イノベーター達の挑戦 Vol.4「オリジナルとしての矜持」

テクノロジーの力で既存産業をアップデート

全自動衣類折りたたみロボット「ランドロイド」で話題のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ代表取締役社長の阪根信一氏が、 各界のイノベーターと対談する連続企画の第4弾。今回は日本交通代表取締役会長であり、 タクシー配車アプリ「全国タクシー」が話題のJapanTaxi代表取締役社長の川鍋一朗氏と対談した。

旧態依然とした業界の改革について、同世代の2人が語り尽くす。

出会いは「ナステント」

阪根 私たちセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズは、世の中にないものを創り出す技術集団としてイノベーションに取り組んでいます。

例えば、こちらにあるのは全自動衣類折りたたみロボット「ランドロイド」の最新デモ機ですが、約13年の歳月と約40億円の研究・開発費をかけて開発を進めてきました。このデモ機を使って、対談中に衣類をたたんでみましょう。操作はとても簡単です。まず、最下段の「インサート・ボックス」を開いて衣類を投入し、「サークル・インターフェース」という操作ダイヤルを7:00の位置に回します。これで、自動折りたたみ作業がスタートします。

では、対談を始めましょうか。私が川鍋さんと初めて会ったのは、日本交通の代表取締役社長になられて、『タクシー王子、東京を往く。』(文藝春秋)を出版されたしばらく後、2015年ごろだったと思います。

川鍋 そうですね。最初は「ランドロイド」ではなく、完全オーダーメイドのゴルフシャフトとか、快眠をサポートする鼻腔挿入デバイス「ナステント」などを販売されて間もないころでした

阪根信一氏

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ
代表取締役社長

阪根信一

University of Delaware(米国)にて化学・生物化学科専攻 博士課程修了。Glenn Skinner 賞(博士課程最優秀賞)受賞。2008年7月FRP専業メーカーのスーパーレジン工業株式会社 代表取締役社長に就任。2014年セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社設立。カーボン事業、ヘルスケア事業の他、全自動衣類折りたたみロボット「ランドロイド」を開発するロボティクス事業を推進している。

阪根 「ナステント」は、眠気と闘いながら運転されているタクシードライバーさんたちに絶対貢献するということで、お話に行かせていただきました。

川鍋 不思議な会社だなと思いました。ゴルフシャフトに医療機器と来て、次に全自動衣類折りたたみロボットですからね。まったくジャンルの異なる製品を3つも同時に開発する会社ってないじゃないですか。

阪根 ありがとうございます。紹介が遅れてしまいましたが、川鍋さんは私が知っている経営者の中でも、最高に魅力的で、エネルギッシュにチャレンジをしている方です。現在は日本交通だけでなく、JapanTaxiという会社の代表取締役社長も務めておられます。

川鍋 「全国タクシー」というタクシー配車アプリを提供しているJapanTaxiの川鍋です。以前は、祖父の代からの家業である日本交通というタクシー会社の3代目社長でしたが、今は家族以外の者に社長職を譲って、会長を務めています。

JapanTaxiでは、タクシー配車アプリなどを通じて、次のモビリティの領域に、タクシー産業全体をどうやって乗せていくかということを日々考えています。一言で言えば、既存のタクシー産業をテクノロジーの力によってアップデートしていく役割を担っていきたいと考えています。

業界の地殻変動を体感

阪根 まず興味深いのは、日本最大のタクシー会社の社長でありながら、いきなりその経営を他人に任せて、JapanTaxiというベンチャー企業を立ち上げられた点です。挑戦のきっかけを聞かせてください。

川鍋 1912年に日本初のタクシーのサービスが始まってから106年、私の祖父が日本交通を創業してから90年になります。祖父、父と続いて、私が3代目を継いだのは2005年でした。

そのときはこのまま社長を続けていくのだろうと考えていました。ところが、2013年のことです。「どうもウーバーという新しいサービスが始まったらしい」と聞きつけ、シリコンバレーに見に行きました。そのころすでに日本交通は「全国タクシー」を始めていたので、「配車アプリならうちのほうが先じゃないか」と思っていたのですが、実際に体験してみて「なるほど」と思いましたね。100年続いてきた日本のタクシー産業が根底からひっくり返される可能性があるのではないかと直感しました。

川鍋一朗氏

JapanTaxi
代表取締役社長

川鍋一朗

1993年慶應義塾大学経済学部卒業。1997年ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社を経て、2000年に日本交通株式会社に入社。2005年同社代表取締役社長に就任。2015年に同社代表取締役会長に就任すると同時に、JapanTaxi株式会社を立ち上げ、同社代表取締役社長も兼任。2017年には全国ハイヤー・タクシー連合会会長に就任。

日本のタクシー産業は、タクシー会社が運転手の品質を担保しています。でも、ウーバーはまったく逆でした。乗車する人たちが運転手をレーティング(評価)して、その役割を担うわけです。目指す山は一緒でも、逆の登り口から登っているような感じですね。

しかも、GPSによる位置情報で、お客さまと近くを走っているクルマをすぐにマッチングできますし、乗車履歴も残ります。その履歴を使えば、「どこに行けばお客さまがいる」ということをAIが簡単に予測できるわけです。日本のように、ベテラン運転手が勘と経験に頼ってお客さまのいる場所を探すのとはまったく違います。

この地殻変動のような変化に何とか立ち向かわなければならないと考え、JapanTaxiを立ち上げ、ベンチャー企業の社長になりました。

阪根 私たちは同い年なので、川鍋さんの活動はつねに興味深く拝見していました。ところがある日、SNSを見たら「本日をもってベンチャー企業の社長になりました」と書かれていて。この人、何を考えているんだろうと(笑)。

川鍋 シリコンバレーから帰ってから1年間は思考停止でした(笑)。次の1年で日本交通のバトンを渡す人材を見つけて、ベンチャーに専念することにしました。JapanTaxiを設立したのは2015年8月のことです。日本交通でパソコンの設定などを行っていた若者たちを引っ張り、その中で一番できる人材が中古のマッキントッシュを使ってアプリを作ったのが最初です。

エンジニアとの肌感覚の違い

阪根 設立したばかりのころは、いろいろとご苦労があったのではないでしょうか?

川鍋 エンジニアを採用するところからひと苦労でした。当時の事務所は北赤羽にあったのですが、場所が悪かったようですね。人材紹介会社の人に聞いたら、「エンジニアは渋谷とか恵比寿に勤めたい人たちだから、埼京線沿線の会社には来ない」と言われまして。

そのうえ、「出勤時間が朝9時というのも早過ぎる。11時でしょう」と(笑)。日本交通の営業所は朝早い出勤ですからね。相当なギャップを感じました。

阪根 北赤羽にあった事務所の写真を拝見しましたけど、まるで田舎の市役所のような雰囲気でした(笑)。こんな机がいまだにあったのかという感じでしたし、蛍光灯には1本ずつ紐が付いていて。省エネのために、使わない蛍光灯は消す仕組みでしたね。

川鍋 タクシー会社の常識と、エンジニアの常識の肌感覚の違いも痛感しました。タクシー会社では遅刻を数回したらペナルティということもあります。お客さまをお待たせするわけにはいきませんからね。

でもエンジニアに同じことを言ったら、全員すぐに辞めてしまいます。遅刻をいかに許容する心を持つかということに苦労しました。

一方で、彼らは素晴らしいと思うこともたくさんあります。タクシー会社の人間とは阿吽の呼吸が整っているので、こちらが頼んだことはしっかりやってくれる。でも、その成果は私が期待する水準のプラスマイナス10%ぐらい。ある意味、予定調和なんですよね。

ところがエンジニアたちは、裁量を与えて自分たちが興味のある仕事を任せると、短期間でものすごくいいものを創り上げる。働き方や、モチベートする行動様式が全然違うんです。細かいことを気にしていてもしょうがないし、ウーバーに負けてしまうので、彼らの行動様式の中で、どうやって自分がやりたいことを表現していくのかを考えるようになりました。

配車アプリ「全国タクシー」 アイコン

配車アプリ「全国タクシー」

全国47都道府県、6万台以上に対応する、日本最大のタクシー配車アプリ。これ一つで料金検索、配車、予約のすべてを行える。他にも、空港定額や、ネット決済のサービスがあり、タブレット端末搭載車においては、到着前に支払い手続きが行える「JapanTaxi Wallet」にも対応する。

/landroid 大切な人に、次の自由を。 詳しくはこちら
イノベーターたちの挑戦  Powered by seven dreamers

本サイトは、パートナーとともに、日経BP社が企画・制作しているWebメディアです。
運営会社:日経BP社 www.nikkeibp.co.jp  パートナー:セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 https://sevendreamers.com/

Copyright © 1995-2017 Nikkei Business Publications, Inc

PAGE TOP