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日常を忘れて舞台を満喫できる環境を作る 最新ホールを快適にする大型空調の工夫

プロの矜持!大空間の空調
日常を忘れて舞台を満喫できる環境を作る!最新ホールを快適にする大型空調の工夫

2016.11.17

(文/磯 修)

ガラス張りの外観は光だけでなく熱ももたらすのが空調泣かせ

訪れた人を非日常に引き込むためのさまざまな工夫が凝らされている神奈川芸術劇場だが、空調を管理する松木潤和氏は「しゃれた造りゆえに、事務所ビルと比べても空調の面ではかなり苦労が多い」と語る。

横浜ビルシステム 神奈川芸術劇場事業所 所長 松木潤和氏

その1つが、壁面や天井の広い面積がガラス張りになっていることだ。レース状のスクリーンやブラインドを設けて日射しを和らげているものの、夏場の強い日射しが照りつけると室温はたちまち上昇。空調が弱いまま放っておくと、館内はあっという間に30度台後半に達してしまうそうだ。いったん室温が上がってしまうと、空調をフル稼働させても快適な室温まで下げるのは容易ではないそう。そこで、夏期は公演開始が13時など昼からであっても朝から空調をフル稼働させ、20度台後半の快適な温度をキープし続けるのだという。

道路に面した南側と西側の壁面は、ほぼガラス張りとなっている。特に、夏場は日射しで気温が上昇しやすい

ホールの空調にも工夫を凝らしている。冷房時は、天井から下に向けて冷たい風を吹き出す仕組みだが、舞台と客席で独立して制御できるのだそう。観客からは分かりにくいが、出演者を照らし出すスポットライトはとても暑い。公演中は舞台の空調のみ設定温度を下げ、出演者をサポートしているのだ。

舞台の両側には数え切れないほどのスポットライトが設けられていた。出演者に光だけでなく熱ももたらすのがやっかいな点だ

ただ、舞台を涼しくすべくあまり風量を強くすると幕が揺れてしまい、舞台装置にかかると危険なこともある。舞台をトラブルなく成功させるためには、空調も繊細なコントロールが求められるのだ。

客席によって吹き出し口から座席までの距離が大きく異なるのも、空調設定の腕の見せどころだという。舞台の手前にズラリと並ぶ1階席は頭上が天井まで開けているのに対し、バルコニー席は頭上のすぐ上が天井となっており、空調の吹き出し口が近い。バルコニー席の空調設定は観客の体感温度に直結するため、基本的に弱めに設定しているそうだ。バルコニー席の空きが多い場合は空調を止めることもあるという。

バルコニー席は、すぐ上に空調の吹き出し口が設けられている

ちなみに、1200人もの観客が開場と同時にホールに入ると、人間の熱で気温がグンと上がるのではないか?と思ってしまう。だが、神奈川芸術劇場は空調設備が新しく自動制御機能が優れていることや、吹き出し口が多めで冷たい風を隅々まで速やかに送れることもあってか、一気に満席になっても室温の変動はほとんどないという。

すぐ近くにある神奈川県民ホールは、収容人数がほぼ倍にあたる2400人と多いこともあり、一挙に入場するとさすがに人間の体温で2〜3度ほど上昇してしまうそう。そこで、開場前にあらかじめ設定温度を2〜3度低くすることで対応しているそうだ。

空調泣かせといえる神奈川芸術劇場だが、そのような厳しい状況に白旗を上げることなく館内を快適に保っていたのは、パナソニック(旧三洋電機)が納入したガス焚吸収冷温水機だ。先日掲載した記事で紹介したパナソニックの大泉工場で生み出された大空間用の業務用空調機である。次回は、空調機器が設置された地下の機械室に潜入し、どのような空調機が用いられているのか、どのような仕組みで館内を快適に保っているのかをリポートしたい。

>>空調機械室編はこちら

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