キリンビバレッジは、10月4日に同社の缶コーヒーブランド「KIRIN FIRE」を全面リニューアル。リニューアルに先立って行われた「100万本のシークレットサンプリング」は大きな話題となり、発売から約3週間で1億本突破と滑り出しは非常に好調だ。今回のリニューアルのねらいや方向性、マーケティング戦略から今後の目標などまで、担当者のマーケティング本部 マーケティング部 商品担当 主任 西田明男氏に話を聞いた。

── 今回のリニューアルは発売以来17年間の集大成ということですが、なぜ今このような全面リニューアルに踏み切ったのですか。

西田氏:現在コーヒー市場は、非常に好調です。シアトル系コーヒーをはじめとするカフェはすっかり日本に定着し、新たなサードウェーブコーヒーも人気です。さらに、コンビニでも気軽にレギュラーコーヒーが飲めるようになり、選択肢が増えました。その中で缶コーヒーは、いささか話題から取り残されたような形になっていました。コーヒーの話題は多いのに、缶コーヒーに関してはほとんど話題に上らず、新商品を出しても気づいてもらえない状態が続いていました。

キリンビバレッジ株式会社
マーケティング本部 マーケティング部
商品担当 主任
西田明男氏

そこで、昨年「KIRIN SUPER FIRE スピードブレイク」を発売した直後から、通常のモニターの約3倍にあたる1,000人以上にご協力いただいた大がかりな市場調査を行いました。その結果、「コーヒーの香りが足りない」、「甘すぎる」、「味が薄い」といった声が多く聞かれました。実際は、缶コーヒーも無糖や微糖など甘すぎない商品も増えていますし、味もかなり改良されていると思うのですが、一昔前の刷り込みが強く、それが払拭できていませんでした。

同時に、「缶コーヒーはどれも同じ」という感想も多く、ブランド訴求も十分ではありませんでした。そばに自販機があるから買うといった利便性優先の商品になっており、なかなか指名買いにつながっていませんでした。

そこで、人々の話題に上り、しっかりブランドを認知してもらえ、なおかつ当然ながらおいしいと満足してもらえる商品の開発を目指しました。

── どういう味を目指したのですか?

西田氏:まず、缶コーヒーのことはいったん忘れることにしました。我々も缶コーヒーの常識に縛られていたところがあり、前回の商品の味を基準に、こうしよう、ああしようと考えていたところがありました。そうではなく、コーヒー好きの方々にうまいと言っていただける味を目指すことにしました。

同時に、FIREの名前の由来となっている「火」の価値が、お客様にきちんと伝わっていないとも思いました。火には2つの意味があり、まず「うまさの火」。すなわち、コーヒーの味と風味の重要な要素である焙煎を意味しています。もう1つが「心の火」。挑戦する人を応援したいという思いです。FIREが最初に発売されたときのCMは、スティービー・ワンダーの「To Feel The Fire」で、まさに前向きに生きる人を応援する歌でした。安らぎのアイテムとしてコーヒーを訴求するメーカーもありますが、FIREは違います。チャレンジする人を鼓舞したい、そういう味を目指しました。

FIREには2つの意味があり、1つが焼きを極めた「うまさの火」であり、もう1つが挑戦する人を鼓舞する「心の火」。今回、発売当初からのこのコンセプトの原点に立ち返り、この2つの火を灯す味を目指した。

── 具体的には?

西田氏:コーヒーの香り、コクに注力しました。従来の缶コーヒーはミルクや甘さが主役になりがちでしたが、新しいFIREは、あくまでもコーヒーが主役の味づくりにこだわりました。

それを実現するために「焦がし焼き豆」と名付けた新しい豆をブレンドしました。これは、従来の「焼き」の限界に挑戦し、「深煎り」よりもさらに深く、焼け落ちる寸前まで焙煎する「焦がし焼き」により実現しました。コーヒー豆の香りとコクの最高点は深煎りの先にあり、そこを目指したのです。

コーヒー豆の香りとコクを最大に引き出す煎り方は、深煎りよりもさらに先の焼け落ちる寸前にある。普通の豆なら焼け落ちてしまうこの煎り方でも、しっかり味が残る豆を使い、この味を実現した。

ただし、普通の豆ではその前に焼け落ちてしまいます。そこで、コロンビアの高地で採れる硬いコーヒー豆を採用しました。元々コロンビアのコーヒー豆は華やかな味で知られており、深く焼いてもしっかり味が残ります。これをアクセントにして、コーヒー感をより強くしました。

また、通常の試飲は一口だけ味わうことが多いのですが、缶コーヒーは1本飲んでどうかというのが重要です。一口目はおいしいけど、1本飲むと甘さが残るではダメなのです。もちろん口に含むだけの試飲もしますが、場合によっては何本も飲むことになります。なので、試飲の日はかなり覚悟して臨みました(笑)。

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焦がし焼き豆を10%使用。香ばしくすっきりした微糖タイプ。

焦がし焼き豆を15%使用。砂糖・ミルク入りの香ばしさ溢れるスタンダードタイプ。

焦がし焼き豆を10%使用。心地よい苦味のブラックコーヒー。

焦がし焼き豆を35%使用。ミルクと合う香ばしさを引き出したカフェラテ。

焦がし焼き豆を35%使用。コク深く、香ばしさあふれる味覚のデミタスタイプ。

焦がし焼き豆を30%使用。香ばしさ際立つブラックコーヒー。