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2027年、スキンケアに新潮流

革新技術の台頭で変わる 美容市場の“新しい物差し”

スキンケアを成分で選ぶことが当たり前になる一方、
選択肢は増え続け、生活者の選び方にも変化が起き始めている。
研究の世界でも、1つの悩みに1つの成分で応えるだけでなく、肌をより多面的に捉える方向へ進化している。
そうした中、ロート製薬は、細胞間の情報伝達に着目した新たな研究領域「フィトエクソソーム」を発表した。
この新たな研究は、これからのスキンケアをどう変えるのか。
ロート製薬の村本由理氏、成分ハンターの竹岡篤史氏に、日経トレンディ発行人勝俣哲生が話を聞いた。

市場にあふれる「成分コスメ」
広がる「成分」比較検討疲れ

写真:勝俣哲生

日経トレンディ
発行人

勝俣 哲生

勝俣 スキンケア製品を成分で選ぶ「成分買い」が定着し、その特性や働きを重視する女性を指す「テック買い女子」という言葉も生まれました。なぜこのような購買行動が広がったのでしょうか。

竹岡 コロナ禍以降、SNS発信や、ドクターズコスメ(医療機関専売化粧品)の普及などを通じて、「シワ・たるみ=レチノール」「美白=ビタミンC」というように、悩みと成分の一対一の関係が広く認識されるようになったためだと考えられます。しかし、近年は似たような成分コスメや選択肢が増え、成分そのものに疲れたというより、結局何を選べば良いかわからなくなってしまう「比較検討疲れ」の傾向も見られます。

勝俣 つまり、配合成分だけでは選び切れず、+αの理由が必要になっていると。

竹岡 メカニズムと技術的な背景、そして自分にとってどんな価値があるのかまで、一貫して説明できるブランドが選ばれるようになると思います。例えばロート製薬さんは、単に「ヒアルロン酸配合」というだけではなく、ヒアルロン酸の特徴や働きに加え、自社製品の目指す価値をサイエンスの観点でわかりやすく説明していますよね。

村本 当社の主要ブランドである「肌ラボ」にはヒアルロン酸、「メラノCC」はビタミンC、「Obagi」は皮膚科学に基づくシリーズとしてそれぞれラインアップしておりますが、なぜその成分や技術を使うのかを伝えるだけでなく、その研究が生活者にとってどんな価値につながるのかまで、一貫したストーリーとして伝えることがますます重要になると考えています。

勝俣 そう考えると、「次にどんな成分が流行るか」だけではなく、生活者がスキンケアの何を見るようになるのかも変わっていきそうですね。

新成分ではなく新技術
「フィトエクソソーム」がもたらす真価とは

写真:村本由理 氏

ロート製薬
プロダクト&ブランドマーケティング部
部長

村本 由理氏

勝俣 近年、美容業界で「エクソソーム」が話題になっていますが、どのような働きがあるのですか。

竹岡 エクソソームとは、細胞同士が情報をやり取りする際に使われるナノ粒子です。私はよく、エクソソームを、細胞のドアを開けて直接届けることのできる「小包」のようなものだと例えます。さらに、その小包には物質が含まれ、受け取った細胞の働きに影響することが研究されています。

勝俣 その中でもロート製薬さんは、植物などに由来する細胞外小胞「フィトエクソソーム」に注目されていますね。

村本 はい。当社はフィトエクソソームの研究開発に力を入れています。その一つが、強烈な紫外線、潮の満ち引き、過酷な乾燥という、私たち人間なら一瞬で傷ついてしまうような厳しい環境を、数億年もの間生き抜いてきた生命体である、微細藻類「パブロバ」由来のものです。

勝俣 なるほど。だからこそ、人間が持ち得ない、進化の知恵と無限のポテンシャルが宿っていると考えられるのでしょうか。

村本 その通りです。藻類由来のフィトエクソソームは、肌に起こる炎症や老化に関わる複数の現象にアプローチし、肌の土台から肌環境を整えることが期待されており、研究余地が大きいと感じています。

竹岡 ロート製薬さんは、微細藻類を工業規模で培養し、そこからフィトエクソソームを安定的に精製・量産するための設備と技術まで構築されている。研究だけでなく、生産までつなげられる点も強みですよね。

「成分」から、「肌そのもの」へ
肌の「OS」まで考える時代に

写真:竹岡篤史 氏

スキンケア成分ハンター

竹岡 篤史氏

世界中にある美容成分を発掘・研究する美容成分開発者。25年間、化粧品開発の業界に身を置き、数多くのブランドの研究開発に携わる。2016年、欧州を代表する美容・コスメイベント「In-cosmetics」にて、アジア人としては世界初となるイノベーションアワード金賞を受賞。化粧品メーカーのセミナーや記事の監修・執筆のほか、Instagramにて美容成分の情報を分かりやすく発信している。

勝俣 フィトエクソソームは、2027年の美容市場にどのようなインパクトを与えると思いますか。

竹岡 1つの悩みに1つの成分でアプローチする「点止め」型の課題解決から、皮膚全体を多面的に捉え、健やかな状態を保つ考え方へ。例えるなら、個別の機能を追加する「アプリ」だけでなく、肌全体を支える「OS」まで考えるような変化です。細胞間コミュニケーションに着目するフィトエクソソームは、そうした新しいスキンケア観を象徴する技術の一つになり得ると思います。そして、こうした考え方を一部の先端層だけのものにせず、市場の新しい当たり前にしていくには、先端技術を誰もが使える形にする「技術の民主化」が重要です。

村本 当社は、ロンジェビティの社会実装の実現を目指し、多くの方に健康と美を届ける方針を掲げています。

医薬品、化粧品、食、そして先端医療である再生医療まで幅広い事業を展開しており、分野を超えた知見が自然と融合する組織です。フィトエクソソームはその第1弾として、最先端かつオープンな研究環境、そして高品質な製品を安定的に大量生産できる生産ノウハウを生かしています。先端技術だからといって、難しい科学を理解し選んでいただくのではなく、「気が付いたら使っている」といったように、多くの生活者に自然な形で届けていきたいと考えています。

そのため、既に多くの生活者との接点を持つ、「肌ラボ」「メラノCC」「Obagi」といった、既存ブランドを通じて提供していきたいと考えています。

勝俣 新ブランドで先端技術として売るのではなく、既存ブランドに搭載することで、日常のスキンケアまで広げようとしているんですね。

竹岡 フィトエクソソームを「話題の新成分」として売るのではなく、それぞれのブランド価値に合わせて技術として製品へ落とし込み、広い生活者層へ届ける。これはロート製薬さんならではの社会実装力だと思います。「J­–Beauty」(日本の化粧品産業)が持つ技術力を、マス市場まで実装する一つのモデルになり得ると思います。

勝俣 今後のフィトエクソソームの展開がとても楽しみですね。ただ、どれだけ先進的な技術だからといって、それだけで製品が選ばれるわけではありませんよね。

竹岡 私がコミュニケーションにおける重要なポイントとして挙げているのは「3S」というキーワードです。「サイエンス」の観点に加え、「センソリアル(感覚、使用感)」としてどんな体験価値をつくるのか、「ストーリー」で「だから私はこれを選ぶ」と納得できる理由をつくる。技術を、生活者が買いたい、使い続けたいと思う価値に変えていくことが重要です。フィトエクソソームは秘めている可能性が大きいだけに、展開の仕方も幅広く考えられますね。

村本 おっしゃる通りですね。研究としての新しさだけでなく、それをそれぞれのブランドでどんな価値として届けるかまで考えることが重要だと思っています。そして、フィトエクソソームは由来によって研究の可能性が広がるため、国内外の植物や微細藻類など、様々な素材を探索していきたいと考えています。

竹岡 J–Beautyの強みの一つは、基礎研究や品質、生産技術を積み上げながら、先端技術を生活者が使える価値へ落とし込めることだと思います。フィトエクソソームも「次の成分ブーム」で終わるのではなく、肌そのものをより多面的に捉える、そんな新しいスキンケアの「物差し」まで広げられるか。そこに注目しています。

20年以上の研究をマス市場へ実装してきた、
ロート製薬のスキンケアブランド

写真:ロート製薬を代表するスキンケアブランド「肌ラボ」「メラノCC」「Obagi」 ヒアルロン酸に特化した「肌ラボ」、高濃度ピュアビタミンCの「メラノCC」、皮膚科学に基づき肌のポテンシャルを解き放つ「Obagi」。いずれも確固たる成分研究と技術力に裏打ちされたストーリーを持ちながら、誰もが手に取りやすいマス市場で圧倒的な支持を集める、ロート製薬を代表するスキンケアブランドだ。
※上記製品は各ブランドの代表製品
日経トレンディ発行人 勝俣の編集後記
先進技術であるフィトエクソソームを、マスブランドに落とし込み技術の民主化に挑むロート製薬の姿勢に、同社のロンジェビティの社会実装への思いとJ-Beautyの未来を感じました。 特に興味深いのは、「AI買い」時代との親和性です。一貫した研究の蓄積と明確なストーリーを持つ技術は、AI時代に自社製品が発見・評価される最大の武器になる。先端技術を誰もが享受できる日常へと変える同社の挑戦が、市場をどう変革するか楽しみです。
  • Vol.1 ロート製薬が創る「ロンジェビティ」という新市場 既存商品のOS刷新
  • Vol.2 鍵は「細胞の対話」。常識を覆すロート製薬の新技術
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ロート製薬
https://www.rohto.co.jp/