TREND EXPO TOKYO 2017 特別対談

0→1を生み出す企業ブランディング

さる2017年11月3日に行われた「TREND EXPO TOKYO 2017」において、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ代表取締役社長の阪根信一氏と、同社の企業ブランディングや「ランドロイド」のプロダクトデザインなどに関わったライゾマティクス代表取締役の齋藤精一氏が対談。

「0→1を生み出す企業ブランディング」をテーマに、ものづくりとアートディレクションのパートナーシップについて語り合った。

阪根信一氏

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ
代表取締役社長

阪根信一

University of Delaware(米国)にて化学・生物化学科専攻 博士課程修了。Glenn Skinner 賞(博士課程最優秀賞)受賞。2008年7月FRP専業メーカーのスーパーレジン工業株式会社 代表取締役社長に就任。2014年セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社設立。カーボン事業、ヘルスケア事業の他、全自動衣類折りたたみロボット「ランドロイド」を開発するロボティクス事業を推進している。

ライゾマティクスとの出会い

阪根 セブンドリーマーズという会社は、「ランドロイド」などを生み出したイノベーションや技術に注目されることが多いのですが、今日はブランディングについてお話ししたいと思います。その前に、まずは当社の簡単な自己紹介をさせていただきます。

セブンドリーマーズは、「世の中にないモノを創り出す技術集団」を標ぼうしている会社です。分野にとらわれることなく、①世の中にないもの、②人々の生活を豊かにするもの、③技術的ハードルが高いもの、という3つのクライテリア(判定基準)に沿って開発テーマを選び、ものづくりに取り組んできました。

ですから、当社は現在5つの分野の研究・開発を行い、そのうち3つを製品化および情報公開していますが、それぞれの製品は完全オーダーメードの「カーボン・ゴルフシャフト」、快眠をサポートする鼻腔挿入デバイス「ナステント」、そして全自動衣類折りたたみロボット「ランドロイド」と、分野的にはまったく関連性がありません。3つのクライテリアのすべてに当てはまり、われわれがつくる価値があると思う製品だけをつくり続けているのです。おかげで「何をやっているのかよくわからない会社」だと思われている側面もあるようですが(笑)。

齋藤 「何をやっているのかよくわからない」と見られがちな点は、われわれライゾマティクスも同じですね。仕事の一例を挙げると、国内外の大規模なライブ公演におけるインタラクションデザインや、プロジェクションマッピング、ドローンなどを使った映像表現、それらとはまったく関連性のない都市開発など、リサーチ、デザイン、アーキテクチャに関わるさまざまなことをやっています。わかりやすく言うと、今ある最新技術を組み合わせると、どんなエンターテインメントや映像表現、広告表現などができるのかを模索し続けている集団です。セブン・ドリーマーズさんと同じように、分野を問わない活動をしているので、「何をしているのかわからない」という印象を持たれるのかもしれません。

阪根 そんな似た者同士ですが(笑)、われわれがライゾマティクスさんに企業ブランディングのサポートを依頼したのは2013年の夏でした。当社で技術者として働いている私の従兄弟に「ブランディングとかクリエイティブですごく活躍している人がいる」と紹介され、東京・丸の内の居酒屋で齋藤さんと出会ったのが初めてでしたね。

齋藤 僕の印象としては、うちと同じように、いい意味でも悪い意味でも「焦点が絞れていない会社だな」と思いました。それがセブン・ドリーマーズさんに興味を抱くきっかけになったと記憶しています。

齋藤精一氏

ライゾマティクス
代表取締役

齋藤精一

建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。2003年の越後妻有トリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。その後フリーランスのクリエイティブとして活躍、2006年にライゾマティクスを設立。2009年より国内外の広告賞にて多数受賞。現在、株式会社ライゾマティクス代表取締役、京都精華大学デザイン学科非常勤講師。

ゼロからコトを創るということ

齋藤 セブンドリーマーズさんは当時、発売まで1年足らずに迫っていた完全オーダーメードのカーボン・ゴルフシャフトを開発中でした。僕はWebバブルが終わった2010年ごろから、さまざまなモノがカスタマイズされる時代がやって来たと感じていたので、カーボンのように高価な素材を使ったモノをカスタマイズするという斬新さに興味を持ったのです。まさに、今までにないモノやコトをゼロから創る取り組みですからね。

それで企業ブランディングをお手伝いすることになったわけですが、最初に取り組んだのは社内統制でした。阪根社長が目指しているものはよく理解できましたが、身近にいる社員だけでなく、工場でシャフトを削る職人さんたちも含めて、すべての人たちが「うちの社長は何を目指しているんだ?」「われわれは何のためにこんなことをしているんだ?」ということをしっかり共有しなければ、芯の通った企業ブランドを創ることはできません。

阪根 その意思統一のため、ライゾマティクスさんには手始めにワークショップを開いていただきましたね。そこで、先ほども述べた「世の中にないモノを創り出す技術集団」という当社の方向性や、3つのクライテリアなどが固まったことを覚えています。

もう一つ、ライゾマティクスさんから学んだのはものづくりにおける表現の重要性です。最初にそれを強く感じたのは、2014年2月に開催されたゴルフフェアでの当社のカーボン・ゴルフシャフトのブース展示でした。

齋藤 これまでは、ゴルフといえば緑のブースデザインが多かったのですが、セブンドリーマーズさんのシャフトの黒に合わせて、ブースのデザインも投影される映像も真っ黒にしました。

阪根 あまりの違和感にメディアが続々と集まってきて、そこから2ヵ月間、取材依頼の電話が鳴り止まない毎日が続きました。「表現次第でこれほど絶大な効果が得られるんだ」ということを肌身で実感しましたね。その後発売した「ナステント」のテレビコマーシャルもライゾマティクスさんに制作をお願いしたのですが、これにも驚かされました。医療機器の広告なのにアニメーションを使用するという斬新なアイデアだったからです。

齋藤 「ナステント」は鼻に入れるチューブですが、その使い方を人体モデルやCGで説明するとあまりにもグロテスクになってしまいます。女性ユーザーも念頭に置いた商品だということなので、広告表現や商品パッケージも柔らかくしてみました。

阪根信一氏

イノベーション×ブランディング
これからのあり方

阪根 そして極め付きが、2015年に開催されたCEATEC JAPANにおける「ランドロイド」のプロトタイプのお披露目です。こちらもブースを真っ黒にして、周囲との違和感を際立たせたことがお披露目の効果を高めました。幸い、会場のど真ん中という絶好の位置を確保できたのですが、前日のメディア発表会も完全に無視して、当日までブース全体を真っ黒なカーテンで覆っておきました。

これでメディアも俄然興味を持ってくれたのでしょう。私や関係者が初日の開場直後にブース上に立ち、いよいよ幕を下ろすと、周りには大勢のメディアが取り囲んでいました。それから閉幕までの4日間、どんどん人が増えて、毎日テレビに取り上げられ、世界23ヵ国のネットでトップニュースになりました。あまりにも反響が大きすぎて、「わけのわからないことが起こっている」と戸惑ったほどです。

齋藤 日本のものづくりは技術ばかりに注力しがちですが、明確なブランドづくりや効果的なプロモーション活動なども、ものづくりにおける重要な要素だと思います。

シリコンバレー企業は、ものをつくるだけでなく、プロモーションにもしっかりと投資して売ることを考える。けれども日本のスタートアップやベンチャーは、ブランディングやプロモーションにほとんどお金をかけません。それが、日本発のイノベーションが飛躍できない大きな原因の一つになっていることを痛感していました。技術が素晴らしいことはもちろんですが、プロモーションにもしっかりと投資をしたことが、世界中が「ランドロイド」に注目する大きなきっかけとなったことは間違いありません。

齋藤精一氏

阪根 実は2015年のCEATEC JAPANに出展する直前、当社は1年がかりで約15億円の資金調達に成功していたのですが、そのうちの数千万円を出展費用に投じました。「2~3年後に発売する商品のために数千万円も使うとは何事だ」と非難も浴びましたが、ここで世界中にニュースを広めないと、次の資金調達もできないし、何より開発に必要な技術者が集まらないと思って勝負に出たのです。齋藤さんがおっしゃるように、ものづくりにはイノベーションだけでなく、ブランディングやプロモーションがいかに重要なのかということを結果で知ることができました。

われわれのような“どベンチャー企業”でも、ライゾマティクスさんのような最高のパートナーと手を組めば、「イノベーション×ブランディング」の効果で世界に大きく羽ばたけるのだということをぜひ知っていただきたいですね。

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