空気予報 空気の未来を考えよう
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エアコンの操作性はどのように進化したのか?

60年!エアコンの進化
エアコンの操作性はどのように進化したのか?

2016.09.29

(文/安蔵靖志)

「Eolia(エオリア)」1号機にはリモコンを搭載!

楽園1号機から、1988年に登場した「Eolia(エオリア)」ブランドの1号機「CS-227G」までの間に訪れた、操作面での大きな変化はリモコンの搭載だろう。赤外線リモコンを採用しており、本体右側面の扉の中に収納できるようになっている。

「Eolia(エオリア)」ブランドの1号機「CS-227G」(1988年製造)

このリモコンがまた出色だ。3枚のカードが付属しており、カードを入れ替えることで表裏を含めた6種類の動作モードを選べるようになっている。モードはリビング・ダイニング用の「だんらん」、子供部屋用の「まなび」、お年寄りの部屋向けの「やわらぎ」、寝室向けの「おやすみ」、省エネ用の「ひかえめ」、パワフル動作用の「ぱわふる」の6種類。カードには切り欠きのようなマークが付いており、それでカードの種類を判別しているようだ。

「Eolia CS-227G」のリモコン収納部

3枚のカードを収納し、入れ替えることでモードを切り替えられる

カードはスライドして入れ替えられるようになっている

なぜカードを入れ替えるスタイルを採用したのかというと、「テレホンカードなど、こういうのを入れるのが流行だったんです」と安田氏は語る。

「カードの制御を考える担当者『だんらんってどんなことをしたらいいんですか』と聞かれて、『人が集まるからちょっと温度を下げておこうか。たぶんご飯も食べるから温度も上がるだろうし、1℃ぐらい設定を変えよう』と話したことを覚えています。そうは言ってもお客さん好みもあるので、『高め』と『低め』が設定できるように、カードを入れた後に上から押せるようになっています」(安田氏)

その後には「カードを入れると全体が液晶タッチパネルになって設定が切り替わるというリモコンも出しました」と安田氏は話す。

カードが紛失したら困るし、カードを差し込む仕組みも故障や破損の恐れがあるため、今なら採用されないアイデアだろう。しかし創意工夫や試行錯誤の過程を現代になって見ると、とても興味深く感じられる。

リモコンにセンサーを搭載したのが「吹き分け」の原型

最近では人感センサーなどのセンサー技術がかなり進んでいるが、普及したのは「かなり最近で、2010年ぐらいからじゃないですかね」と安田氏は語る。

しかしその原型とも言えるものが、リモコンにセンサーを搭載した「呼びよせリモコン」だ。

呼びよせリモコンを採用した「Eolia GRシリーズ」のカタログ

「リモコンに内蔵した『快適フィットセンサー』が風や日射を検知することで、リモコンを置いた場所の空気の流れと日射と温度が分かるというものです。エアコン本体にセンサーが3つ付いていて、どこから入射した赤外線が強いかを検知することでリモコンの位置が分かりますので、そこでお客さんの位置(リモコンの位置)と快適度を測ってそこに風を送るというものです。でもそのためにたくさんの電池が必要になり、『リモコンお弁当箱』などと言われて怒られましたね(笑)」(安田氏)

室温センサー付きリモコンを採用するエアコンは現在もあるが、この「呼びよせリモコン」はその原型と言えるのかもしれない。

「薄型化」から徹底した「省エネ志向」へ

1988年発売のEolia 1号機の時代にはかなり室内機が薄型化したと紹介したが、Eoliaブランドが復活した最新のモデルでは室内機の奥行きがかなり増している。デザイン面では薄型の方が目立たなくていいのだが、軽薄短小化傾向にある日本の家電において珍しい方向への変化と言える。

「現在はグローバル全体で薄いエアコンが求められる傾向があります。開発側としては薄くて軽くて小さいエアコンが今後もずっと課題なのですが、そういう意味では日本は特殊ですね」(安田氏)

エアコンというと昔は「ぜいたく品」であり、「電気食い」の象徴でもあった。現在は昭和の時代に比べて省エネ性能がかなり向上しているのだが、未だに「電気代が高い」というイメージを持っている人が多いのではないだろうか。15年ほど前からはめざましい性能の進化が見られなくなったものの、性能面で後戻りすることはなかなか消費者に受け入れられるものではない。

「部屋の気密性が上がってお部屋に必要なエアコンの性能も下がり、2010年ぐらいから中間性能が重要視されるようになりました。それまでは定格運転(最大運転)時の電気代の勝負でしたが、インバーター搭載によって『中間性能』が重要視されるようになったのです。車で言うと『10モード燃費』のようなものですね」(安田氏)

当初はサーモスタットもないシンプルな「冷房」だったものが、温度制御が加わり、インバーター(モーターの周波数を変えることで回転数を制御する装置)によって自在にモーターのコントロールが可能になり、熱交換器も効率が向上した一方で、消費者の省エネ志向もさらに進んで今に至るというわけだ。

パナソニック アプライアンス社 エアコンカンパニー エアコン事業部
グローバル開発戦略担当(兼)開発管理部部長の安田透氏

「その間に『パワーエレクトロニクス』(電力を効率よくコントロールする半導体や電子回路のこと)の進化もありました。コンプレッサーもファンもモーターで動かすため、モーターの効率向上なども重要なポイントですね。モーターの効率は今も進化が進んでいます。冷凍サイクルは『熱交換』があるため、いくら効率を上げてもそのまま電気代低減には効きません。しかしモーターの電気代を下げるとそのまま効くのです。モーターを小型化して効率化しながら、それによって余ったスペースに熱交換器を入れるという形で日進月歩を今でも続けています」

こと「電気代」、現在の指標で言う「APF(通年エネルギー消費効率)」(1年間を通してある一定条件のもとにエアコンを運転したときの、消費電力1kWあたりの冷房・暖房能力のこと)については、かなり行き着くところまで来た感がある。しかし人感センサーなどをさらに高度化することで、APFなどの指標にも現れない省エネ性能の進化を図っている。今後どのように進化していくのかにも注目したいところだ。