空気予報 空気の未来を考えよう
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断熱リフォームが高齢者を救う
リフォーム費用編

2016.12.28

(文/松尾 和也=建築家)

断熱リフォームは住宅業界を潤す

地球温暖化の危機的状況を避けるための臨界点は2050年ごろと言われています。そこで日本もドイツと同様に、2050年までに全ての既存住宅を次世代省エネ基準に断熱リフォームすると仮定してみました。

そうすると、残りの期間は約35年です(※2014年当時)。さきほどの約448兆円を35年で割ると、年間約12兆8000億円の工事に該当します。これだけのリフォーム工事が毎年あれば、とかく生産拠点が途上国に移転するばかりの状況において貴重な内需産業の確保にもつながります。ちなみに新築住宅98万戸の平均単価を2000万円とした時の総住宅工事費でも約20兆円ということを考えると、住宅業界の工事費が64%ほど増えるレベルに相当します。こうなれば、景気への波及効果も計り知れないでしょう。

これらの結果をまとめると、「高齢者の介護必要年数の短縮化」「医療費、介護保険料の削減」「エネルギー安全保障への貢献」「内需産業の拡大と景気への好影響」「家計の節約」「CO2削減」を同時に成し遂げることが分かります。だからこそ、ドイツではこれが政策になっているわけであり、英国では低断熱住宅には強制的に改修命令が出るということなのでしょう。自分で改めて計算した結果、なんとなく思っていたことが完全にふに落ちて理解することができました。

では、この結果を基に実務者はどうすべきかを考えてみましょう。誰もが知っている通り、今の日本でお金を持っているのは紛れもなく高齢者です。また、高齢者と子世帯は別居していることが多いです。「子世帯に迷惑を掛けないためのリフォーム」「介護地獄を回避するためのリフォーム」「ピンピンコロリするためのリフォーム」など、キャッチフレーズはいくらでもありますが、こうした断熱リフォームの価値を親身になってうまく伝えることができれば、一般のリフォームよりも高い確率で契約に至ることができるはずです。また、「死ぬ確率が高い所からお金を掛ける」という発想も、これからは欠かせないと考えています。

次のグラフを見ていただきたい。このデータで示される部屋は、どこもリフォームで後回しになるような部屋ばかりです。しかし、親世帯、子世帯ともに幸せに暮らすことを考えると、予算が限られている場合ほど「見た目だけきれいにするリフォーム」よりも、本質に踏み込んだ提案が真に顧客のためであり、同業他社との差別化にもつながっていくはずです。一人でも多くの実務者がこのような観点を持ってリフォームに関わっていただきたいと思います。

脳卒中の生じた時間と場所(某病院来診225人)(資料:トクヤマの「人と住宅の健康読本PARTII」を基に作成」)

(日経ホームビルダーの2014年12月18日公開のウェブ記事より再構成)