イノベーター達の挑戦 Vol.3「イノベーションとは?」

日本発イノベーションを起こす条件

イノベーション=反対を押し切る歴史

阪根 イノベーションを起こすためには、周囲や世の中の反対を押し切る力も必要なのではないでしょうか。

例えば、当社が2014年から販売している「ナステント」は、おかげさまでこれまで140万本を販売していますが、開発中は「こんな商品、売れるはずがない」と散々にこき下ろされました。鼻腔にチューブを挿入して、睡眠時の無呼吸やいびきを抑える製品なのですが、「鼻の中にチューブを入れたまま寝たいと思う人はいない」と。米倉先生がおっしゃるように、当時としては「ナステント」も「わけのわからないもの」の一つだったのでしょう。

しかし、実際に製品化して売れるようになると、世間の反応は大きく変わりました。どんなに反対されても、成功を信じて押し切る力が大切なのだと感じました。

阪根氏、米倉氏 対談

米倉 「ランドロイド」にしても「ナステント」にしても、「世の中にないものをつくろう」とする阪根さんの執念には、ものすごいパワーを感じますね。だいたい市場受けするものは市場が限られている。未知のものは初めは受け入れられないものです。

阪根 「ランドロイド」は1月にラスベガスで開催された「CES 2018」にも出展したのですが、おかげさまで好評でした。興味深かったのは、男性と女性の反応が大きく違ったことです。男性からは「米国の家庭にはお手伝いさんがいるので、こんな機械はいらない」などと言われましたが、女性は「お手伝いさんだって洗濯機や乾燥機は使うわよ。衣類折りたたみ機があってもいいんじゃない」という声が多かったのです。国が違っても、男性より女性のほうが柔軟な発想を持っているというのは変わらないと思いました。

失敗を奨励する文化をつくる

阪根 ところで、イノベーションに挑戦するためには、資金調達や人材の確保など、さまざまな準備が不可欠ですが、その過程にはいくつもの困難や失敗が待ち受けているものです。

イノベーターにとって、失敗はむしろ大切なものだと思うのですが、米倉先生はどうお考えですか?

米倉 米国のベンチャーキャピタルは、同じようなビジネスプランを持ってこられた場合、過去に失敗したことのある会社を選んで投資すると言います。

失敗したことのある会社のほうが、痛い思いとともに豊富な経験を積んでいるので、次は成功できる可能性が高いだろうと判断するんですね。

ところが日本では、失敗した会社はなかなか評価されない。失敗を通じて会社がせっかく学んだ経験を最初から否定してしまうのです。これでは、米国に勝てっこありません。

デザインシンキングという考え方が世界的に注目を集め始めたころ、一度本格的に学んでみようと思い、六十の手習いでスタンフォードにあるSAPの研究所に勉強に行ったことがあります。

阪根信一氏

それはとてもシンプルでした。「まずやれ。そして失敗しろ」というのがデザインシンキングのすべてだったのです。早く失敗すれば、それだけ早く学べて、早く成長できる。ああ、そういうことなのかと思いました。

早く成長するためには、物事に取り組むときに、課題から入ることも大切です。われわれ日本人は技術から入ることが多いじゃないですか。そうではなく、まず何が問題なのか、何を解決したいのかを決める。それさえ決まれば、ソリューションはいくらでもあるわけです。

あとは急いでプロトタイプを作り、失敗しては学び、失敗しては学びを繰り返す。そういうことができるようになれば、日本企業は必ず強くなると思います。

失敗を奨励する文化をつくる。それがイノベーションの原点ですよね。

阪根 世界では時々とんでもないイノベーションが起こっているのに、日本ではなかなか起こりません。最後に米倉先生にうかがいたいのですが、これから日本がイノベーションを起こしていくためには、どうすればいいのでしょうか?

「ランドロイド」の未来

米倉 繰り返しになりますが、まずは失敗すること。そして、「失敗するやつがいちばんすごいんだ」という文化を日本に早く根付かせることです。

それと、ものづくりや市場の創出に技術から入ろうとするのはやめたほうがいい。今でも「iPhoneの中身の80%は日本製だ。やっぱり日本はすごい」などと言う人がいますが、自らiPhoneを作って売れるような国にならないと。技術がどんなにすごくても、下請けになってしまう。これでは意味がありません。プラットフォームを取りに行かなければならないと思います。

米倉誠一郎氏

「ランドロイド」も、将来的には単体の製品ではなく、いろいろなものとつながるプラットフォームの中核となることを目指すべきでしょうね。「ランドロイド」を買わないと、ほかのものが動かなくなるといった感じで。

阪根 先ほど米倉先生から、技術からではなく、課題から入ることが大切だというお話がありましたが、実は「ランドロイド」の開発も課題から出発しています。

私の妻に「家の中で使うもので、どんな製品がほしい?」と聞いたところ、「洗濯物の自動折りたたみ機に決まっているじゃない」と言われたことが始まりでした。

米倉 家庭用としても課題解決になると思いますが、より大きな社会的課題を解決するのにも「ランドロイド」は役立つのではないでしょうか。例えば、今中国では日本以上に少子高齢化が進んでいます。病院や介護施設が増える一方、少子化によって人手が減れば、代わりに施設のタオルやシーツをたたんでくれる機械は重宝されるはずです。ものすごく画期的なソリューションになるかもしれない。さらに、できることなら「ランドロイド」を中核とする家庭内のエネルギーマネジメントを構築して、世界的なプラットフォームを築いてほしいですね。

阪根氏

阪根 そもそも「ランドロイド」はプラットフォーム化を前提としたIoTデバイスとして開発されています。すでに構想を発表していますが、衣類をたたんで仕分けするだけでなく、外出先からでも専用アプリ上で仕分けされたクローゼットの中身を把握して、足りない服が買える「オンラインクローゼット」も実現する予定です。

米倉 実際に「ランドロイド」のデモを見せてもらいましたが、乾燥機から取り出した衣類をそのまま入れるだけで、とれもきれいに折りたたんでくれるんですね。実に面白い。 「わけがわからない」という印象は変わりませんが、夢があるから面白さを感じるんでしょうね。これからもいい意味での失敗を重ねて、夢のあるイノベーションを実現してください。

阪根信一氏と米倉誠一郎氏
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セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 阪根信一氏 × 日本交通株式会社 代表取締役会長 川鍋一朗氏
イノベーター達の挑戦 Vol.4

対談イベント開催決定

阪根信一氏(セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役社長)
×
川鍋一朗氏(日本交通株式会社 代表取締役会長)
日時:3月1日(木)16:40~17:30(16:25受付開始)
場所:表参道ランドロイド・ギャラリー
参加無料

受付終了

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