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日常を忘れて舞台を満喫できる環境を作る 最新ホールを快適にする大型空調の工夫

プロの矜持!大空間の空調
日常を忘れて舞台を満喫できる環境を作る!最新ホールを快適にする大型空調の工夫

2016.11.17

(文/磯 修)

舞台やミュージカルの鑑賞を趣味にしている人は多い。目の前のステージで繰り広げられる躍動感のある演技や生き生きとしたライブは、ステージと観客が一体になって盛り上がれることもあり、テレビや映画では不可能な感動が味わえる。会場となる劇場やホールに足を踏み入れた瞬間から、非日常のワクワク感で心が躍る人も多いだろう。

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そのような舞台が開催される劇場やホールは、厳かな雰囲気のクラシックコンサートであっても、観客が総立ちになるライブコンサートであっても、常に快適な環境で楽しめる。空調からの風や駆動音で気が散ることもない。小さめのビルにも相当する大きな空間を快適に保つための空調の苦労や工夫は何なのか、取材した。

非日常の雰囲気を高めるため、圧倒的な開放感の構造を採用

今回取材したのは、「KAAT」(カート)の愛称で親しまれている神奈川芸術劇場(横浜市中区)。神奈川県が所有する県立の劇場で、2011年1月に開館した。みなとみらい線の日本大通り駅やJR関内駅から徒歩で来館でき、横浜中華街や元町、山下公園など人気の観光スポットにも近い。

海に面した山下公園や神奈川県庁に近い場所にある神奈川芸術劇場。いくつもの箱が組み合わさったような外観と同様に、内部もかなり凝った構造になっている。通りに面した壁は、ほぼ大半がガラス張りになっているのが分かる ©森日出夫

神奈川芸術劇場がある場所には、もともとドーム型の劇場「かながわドームシアター」が存在していた。だが、土地の有効活用をするために建て替えが決まり、近くに局舎を構えていたNHK横浜放送局を1〜3階に併設する形で神奈川芸術劇場が誕生。「人々のにぎわいが集まる場所を作りたい」という県とNHKの思いが一致したことで、県の施設としては異例のNHKとの合築(がっちく)設計となった。アトリウムや電気室、駐車場などの設備は県とNHKで共有しているという。

この建物の特徴は、とにかく開放感のある設計だ。正面玄関を入ってすぐにあるアトリウムには吹き抜けが設けられているが、実に最上部の8階まで抜けている。建物の外壁はガラス張りの部分が多くを占めており、吹き抜けの屋根部分もガラス張りという徹底ぶりだ。特に、道路に面する建物の南側と西側がガラス張りになっているため、晴れた日中は早朝から夕方まで明るい日射しが豊かに降り注ぎ、まるで屋外にいるような開放感がある。

館内は、アトリウムの圧倒的な開放感に驚かされる。ホールのある左側と、大小スタジオのある右側に挟まれた空間は、天井の8階まで吹き抜けとなっている。屋根の3分の1はガラス張りのトップライトとなっており、その下に設けられたパネルルーバーにより柔らかな光を作り出している

館内には、約1200席を用意するホールを筆頭に、約220席の大スタジオや3種類の中小スタジオを設置している。ホールは5階から10階までを占めるほどの高さを持つほか、客席はさまざまな催しに対応できるように配置や勾配を電動で柔軟に変更できる設計になっている。

神奈川芸術劇場のホール。観客席は4フロア構成となっており、かなりの高さがある

メインのホール以外に、計4つのスタジオを用意。小規模な舞台のほか、リハーサルや練習などに使われる

神奈川芸術劇場は「空中にある劇場」をコンセプトにしているのであろうか、ホールやスタジオはまるでアトリウムに浮かんでいるかのような構造で作られている。ホールの下にはいくつかの柱が見えるものの、スタジオの部分は柱がまったくない設計になっており、不思議な印象を与える。

4つのスタジオは、階段の上部にある箱形のスペースに設置されている。柱を用いずに構造体を支える斬新な構造になっているのに驚かされる

ホールは、船底のような形状をした上部のスペースにある。こちらは柱が伸びているものの、やはり空中に浮いているような印象を与える

神奈川芸術劇場は、舞台やミュージカルをホールやスタジオで楽しむための施設であるが、ガラス張りの外観や吹き抜けを多用したアトリウムなど、設計がとにかく凝っているのが目を引く。神奈川芸術劇場で施設管理を担当する井上正春氏は「劇場というのは普段の日常から離れ、非日常の娯楽を楽しんでもらうための存在。訪れたら頭を非日常に切り換え、日常を忘れて舞台を満喫できる設計になっている」と語る。

公益財団法人神奈川芸術文化財団 劇場運営課 主幹 施設管理担当 井上正春氏

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