空気予報 空気の未来を考えよう
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断熱リフォームが高齢者を救う
市場規模編

2016.12.28

(文/松尾 和也=建築家)

高齢者の死亡原因となる「ヒートショック」。それを防ぐ暖かいお部屋を作るのが、エアコンと同時に自宅の断熱材です。断熱リフォームがどういった効果を日本にもたらすか、松尾設計室(兵庫県明石市)の松尾和也さんに解説してもらいます。

松尾設計室(兵庫県明石市)代表の松尾和也さん。パッシブハウスジャパン理事。1998年九州大学建築学科卒業。日本建築家協会(JIA)登録建築家、一級建築士、APECアーキテクト

日本の既存住宅数は2013年時点で6063万戸です。同年の空き家率13.5%を除けば、実質的に人が暮らしていると考えられるのは5243万戸と計算できます。それに対し、同年の新設住宅着工戸数は98万戸です。日本は他の先進国よりも圧倒的に住宅寿命が短いので人口あたりの新築は多いほうですが、それでも6063万戸という既存住宅の数と比較すると、年間で1.6%でしかないことが分かります。

新築住宅のうち6割程度が1999年基準(次世代省エネ基準)を満たしていると言われています。こうなると1.6%×0.6=0.96%(≒1%)くらいしか、毎年、次世代省エネ基準以上の住宅が増えていないことになります。私がいつも「このレベルでは全く駄目だ」とこき下ろしている次世代省エネ基準ですが、それでも既存住宅から見れば、いまだ「次世代感」が漂うのは皮肉でもあり悲しい現実でもあります。

2011年時点で次世代省エネ基準の住宅は既存住宅の約5%程度というデータがあります。この5%の住宅のエネルギー消費量が仮に半分になったとしても、全体でのエネルギー削減量は2.5%しか変わりません。もちろん、毎年少しずつ古い住宅が壊され、省エネ性能が高い新築住宅に置き換わっています。しかし、そのスピードはあまりにも遅く、実効性に欠けます。住み替えが頻繁でないと仮定すると、「高齢者ほど築年数が古い無断熱住宅に住んでいる」という皮肉な組み合わせが浮かび上がってきます。

日本の住宅の省エネ基準への適合状況。1999年基準(次世代省エネ基準)は5%ほどしかなく、無断熱が4割ほどを占める(資料:国土交通省の2011年の資料を基に作成)

どちらかというと日本の省エネ住宅政策は、国のエネルギー安全保障が主題で決められている感が強いと思います。本来は「健康で快適な省エネ住宅を経済的に実現する」ためであるべきですが、そうはなっていない上、さらに顧客目線でない基準で多くの住宅がつくられていることも本当に残念なことです。