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英語を学ぶことは世界にアクセスするための鍵を手に入れるのと同じこと

日本の文学や芸術を探究し続ける、日本文学研究者のロバート キャンベルさん。その深淵に迫るには、日本語を自分と一体化する必要があるという。それはグローバル社会を英語で生き抜くビジネスパーソンにとっても同様だ。英語を自分の一部とするために、どんなことを意識し、何を指針として学んでいくべきか。ご自身の経験を踏まえて語っていただいた。

日本の文学や芸術を探究し続ける、日本文学研究者のロバート キャンベルさん。その深淵に迫るには、日本語を自分と一体化する必要があるという。それはグローバル社会を英語で生き抜くビジネスパーソンにとっても同様だ。英語を自分の一部とするために、どんなことを意識し、何を指針として学んでいくべきか。ご自身の経験を踏まえて語っていただいた。

言葉を持つことで未知の世界とつながりを持てる

――日本人以上に日本語を自在に操るロバート キャンベルさん。日本語を学ぶきっかけは何だったのでしょうか。

もともと言語に興味があって、最初に覚えた外国語はフランス語。10代の一時期、フランスに住んでいたことがあるのですが、そこでも家族の通訳を任されていました。その次に学んだのが、日本語です。でもそのいきさつがちょっと変わっている。そもそものきっかけは大学で受講した日本美術入門という講義。その視覚的カルチャーに感銘を受け、日本美術をもっと学びたいと思い、先生にアドバイスを求めたんです。そうしたら、「明日からすぐ日本語を学びなさい」と。

――美術を学ぶのに、まず言葉から?

なんで? って思うでしょ。私も最初は納得できなかった。でも勉強をしていくうちに、日本の絵画には、物語や儀式、春夏秋冬、人々の語らいといった言語表現が多重に隠されていることに気づいたんです。例えば、月夜になびく枯れすすきの描写は、当時の日本人にとっては自然と伊勢物語を想起させるもの。知らなければただの風景画でも、言葉や文化を共有することでより深く絵の意味するところが理解できるわけです。実はそれは日本美術に限った話ではなく、目に入る情報や風景というのは必ず別の何かにリンクされている。それを読み解く鍵として、言語は欠かせないものなのです。

――言語を獲得することで、その先のより深い世界に到達できるわけですね。一方で、日本人が英語を学ぶことにはどんな意味があるのでしょう。

英語を読む、聞く、話す、書くといったスキルを身に付けることで、これまでとは比較にならないほどの世界の広がりを実感できるようになります。例えば、日本のある地方にものづくり職人がいたとします。彼は日本語の世界でも何不自由なく仕事を完結できていますが、世界のどこかにはやはり同じような職人がいて、共感・共有できる感性や技術がそこに存在する。そういう状況はいつの世も変わらずにあるのだけれど、今の時代はちょっとした努力ですぐその人や場所にアクセスすることができる。同じ志を持つ、地球の裏側にいる人と言葉で情報をやりとりし、感性を磨き合い、互いを高めることができるのです。

――遠くの誰かとつながることによって、つながる前には想像もできなかったような刺激や化学反応が生まれ、次のステージへ行けるかもしれないと。

実は、つい先日も富山県の山奥で二人連れのドイツ人女性と出会ったんですが、彼女たちはその土地の鉄器工房を訪ねてきたというんです。ただその人の作品を見たいという一心で、見ず知らずの国の人里離れた村にやってきたのだと。それを可能にしたのが、インターネットと英語です。私たちがそこで交わした言語も英語でしたが、どの国の誰にアクセスするにしても、まずは英語から入ることになる。英語は広い世界との橋渡しをしてくれる、とても貴重で便利なツールなんです。

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