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新商品・リニューアル5選 新商品・リニューアル5選

次々と登場する新商品やリニューアル商品の中で、消費者の心をつかむのはどんなプロダクトなのか。トレンドのスペシャリスト3人が、注目の5アイテムを徹底分析。実際に商品を試しながら、各社の工夫や挑戦、その背景にある消費トレンドをひもとき、ヒットを生む条件を探る。

ヒットを占う
スーツ選びを変えた定番商品から男性向けエチケットの新提案、リペア発想の唇ケアまで潜在ニーズを捉えた商品が続々

機能性とキチンと感を両立

毎日の装いを軽やかに

品田 英雄

勝俣 今回も魅力的な商品が出そろいましたね。さっそく見ていきましょう。まずは、青山商事の「みんなのスーツ※1」。僕たちも実際に着てみましたが、とにかく軽い。1万2980円という価格から想像していた以上に、見た目もしっかりしています。

能勢 カチッとした感じだけど、窮屈じゃない。新鮮な感覚です。

品田 ストレッチもよく効いていて、 “キチンと感”と“楽な着心地”が両立しているんですよね。

勝俣 これだけ機能的なのに、スーツらしく見えるのはなぜでしょう。

品田 ポイントは、立体縫製技術にあります。例えば「イセ込み縫製」は、長さの異なるパーツを組み合わせ、アイロンワークも駆使して立体感を出す技術。老舗ならではの職人技で、体になじむ3Dのシルエットを作っているんです。

能勢 そこがカジュアルジャケットとの違いですね。肩回りや下襟に立体感があって、本来のスーツらしいシルエットがきちんと出ている。だから着ると自然にピシッとして見えるんでしょうね。

勝俣 買い方も従来のスーツとはかなり違います。サイズ表記は「S・M・L」で、パンツも「裾上げ済み」だから、そのまま持ち帰ってすぐ着られる。

品田 これまでスーツを買うときに感じていたハードルをまとめて下げたことも、大きな支持につながったんだと思います。

勝俣 洋服の青山やSUIT SQUAREの店舗での購入はもちろん、一度自分のサイズが分かれば、次からはECでも買いやすい。商品だけでなく、購入体験そのものを変えているわけですね。

品田 しかもこのスーツ、自宅で丸洗いできるんですよ。買った後のお手入れまで手軽なのはうれしいですね。

勝俣 手ごろな価格帯に確かな品質を持ち込み、手間まで減らした。今の消費者が求める「お手ごろだけど本物感も欲しい」に応えたことで、シリーズは発売から約 10カ月で累計11万着を突破しました。

能勢 男女とも、働く服のカジュアル化や個性化が進みましたが、これからは逆にスーツを着ることが差別化になる場面も増えそうですね。

勝俣 「今日は何を着ていこう」と悩まずに済むのもスーツの魅力です。働く人の制服として、再びその価値が見直される可能性もあります。

品田 「みんなのスーツ」という名前の通り、若い人だけでなく、僕らが着てもちゃんと似合う。いいものに出合いましたよ。

※1 洋服の青山、SUIT SQUAREの店舗・オンラインストアにて購入可能

2社の技術と共創が

新たな市場を切り開く

能勢 剛

勝俣 続いては、グンゼと花王が共同開発した男性向けエチケット商品、「SmaShee(スマシー)」です。一見すると、ごく普通のボクサーパンツですよね。

能勢 言われないと違いが分かりません。でも実は3層構造になっていて、肌側のポケットに専用の吸水シートを差し込んで使う仕組みです。

勝俣 パンツをグンゼ、シートを花王が開発。それぞれの得意分野を掛け合わせた商品なんですね。両社の共同調査では、50~70代男性の6割以上が尿トラブルを経験している※2一方、既存の対策商品には心理的な抵抗を感じる人も多かったそうです。

能勢 こうした小さな悩みに寄り添ってくれるグッズは、これまであまりなかったですよね。

勝俣 課題はあるのに、なかなか対策には踏み出せない。いわば隠されていた市場だったわけですね。

品田 悩みがあっても「自分はまだそこまでじゃない」と思ってしまって、いざ経験してから困る人も多いと思います。

能勢 だからこそ、普段と変わらない感覚で身に着けられることを重視したのでしょう。僕も今、実際に穿いていますが、違和感は全くありません。厚さ3㎜のシートで20ccまで吸水できるので、1日中安心して過ごせる設計です。

勝俣 そこに両社の技術が生きているんですね。

能勢 穿きやすい下着を作るグンゼの技術と、薄さと吸収力を両立する花王の技術。どちらもそれぞれの分野で消費者から信頼されているブランドですから、非常に相性のいい組み合わせだと思います。

品田 これ、どこで買えるんですか。

勝俣 Amazon限定です。つまり、こうした商品を店頭で手に取ること自体に抵抗がある人でも、人目を気にせず購入できる。ターゲットに届けやすく、口コミも期待できる、賢明な売り方だと思います。

品田 それには、まず商品を知ってもらうことが重要になりますね。

勝俣 大切なのは「悩みを解決します」と正面から訴えるのではなく「これを使えば、もっと前向きに生活できる」と伝えることでしょう。

能勢 日常のちょっとした課題を、大げさにせず解決してくれる「スマシー」は、まさにそれを体現しています。年齢を重ねてもアクティブに過ごしたい人にとって、一つの“保険”のような存在になっていくんじゃないでしょうか。

※2 2024年5月実施web調査:50歳代から70歳代男性 n=4288(花王・グンゼ共同調べ)

「保湿」から「育成」へ

肌環境に着目した唇ケア

勝俣 次は、アベンヌの「シカルファットプラス リペアリップバーム」です。使ってみて、いかがですか。

品田 しっかり密着するのにベタベタしなくて、いい感じですね。僕は中学時代にブラスバンドをやっていたこともあって、唇には気を使っているんですよ。

勝俣 最近は、唇をふっくら見せるプランパーや落ちにくいティントなどもはやってますよね。そうした刺激などで唇が荒れ、なめることでさらに悪化させてしまう人もいる。SNSでは「唇ベロベロ界隈(かいわい)」という言葉まで生まれているそうです。

品田 それだけ唇への注目度が高まっているということでしょう。以前なら気にしなかった唇の荒れも、ケアの対象になってきた。

勝俣 調査でも、唇のめくれ・皮むけに悩む人は65.6%、ひび割れ・亀裂は53.6%に上ります※3。

能勢 健康志向が高まり、口腔ケアを意識する人も増えました。その延長線上で、唇もケアする人が増えているように感じますね。

勝俣 この商品の特長は、これまでの「乾燥したら塗る」という保湿だけでなく、“リペアして育てる”という考え方を打ち出していることです。

品田 最近の美容は、隠す、補うという発想から、医療の考え方も取り入れながら、肌環境そのものを整える方向へ進んでいます。アベンヌの会社であるピエール ファーブル社は皮膚科学領域に強みを持つ企業で、その知見が生かされている点にも注目しています。

勝俣 鍵となるのが「アベンヌ独自CICA成分※4」ですね。

品田 CICAというとツボクサをイメージする人も多いですが、これはアベンヌ温泉水から採取した微生物由来の独自成分を配合したもの。唇の肌環境そのものに着目しているところが面白いですね。

勝俣 パッケージも機能を訴求するデザインで、男性でも手に取りやすそうです。

品田 唇をケアすること自体、男性にも広がってきています。それに、気になったときにすぐケアできるものを持ち歩くことも今のトレンド。サイズ的にも携帯しやすいですよね。

勝俣 使うたびに、荒れにくい唇に育てていく。美容への関心が肌全体から唇や眉毛など細かなパーツへ広がる中、それぞれの部位を科学し、根本に近いところからケアする商品は、今後さらに注目されそうです。

※3 2025年実施:15歳から59歳女性 n=700(ピエール ファーブル ジャポン調べ)
※4 セープラスリストア™:アクアフィルスドロミエ培養液、アルギニン、トロメタミン(整肌成分)


ヒットを占う
土鍋の味を追求した高級炊飯器、発酵性食物繊維が豊富な小麦粉毎日の「食」をアップデートするこだわりの商品と食材に注目!

伝統工芸と家電技術の結晶

土鍋炊飯を極めた20周年モデル

勝俣 哲生

勝俣 ここからは、毎日の「食」を豊かにしてくれる商品を紹介していきましょう。まずは、タイガー魔法瓶の「土鍋ご泡火(ほうび)炊き JRT-A100」です。炊きたてをいただきましたが、いかがでしたか。

能勢 確かに土鍋で炊いたごはんの味です。普通の炊飯器とは粒立ちが違って、甘みもある。料亭で土鍋ごはんを食べると、こんな感じのごはんが出てきますよね。

品田 香りもいいですよね。きちんと炊いたごはんならではの香ばしさがあります。

勝俣 「ご泡火炊き」という名前の通り、“泡”がポイントなんですね。

能勢 土鍋炊飯器の20周年記念モデルとなる本商品では、土鍋の形状と加熱制御を改良したことで、理想的な熱対流と火かげんを実現しています。この熱コントロールに加え、土鍋から生まれる細かい泡で、お米を包み込むように炊きあげるんです。底面に波状の加工を施し、湧き上がるような対流を発生させているのも特長です。

勝俣 タイガー魔法瓶は、土鍋に並々ならぬこだわりを持っていますよね。

能勢 この土鍋を作るだけで約3カ月かかるそうです。萬古焼の土鍋を職人の手作業で仕上げ、最高約1250度の窯で3回焼く。さらにIHで加熱できるよう、底に金属の発熱体を一つひとつ貼り付けています。

勝俣 受け継がれてきた職人技と、進化し続ける家電技術。その二つを結集した炊飯器なんですね。

能勢 20年前に登場したときは、焼き物である土鍋を炊飯器の規格に合わせて量産できるのかと、正直疑問に思っていました。でも20年積み重ねた改良と進化の末に、その集大成ともいえる傑作が生まれた。土鍋を自在にコントロールして炊くには、普通の炊飯器とは違う技術の蓄積が必要だったはずです。

勝俣 高級炊飯器市場が再び盛り上がっている背景には、どんな変化があるのでしょう。

能勢 外でごちそうを食べるだけでなく、家でもおいしいものを楽しみたいという人が増えているんだと思います。今は全国からおいしいおかずを取り寄せられますから、それに合わせるごはんにもこだわりたくなる。ブランド米も数多く登場し、好みのお米を取り寄せて楽しむことも身近になりました。

品田 この炊飯器は79銘柄を炊き分けられるんですよね。先ほど食べた「新之助」にも専用モードがある。いろんなお米を試したくなります。

勝俣 しかも1合炊き用に炊飯空間を調整する専用の中ぶたまで用意されている。家族のためだけではなく、一人でもおいしいごはんを食べたいという需要があるわけですね。

品田 やはりお米は毎日の主食ですから。丁寧な生活を送りたい人にとって、高級炊飯器は価値のある選択肢になるんじゃないでしょうか。

勝俣 これまでのご褒美というと、特別な日に外食するようなハレの消費をイメージしがちでした。でも今は、毎日の食事をグレードアップすることにもぜいたくを感じる。節約志向がある一方で「主食だけはおいしく食べたい」というニーズもあるのでしょう。高級炊飯器は、日常の体験価値を高める家電として、さらに存在感を増していきそうです。

“足す”から“置き換える”へ

おいしく手軽な健康習慣

勝俣 最後は、日清製粉の業務用小麦粉「アミュリア」です。「アミュリア」を使ったパンとクッキーをいただきましたが、正直、いつもの商品との違いが分かりませんでした。

品田 そこが、「アミュリア」のすごいところなんです。味は変わらないのに、「アミュリア」に含まれている食物繊維は、一般的な小麦粉の約5倍。しかも約80%※5を、腸内細菌のエサとなる発酵性食物繊維が占めているんです。

勝俣 海外では今、「ファイバーマキシング」が注目されていますよね。

品田 毎日の食事で食物繊維を積極的に摂ろうという動きですね。日本でも食物繊維は不足しがちなので、普段と同じものを食べながら摂取量を増やせる「アミュリア」は、今の健康志向にも合っていると思います。

勝俣 これまでは主食で食物繊維を摂ろうとすると、玄米や全粒粉などを意識して選ぶ必要がありました。

品田 体のためと分かっていても、味や食感が変わると毎日続けるのは大変だと感じる人もいます。でも「アミュリア」なら、普段食べているパンや麺を置き換えるだけでいい。

能勢 健康食品やサプリメントはたくさんありますが、全部を追いかけるのは難しい。日常の食生活の中で自然に摂れるのが一番だと思う人は多いでしょう。

勝俣 その「変わらない味」を実現するまでにも、かなり苦労があったようですね。

能勢 味もそうですが、パンや麺を作る際の吸水性や製造ラインでの作業性も異なる。消費者が従来と同じ感覚で食べられるものにするため、開発には約3年かかったそうです。

勝俣 もう一つ面白いのが、「菌を摂る」から「菌を育てる」へ、という設計思想です。

品田 単に菌を摂ればいいのではなく、多様な腸内細菌を育てるためにどんな食物繊維を摂るか。量だけでなく質でも選ぶという考え方が、これから消費者にも浸透していくと思います。

勝俣 サプリメントのように何かを“足す”のではなく、今まで食べていたものを“置き換える”。一周回って新しいですよね。

品田 そうですね。健康のために「あれもこれも摂らなきゃ」となると、結局続きませんからね。普段の食品を自然に置き換えていくほうが、生活には取り入れやすいと思います。

勝俣 「アミュリア」を使った商品には、「コムギでセンイ」というマークを使ったものも展開されています。食品メーカーなど多くのパートナーと一緒に広げていくという点でも興味深いですね。

能勢 知らないうちに、すでに食べている人もいるかもしれません。今後このマークの認知が高まれば、商品を選ぶ目印にもなりそうです。

品田 おいしく食べながら、健康的な食習慣にもつながる。その選択肢が広がっていくのはいいですよね。

勝俣 日常に無理なく取り入れられ、消費者の悩みや潜在的なニーズにも応えてくれる。今回紹介した5商品に共通するこの価値が、次のヒットを生む鍵になりそうですね。

※5 日清製粉におけるパンの分析例からの換算値

座談会を終えて…

能勢 剛

元・日経トレンディ編集長 能勢 剛


今回印象的だったのは、各社が長年蓄積してきた職人技的な技術を、新たな商品に結びつけていること。日本には、こうした技術を持つ企業が数多くあります。その価値を見つめ直し、新しい形で生かすことが、これからの商品開発の一つの方向になると思います。

品田 英雄

日経BP 総合研究所 客員研究員 品田 英雄


かつては「世界一」など、商品のすごさを強く打ち出すことが多かった。でも今回の商品には、「こんなものがお役に立ちませんか」と差し出すような控えめさを感じました。日常の小さな困り事に、さらりと応える。その距離感が今の生活者には心地いいのでしょう。

勝俣 哲生

日経トレンディ発行人 勝俣 哲生


今回の商品に共通するのは、従来の「当たり前」をアップデートしていること。生活者が当たり前だと思っていることを突き詰めれば、新たな悩みに応える突破口が見えてくる。業界の常識を改めて見直すことに、次のヒットを生むチャンスがあると感じました。

座談会の様子を動画で公開中