日経トレンディネットSpecial

「ほうじ茶」ブームがきている。飲料としてはもちろん、ほうじ茶をさまざまな食品にフレーバーとして利用する動きも広がっている。
日経BP総研 マーケティング戦略研究所 上席研究員の渡辺和博が、ほうじ茶ブームの核心に迫るべく、ほうじ茶商品のパイオニアであり幅広く展開する伊藤園を訪ねた。

ほうじ茶入りスイーツにパスタドリンク以外にも多彩な広がり

伊藤園 マーケティング一部 部長 志田 光正氏(以下:志田)、商品開発もされていた伊藤園 広告宣伝部 デジタルコミュニケーション室 室長 小笠原 嘉紀氏(以下:小笠原)のお二人に話を聞いた。

渡辺ほうじ茶飲料の市場規模は過去10年間で約5倍に拡大したといわれています。ホットを含めPET飲料は今やコンビニの定番商品となり、いつでも気軽に楽しめるドリンクとなりました。

志田ほうじ茶は非常に心地よい香りが特長で、他の食材との相性が良いことから、ドリンクとしてだけではなく、驚くほど多様な方法で茶葉の活用が広がっています。

伊藤園 マーケティング一部 部長 志田 光正氏

伊藤園 マーケティング一部
部長 志田 光正氏

渡辺茶葉をフレーバーとして練り込んだお菓子はその代表例ですね。ほうじ茶を使ったスイーツの専門店まで登場し人気を集めていますし、ほうじ茶を練り込んだパスタ乾麺の商品もあります。ほうじ茶パウダーをお好みで振りかけて楽しめるラーメン店もありますよね。

左/兵庫県西宮市にある"ほうじ茶スイーツ専門"の店「お茶の菓さいさい」。ほうじ茶の味に注目し、お茶文化の発展を志しているそうだ。右/和光食材は静岡県のほうじ茶を練り込んだ香り豊かな「和風ぱすた[ほうじ茶]」を開発した。クリーム系のソースと合わせるのがおすすめ。

左/兵庫県西宮市にある“ほうじ茶スイーツ専門”の店「お茶の菓さいさい」。ほうじ茶の味に注目し、お茶文化の発展を志しているそうだ。右/和光食材は静岡県のほうじ茶を練り込んだ香り豊かな「和風ぱすた[ほうじ茶]」を販売している。クリーム系のソースと合わせるのがおすすめ。

また、私もほうじ茶で煮る煮豚のレシピを試したところ、肉の臭みが消え、とてもやわらかく仕上がりました。ほうじ茶のポテンシャルの高さを実感し、このブームにも合点がいきました。ほうじ茶のパイオニアである伊藤園としては、このブームをどう分析していますか? また、ほうじ茶市場は今後も拡大していくとお考えですか?

志田過去3年を見てもほうじ茶市場は毎年10%以上拡大しています。ほうじ茶の香りを心地よい香りと言いましたが、この香りが時代とマッチしていることが市場拡大の背景にあると考えています。

拡大する「ほうじ茶市場」

今の50代以上の若い頃は和食から洋食化が進んでいく時代で、当時“いい香り”ともてはやされたのは、香料などを駆使して作られた人工的なものが中心でした。一方、今の40代くらいまでの世代は、人工的ないい香りよりも自然な香りへの欲求が強いように思います。ほうじ茶にはこの自然な香りに加えて、お茶そのものが持つ渋みや旨みも感じられます。採れたての野菜こそ最高のおいしさと感じる人たちに今、ほうじ茶が選ばれていると考えています。

小笠原私はほうじ茶の最大の特長は茶葉に火入れすることによって生まれる“火の香り”だと思っています。古来、火を囲んで暮らしてきたことで、私たちのDNAには火の香りに対する根源的な欲求が刻み込まれている。だから、火入れで生まれるほうじ茶の自然な香りに心が安らぐのではないでしょうか。

伊藤園 広告宣伝部 デジタルコミュニケーション室 室長 小笠原 嘉紀氏

伊藤園 広告宣伝部 デジタルコミュニケーション室
室長 小笠原 嘉紀氏

渡辺団塊ジュニア世代の女性たちは、サプリ疲れといいますか、人工モノに疲れて自然な癒やしを求める傾向があると思います。食べ物だけでなく、例えばヨガなど余暇の過ごし方にもその傾向は表れています。

志田“癒やし”も重要なキーワードです。ほうじ茶ブームをけん引しているのは女性ですが、男女では求める癒やしも大きく異なります。男性は仕事とプライベートを切り替えてON/OFFをコントロールしやすいですが、多くの女性は家事に育児に、とにかく忙しく、ON/OFFをはっきり分けることがしにくいと言われています。そんな日常での癒やしというのは、わずかな時間でも心地よくなれること。ほうじ茶はそんな癒やしのアイテムとしても選ばれているのではないでしょうか。

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