアラビアの総合エネルギー・化学会社アラムコのガスプラントに相互に連携する複数の自律制御AIを導入。アミンや蒸気の使用量を10~15%、電力使用量を約5%、手動介入も大幅に減らすことができました。
当社が自律制御AIソリューションを提供できるのは、プロセスオートメーション分野における半世紀以上の経験と知識、システムやシミュレータ、安全確保などのノウハウ、そしてお客様と課題解決のための新しい価値を共創していく姿勢があるからです。自律制御は今後さらに広がっていくと考えています。
「技術」にこだわりながら
グローバルなSCMにも取り組む
横河電機は「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」というパーパスを掲げています。前述した「測る力」に加えて、「つなぐ力」とは、価値ある情報を結び付け、当社が企業と企業、産業と産業の結束点となり、価値を共鳴させていくことを意味しています。
12カ国に17工場を持ち、約4,000名が働いています。DXで各国の営業、生産、物流とエンジニアリングを1つのシステムでつなぎ、キャッシュフロー改善や納期回答の精度向上などサプライチェーンを全体最適化していることが当社の大きな強みです。また、ローカル製造と集中生産とを組み合わせ、競争力強化やBCP(事業継続計画)にも取り組んでいます。
おかげさまで業績は伸びています。事業成長だけでなく、社会貢献との両立が当社に期待されていることであり、それを実現してこそ真の「トラステッドパートナー」になれるのだと考えています。
2025年にはサウジアラビアの国家プロジェクト「グリーン・リヤド」の首都インフラを統合管理するシステム、ソリューション、サービスを受注しました。緑化を通じて、住みやすく、健康的で持続可能な生活の実現を目的にしたプロジェクトです。このような大規模で意義深い都市の変革プロジェクトに貢献できることを誇りに思います。
再生可能エネルギー分野では、監視ソリューションを提供する独 バックス・エナジーなど3社をM&Aしました。発電所を資産と捉え発電パフォーマンス最大化など経営・財務的な視点からも支援していきます。
加えて、当社の強みの一つである「測る」技術は、深海から宇宙まで幅広い領域で活用されています。南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)もその一例です。
当社を支える最大のコア・コンピタンスは、やはり「技術」です。今後も技術にこだわり、「横河電機の技術はすばらしい」とお客様に思っていただける会社であり続けたい。技術力と現場力で、サステナブルな未来をリードしていきます。
注1:自律制御AI(強化学習AI アルゴリズム FKDPP:Factorial Kernel Dynamic Policy
Programming)2018年に横河電機と奈良先端科学技術大学院大学が共同開発。第52回日本産業技術大賞で内閣総理大臣賞を受賞している
注2:化学プラントにおいて、AIが操作量を直接変更するものとして
記事中の肩書きやデータは公開時点の情報です




