イノベーター達の挑戦 Vol.4「オリジナルとしての矜持」

旧態依然とした業界との闘い

ユーザー体験の変革

阪根 川鍋さんがタクシーという旧態依然とした業界にITを持ち込んだ結果、いろんなことが変わり始めていますね。

川鍋 お客さまの体験をガラリと変えるということには、日本交通時代からいろいろ取り組んできました。これまでの17年間で、大きく3つの節目がありました。1つ目はスイカなど交通系ICカードによるタクシー料金決済の導入、2つ目は「全国タクシー」のリリース、3つ目はJapanTaxiをつくってから開発した「JapanTaxi Wallet」(ジャパンタクシー・ウォレット)です。

「JapanTaxi Wallet」は、乗車料金を到着時ではなく、乗車時に支払えるようにした画期的なサービスです。「全国タクシー」アプリで事前にクレジット情報を登録しておくと、乗車時にアプリでチェックインするだけで支払い手続きが完了します。降車時に運賃が確定すると、その金額が登録されたクレジットカードで決済される仕組みです。

このサービスを使えば、降車時に現金を出してお釣りをもらったり、クレジットカードで決済したりする手間がありません。目的地に到着したら、すぐにでも駆け出したいお客さまにとっては、支払いのための1秒が10秒にも1分にも感じられるはずですが、乗った時点で決済が完了すれば、そうしたイライラが解消できるわけです。

阪根信一氏と川鍋一朗氏 対談の様子

阪根 まさにテクノロジーの力ですね。

川鍋 テクノロジーによってお客さまの利便性を高めることに、最大限の力を入れていかなければならないと思っています。今は車内に搭載したタブレットに広告を掲載し、それによって決済手数料を安くすることなどに取り組んでいます。お客さまの利便性が高まるだけでなく、タクシー会社の生産性も上がるような仕組みをどんどん生み出していきたいですね。

阪根 旧態依然としたタクシー業界をどのように変えていきたいと思っていますか?

川鍋 例えば東京のタクシー会社の中には昔からのライバルもいますが、地殻変動に立ち向かうために一緒になって闘いましょうと働き掛けています。今年2月には代表取締役副社長COOを迎え入れました。これからはなるべく“川鍋色”を消して、誰もが参加しやすいカタチに持っていきたいと思っています(笑)。

動く情報収集端末としてのタクシー

阪根 JapanTaxiとして今後目指していくものは何でしょうか?

川鍋 日本のタクシーのプラットフォームづくりですね。ウーバーがあればいいじゃないかと言う人もいますが、米国や中国のプラットフォームに席巻されたら、日本の地方交通は立ち直れなくなるのではないかと危惧しています。

日本のタクシー移動の98%以上は、それぞれの地方の人によるローカルな移動なんです。タクシーは地方交通の要であると言ってもいいでしょう。それを海外企業がやる理由はありませんし、われわれが守っていかなければならない。いざとなったときに、米国や中国の企業はデータを出してくれませんからね。

タクシー産業を守るといった小さな話ではなく、そこを飛び越えて日本人の移動をアップデートしていくことを考えるべきだと思います。

阪根 海外勢にプラットフォームを奪われないための秘策は?

川鍋 私の中で100%確信しているのは、タクシーの移動データの活用です。例えば自動運転は、クルマに搭載されているセンサーが道路や周辺状況を感知しながら運転する技術だと思われていますが、それは半分なんですね。自動運転地図というものがあって、その地図をもとにセンサーが差分を検知しながら進むのが自動運転なんですよ。

その地図をどう作成するのかと言えば、グーグルマップのストリートビューのように、カメラ付きのクルマで全国の道を走りながら撮影してつくります。

阪根信一氏

けれども、ストリートビューならクルマを一度走らせるだけで終わりですが、道路や周辺の状況は日々刻々と変化しています。地図との違いがたった10センチ生じただけでも、自動運転車はぶつかってしまう危険があるのです。なので、つねに最新の状況をアップデートしたほうがいいわけですが、タクシーならそれができるはずです。タクシーが動く情報収集端末として機能する時代がやって来たと言えるのではないでしょうか。

阪根 タクシーがアプリで呼べるようになったというレベルの話ではないわけですね。

川鍋 そうしたタクシーの活用方法のフォーマットをつくって、業界全体に広げていきたいというのがわれわれの目指すところです。JapanTaxiという会社が、タクシー産業の変革を促す入り口になれればいいと思っています。

阪根 同じような動きは、JapanTaxiだけでなく、他の日本のタクシー会社も始めているようですが?

川鍋 まあ、でもうちがオリジナルですから。絶対に負けないですよ。

目指すべき未来

川鍋一朗氏

阪根 最後に勝負を決めるのは、スタートアップとしての意志と根性と勇気だと思います。スタートアップを立ち上げてからここに至るまでに苦労を感じたのはどんな点ですか?

川鍋 新しく出会った人たちと運命を共にすることの難しさですかね。せっかく集まったメンバーたちが仲違いするといったことが日常的に起きていて、日本交通の社長をしていたときよりも、ベンチャー社長になったこの2年半のほうが寝つきが悪いですね(笑)。

阪根 ベンチャーが大変だということには100%同感できます。最後になりますが、川鍋さんが目指す未来、JapanTaxiのイノベーションとはどういうものでしょうか?

川鍋 移動で人を幸せにしたい、ということですね。例えば、週末に子どもとスキーに行くときに自動運転車で行けるとか。少なくとも高速道路だけの自動運転は、かなり近い将来に実現するはずです。そのときにわれわれはどうするのかというと、高速に乗るまではうちの手配した乗務員が運転して、高速を降りるときにも乗務員が待っているといったサービスも考えられると思います。

タクシー産業がこれまで培ってきたリソースを最大限利用しつつ、新しいテクノロジーと組み合わせて、移動で人を幸せにする世界を創りたいですね。

ランドロイドの説明をする阪根信一氏

阪根 ありがとうございます。お話をうかがっている間に、ちょうど「ランドロイド」が衣類をたたみ終えたようですので確認してみたいと思います。

もう一度最初から説明しますが、「ランドロイド」に洗って乾かした衣類を投入して、「サークル・インターフェース」の針を7:00の位置に回すと、折りたたみがスタートします。

作業を開始すると、7:00のところで白色のLEDランプが点滅します。作業が完了すると、12:00の位置まで青色のLEDランプが点滅します。まだ途中ですが、いったん作業を止めて扉を開いてみましょう。

ご覧のとおり、衣類はきちんと折りたたまれています。1枚の衣類をたたむのに要する時間は10分ほど、一度に投入できる衣類は20~30枚ほどです。

これはまだプロトタイプですが、いよいよ来年には発売される予定です。

川鍋 とても楽しみですね。われわれが移動で人を幸せにするのと同じように、衣類をたたんで人を幸せにする未来がやって来ることを期待しています。こちらこそありがとうございました。

阪根信一氏と川鍋一朗氏
TOPページへ
イノベーターたちの挑戦  supported by Nikkei BP Vol.4
セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 阪根信一氏 × 日本交通株式会社 代表取締役会長 川鍋一朗氏
イノベーター達の挑戦 Vol.4

対談イベント開催決定

阪根信一氏(セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役社長)
×
川鍋一朗氏(日本交通株式会社 代表取締役会長)
日時:3月1日(木)16:40~17:30(16:25受付開始)
場所:表参道ランドロイド・ギャラリー
参加無料

受付終了

/landroid 大切な人に、次の自由を。 詳しくはこちら
イノベーターたちの挑戦  Powered by seven dreamers

本サイトは、パートナーとともに、日経BP社が企画・制作しているWebメディアです。
運営会社:日経BP社 www.nikkeibp.co.jp  パートナー:セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 https://sevendreamers.com/

Copyright © 1995-2017 Nikkei Business Publications, Inc

PAGE TOP