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大空間を快適に保っていたのは“鉄仮面”! 縁の下の力持ち、業務用大型空調機の世界

大型空調機の世界
大空間を快適に保っていたのは“鉄仮面”!縁の下の力持ち、業務用大型空調機の世界

2016.10.31

(文/磯 修)

腕利きの職人の手で鉄板を曲げ、美しく溶接して作り上げる

吸収式冷凍機の製造ラインを歩いて感じたのが、「古きよき日本の工場」の姿を色濃く継承していること。無人で働く産業用ロボットはおらず、作業服をまとった職人が真剣なまなざしで業務にいそしんでいた。

製造工程を自動化していない大きな理由は、吸収式冷凍機の製品の特性だ。空調能力などでいくつかの機種をラインアップするものの、納入する施設に合わせて形状や仕様を細かく変更しなければならないため、産業用ロボットを用いて流れ作業で製造することは難しい。仕様書に合わせて、職人が1つひとつ部品を作りながら組み立てていくのだ。

製造途中の吸収式冷凍機。納入先に応じて細かく仕様を変える必要があるため、完全オーダーメードで作られる

工場内では、金属製のパイプを曲げて配管を作る作業や、厚さ数cmはある巨大な鉄板を曲げて外装を作る作業が進められていた。部品の加工を外注せず自前で作り上げることで、納期の短縮やコストの削減、安定した品質の維持を図っているのだ。

分厚い鉄板を曲げて作られた外装のパーツ。このような大型の金属部品も、すべてこの工場内で加工している

美しくカーブした鉄板も、職人が工作機械を使って作ったものだ

熟練の職人が随所で作業をしているなかで、吸収式冷凍機の品質を高めるためにもっとも重要なポイントは溶接だそう。組み合わせた金属と金属の間からわずかでも空気が漏れてしまうと空調の効率が落ちるだけでなく、稼働コストの増加や故障の発生にもつながる。そのため、高品質の吸収式冷凍機の製造においては、何よりも溶接の技術が求められるという。大泉工場で溶接を担当している職人の1人は、全国溶接技術コンクールで受賞したほか、群馬県の名工として紹介されているほどの腕利きだ。

工場の奥には、何本もの太いダクトや配管が用意された広い空間があった。ここは「試運転工程」と呼ばれる場所で、納入先と同じ環境を作ったうえで完成した吸収式冷凍機に配管し、実際に稼働させて全体の動作や安全装置の働きに問題がないかを検査する場所だ。すべての項目をチェックするには4〜5日かかるという。

吸収式冷凍機は、空調を止めることができない病院などへの納入例も多く、設置後に思わぬトラブルが発生して空調がストップする事態になれば大変なことになる。そのような事故の可能性をゼロにすべく、手間と時間をかけてでも出荷前にしっかり検査を実施するのだ。検査をクリアした吸収式冷凍機は厳重に養生がなされ、トレーラーに積載されて全国各地に旅立っていく。

最後に設けられている試運転工程のスペース。完成した吸収式冷凍機に何本ものダクトや配管を接続し、実際に動かして動作を検査する

取材時も、1台の吸収式冷凍機を試運転させていた。この検査でOKが出ない限りは出荷できない

今回は、エアコンの横綱ともいえる吸収式冷凍機について見てきたが、大泉工場ではオフィス・店舗用エアコンも生産している。停電時に自家発電で運転できる災害対応モデルなど、快適に加えて安心・安全も提供できる意欲作も見受けられた。次回は、業務用エアコンの最新事情や省エネ性能に迫ってみたい。

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