イノベーター達の挑戦 Vol.2「スタートアップの原点」

イノベーションと反骨心がスタートアップ精神

全自動衣類折りたたみロボット「ランドロイド」で話題のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ代表取締役社長・阪根信一氏が、 各界のイノベーターと対談する連続企画の第2弾。今回は元LINE代表取締役社長で、 退任後に立ち上げた女性向け動画ファッションマガジン「C CHANNEL」が 若い女性に大人気のC Channel代表取締役社長・森川亮氏を招き、スタートアップの原点について語り合った。

コミットしてやりきる、それが原点

阪根 森川さんは、今や日本で知らない人はいないLINEの元代表取締役社長ですが、現在はC Channelの代表取締役社長として、まったく新しいビジネスに取り組んでおられます。まずは「C CHANNEL」とはどんなメディアなのか? そして、なぜ成長著しいLINEをあえて辞めてまで、新しいビジネスに挑んだのかについてお聞かせください。

阪根信一氏

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ
代表取締役社長

阪根信一

University of Delaware(米国)にて化学・生物化学科専攻 博士課程修了。Glenn Skinner 賞(博士課程最優秀賞)受賞。2008年7月FRP専業メーカーのスーパーレジン工業株式会社 代表取締役社長に就任。2014年セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社設立。カーボン事業、ヘルスケア事業の他、全自動衣類折りたたみロボット「ランドロイド」を開発するロボティクス事業を推進している。

森川 「C CHANNEL」は2015年4月に創刊した女性のための動画ファッションマガジンです。現在、日本のほか、韓国、中国、台湾、タイ、インドネシアなどアジア10ヵ国・地域でサービスを展開しており、月間7億人が視聴しています。

私は大学卒業後、テレビ局に入社し、その後ソニーに転職しましたが、会社員時代から自分で事業を立ち上げ、好きなように予算を取って仕事をしてきました。36歳でLINEの前身企業に転職したときには、年収が半分になりましたが、早々に事業部長になり、入社翌年には売り上げを10倍に増やし、その翌年にはさらに5倍にしたことで、気が付いたら社長になっていました。

何かにコミットしたら、しっかりやりきることが重要だというのは、大企業もベンチャーも変わらないと感じましたね。

阪根 「LINE」の事業を始めたのは社長になってからですか?

森川 もともとはゲーム事業に関わっていたのですが、グーグルのエンジン型検索に対抗してソーシャル型検索サービスを始めることになり、そのためにはコミュニケーションのベースとなるツールが必要だろうということで、いろいろなアプリを立ち上げたんです。東日本大震災が発生し、スマートフォンによるコミュニケーションの大切さが認識されたこともあって大ヒットしました。

「やめておけ」という意見への反骨精神

阪根 ところが「LINE」が大成功を収め、黒字化と株式上場が目前に迫ったところで退職されていますね。理由は何だったのでしょうか?

森川亮氏

C Channel
代表取締役社長

森川亮

筑波大学卒業。 日本テレビ、ソニーを経て2003年ハンゲームジャパン株式会社(後のNHN Japan株式会社。現LINE株式会社)に入社。2007年には代表取締役社長に就任。 2015年3月、同社代表取締役社長を退任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。

森川 LINEは韓国系企業なので、いろいろな国で事業を展開し、部下も半分以上は外国人でした。そうした環境の中にいると、どうしても日本人や日本企業の元気のなさを痛感せざるを得なかったんですね。自分を育ててくれた国に恩返しをするためにも、日本を元気にする事業を立ち上げたいと思いました。

では、なぜ女性のための動画ファッションマガジンにたどり着いたのかと言えば、そもそもは「メディア産業を変えたい」と思ったからです。今の小学生や中学生に話を聞くと、みんな政治家や経営者にはなりたくないと言う。それは、メディアから流れてくる政治家や経営者のイメージが悪いからです。日本の大人にいい人はいない、だから日本はだめなんだと子どもたちがあきらめてしまわないように、もっと頑張っている人たちを積極的にアピールできるようなメディア産業に変えていきたいと思いました。

とはいえ、いきなりそれをやろうとすると敵も増えますし、すぐに儲かるものでもないので、まずは収益が上がりやすい女性向けのメディアを立ち上げることにしました。

阪根 男性をターゲットにすると収益が上がりにくいということですか?

森川 これまでにいろいろな事業を立ち上げた経験で言うと、おじさんたちからは必ず「絶対にうまくいかないからやめておけ」と言われるんですね(笑)。そこで気づいたのは、男性向けに新しいことをやるのは厳しいということ。そこで、まずは発想が柔軟な女性をターゲットにすることにしました。

さらに、海外向けに日本のいいところをアピールしたいと思っていたので、比較的訴求力の高い美容や食などにテーマを絞りました。

トイレ掃除からのスタート

阪根 C Channelでは、森川さんのキャリアの中で初めて、創業社長として事業をスタートしたわけですが、それまでのキャリアとの違いを痛切に感じた点は何でしょうか?

森川 最初にオフィスを構えたのが、原宿にあった雑貨屋を改装した店舗物件だったのですが、普通のオフィスビルと違って掃除をしてくれる人がいませんでした。それで「トイレ掃除をどうしようか」というところから始まり、社員で掃除当番を決めたりしました。仕事そのものについては、大企業にいたころから社内ベンチャーを立ち上げたりしていたので、特に違いや戸惑いを感じることはありませんでしたね。

阪根 創業には、リアルにお金の問題も関わってきますよね。そのあたりは?

森川 幸いなことに、新しい事業を立ち上げることを発表したら、まだ事業計画も固まっていないのに、投資したいという方が次々と手を挙げて5億円ぐらい集まったんです。ただ、事業を始めて1ヵ月も経たないうちに「いつ事業総額が1兆円になるんですか?」とか、記者発表会で「いつ黒字化するんですか?」と聞かれたのはつらかったですね(笑)。

阪根さんは、お金についてはどのような苦労をされましたか?

阪根 当社は鼻からチューブを挿入して気道を確保する医療機器「ナステント」を2014年7月に発売していますが、その半年ほど前、資金調達のためにシリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)数社を訪問しました。ところが、ナステントの評判は非常に良かったのですが、当時発売したばかりのオーダーメードの「カーボンゴルフシャフト」や、まだプロトタイプも出来上がっていなかった「ランドロイド」の話をしたら、どのVCも同じように顔を曇らせて、「『ナステント』以外の事業を売り払ったらもう一度来い」と言うんです。

最後の1社に食い下がって理由を尋ねたところ、「ハードウェア系のスタートアップは1%成功するかしないかの厳しい世界だ。どれだけ技術力があるのか知らないが、1つに専念するならまだしも、まったく新しい製品を3つ同時に開発するなんてあり得ない」と聞かされ、結局、米国での資金調達はまったくの空振りに終わってしまいました。

そのせいもあって、「ナステント」を発売した直後に一時資金が底を突き、倒産寸前にまで追い込まれました。幸い、3事業のすべてを評価してくださった日本の事業会社の支援を受けて、何とか生き延びることができましたが。

森川 「C CHANNEL」の場合は、立ち上げ当初から周囲の期待は大きかったものの、最初の半年はなかなかサービス指標が伸びなくて悩みました。女性向けのメディアにもかかわらず、男性目線でセクシーなモデルを使ったことが叩かれ、あわてて女性好みのモデルの選定やコンテンツ作りを模索するなど、苦労の連続でしたね。

阪根 「C CHANNEL」は、日本発の情報を、アジアを中心とする世界に発信するメディアだそうですが、どのようなテーマを発信していきたいと考えていますか?

森川 今世界中で料理のレシピ動画が配信されていますが、そのアクセス数の3分の1は和食だと言われています。やはり和食は日本の一番の強みなので積極的に発信していきたいですね。美容では、特に日本のネイルがアジアから注目されているので、情報発信に力を入れています。

「C CHANNEL」スマホ画面

SNSファン数延べ2000万人を突破した女性向け動画ファッションマガジン「C CHANNEL」

「C CHANNEL」は、日本最大規模の女性向け動画ファッションマガジン。女性に関心が高い美容や食などのテーマを中心に、短い時間で手軽に視聴できる動画をクリッパー®(タレント・読者モデルなどのインフルエンサー)とともに撮影・制作し、日本だけでなく、アジアなど世界に向けて発信している。

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