空気予報 空気の未来を考えよう
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断熱リフォームが高齢者を救う
リフォーム費用編

2016.12.28

(文/松尾 和也=建築家)

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年間2兆7000億円もの冷暖房費を削減

省エネ基準の種類別の割合を、実質的に居住者がいる既存住宅の5243万戸と掛けあわせてみました。その結果、それぞれの省エネ基準の住宅のおおよその戸数を推測することができます。

省エネ基準の種類別におおよその戸数を推測した。次世代省エネ基準以外の住宅を、全て次世代省エネ基準を満足するまで断熱改修したと想定し、世帯あたりいくら冷暖房費が減るのかを計算。さらに、その結果にそれぞれの省エネ基準の予想戸数を掛けて計算した(資料:松尾和也)

なお、このデータに、国土交通省がまとめた「断熱レベルと年間の冷暖房費の比較」という資料を合わせて検討してみました。このデータは平均的な日本人の生活に基づいているので、部分間欠暖房での光熱費であると考えられます。

断熱レベルと年間の冷暖房費の比較(資料:国土交通省)

次世代省エネ基準以外の住宅を、全て次世代省エネ基準を満足するまで断熱リフォームしたと想定し、世帯あたりいくら冷暖房費が減るのかを計算してみました。さらに、その結果にそれぞれの省エネ基準の予想戸数を掛けて計算しました。すると、その結果は驚くべき数字となりました。

なんと、年間約2兆7000億円もの冷暖房費を削減することができます。この金額は、現在、「原子力発電所が止まったことで海外に余分に流出している」と言われている金額に近いです。

高断熱・高気密で年間5兆6000億円の節約

これだけでも十分にすごいのですが、さらに医療費の観点でも調べてみました。建築環境・省エネルギー機構の村上周三理事長、慶應義塾大学の伊香賀俊治教授、近畿大学の岩前篤教授による2011年の論文「健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価」によると、「高断熱・高気密住宅がもたらすNEB(ノンエナジーベネフィット)は、中所得世帯で年間約2万7000円であることが明らかになった」とあります。さらに、「自己負担率3割として医療費を求めているが、行政の負担は課税により結局、各世帯に帰すると捉え、社会的な負担も加味すると、5万9000(円/年・世帯)の便益をもたらすことになる」とも書かれてあります。

ここで、もう一歩踏み込んで考えてみます。「無断熱住宅」「1980年基準」「1992年基準」の住宅の合計予想戸数は4981万戸(世帯)です。これに先ほどの世帯あたりの医療費削減額をそれぞれ掛けてみました。

その結果は、家計のみの合計で約1兆3000億円、社会的負担を加味した合計は約2兆9000億円。これまた途方もなく大きな削減効果が出てきます。

さきほど計算した年間約2兆7000億円の冷暖房費削減額と合算すると、家計のみの合計で約4兆円、社会的負担を加味した合計で約5兆6000億円の年間節約金額となります。

次に、戸建てのリフォームの平均的な費用を調べてみました。住宅リフォーム推進協議会の2013年度住宅リフォーム実例調査によると、1軒あたり838万5000円です。この調査は性能向上を伴うリフォーム工事も一部含まれると考えられます。

一方、「健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価」の論文では、リフォームのうち断熱関連費用は200万円としています。そこで今回の試算では、838万5000円に71万5000円を加算して、断熱改修を伴うリフォームに掛かる費用をおおよそ900万円と仮定しました。

戸建てのリフォームの平均金額は838万5000円。この調査は性能向上を伴うリフォーム工事も一部含まれると考えられる(資料:住宅リフォーム推進協議会の2013年度住宅リフォーム実例調査を基に作成)

断熱性に劣る4981万世帯が、断熱改修を伴うリフォームに900万円を使うとすると、その総工事費は約448兆円にもなります。

さすがにこれを1年でやることは不可能です。そこで、ドイツでは2050年を目処に全ての建物の省エネリフォームを終えるという政策の基に動いています。これはドイツでも日本でもだいたい、年率3%程度ずつ既存建物をリフォームしていくペースに相当します。

実際には、戸建てかマンションかによって断熱リフォームの内容は大きく異なります。また、マンションの場合は中部屋か角部屋か、上下に部屋があるかどうかによってもかなり金額差が出ます。最も費用対効果が高い断熱リフォームの工事費の目安を示すと、次の表のようになります。

最も費用対効果が高い断熱リフォームの工事費の目安。最低限その断熱施工をするのに必要な下地やり替えなどの費用も含む(資料:松尾和也)