空気予報 空気の未来を考えよう
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断熱リフォームが高齢者を救う
市場規模編

2016.12.28

(文/松尾 和也=建築家)

高齢者は伸びしろが大きい市場

住宅を取得する世帯主の年齢として最も多いのは30歳代と言われています。しかし、この世代の人口はこれからどんどん減ることが確実で、金銭的にも厳しい世帯が多いです。高い空き家率からも明らかなように、これから新築が減っていく可能性は高いでしょう。

リフォームする世代は、新築のボリュームゾーンである30歳代の親世代の60歳代が圧倒的に多いです。そして次に続くのは、50歳代と70歳以上。今後、団塊の世代がもっと高齢化していき、人口が比較的多い50歳代が60歳代に突入していくことを考えると、これらの世代はこれから伸びしろが大きい市場になると思います。

戸建て住宅でリフォーム工事を行った施主の年齢。50歳代と60歳代で過半を占める(資料:住宅リフォーム推進協議会の2013年度住宅リフォーム実例調査を基に作成)

医療費の大半は高齢者が使っているという実態があります。次のグラフを見れば、高齢者の医療費を抑えることが国家の財政、高齢者の家計の両面において、いかに重要かが分かります。多くの高齢者は断熱性が低い住宅に住む一方で、身体的に弱くなり暖かさを必要としています。そう考えると、リフォームと断熱性の向上は極めて相性がいいと思います。

東京都健康長寿医療センター研究所が2011年に行った調査では、1年間で全国で約1万7000人がヒートショックに関連した「入浴中急死」に至ったと推計。そのうち高齢者は1万4000人と8割を占めていました。こうした現実も直視すべきです。

高齢者になるほど医療費が高くなる(資料:厚生労働省保険局の医療給付実態調査報告/年齢階級別1人当たり医療費「2010年度、医療保険制度分」を基に作成)

2014年度厚生労働白書によると、2010年の平均寿命は男性79.55歳、女性86.3歳、健康寿命(日常生活に制限のない期間)は男性70.42歳、女性73.62歳でした。平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味し、男性9.13年、女性12.68年で、介護を必要とする期間でもあると考えられます。

この期間をいかに短くするかが、経済的観点からも、高齢者本人およびその子供世帯の人生設計においても、非常に重要であることは言うまでもありません。日本の場合、寝たきりになった後の高齢者施設や要介護認定にばかり視点が行きがちですが、欧州では「いかに寝たきりにしないか」に最大限の労力を注ぎ込んでおり、様々な問題の解決を試みています。暖かい家に住むと病気になりにくくなることは、もはや「世界の常識」です。

続いての、リフォーム費用編ではリフォームにかかる費用や節約効果について探ります。

(日経ホームビルダーの2014年12月18日公開のウェブ記事より再構成)

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